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9月の日経平均:コロナショック前水準回復から高値圏でのもみ合いに

 9月の日経平均株価は0.2%の上昇で、小幅ながら2カ月連続の上昇となりました。ほぼ2万3,000円から2万3,500円のボックスレンジでの推移に終始しました。また、10月に入ってから13日現在まででは、1.8%の上昇となっています。

 10月1日には東証のシステムトラブルの影響で、1999年の取引システム化以降で初めて、終日東証全銘柄の売買が停止されました。

 各国の経済活動再開に伴う景気指標の改善、堅調な米国株高の動きなどが下支えとなる一方で、コロナショック急落前水準を回復したことで、9月中は2万3,500円レベルでは上値が重くなりました。

 欧州を中心に新型コロナの感染者数が再拡大傾向に入ったこと、米大統領選でバイデン氏優位の見方が強まったことなども、上値を抑える要因となりました。

 10月に入って、システムトラブルによる売買停止翌日には、トランプ米大統領が新型コロナ陽性と伝わり、警戒感が一時強まりました。ただ、早期退院観測が広まるとすぐに安心感が優勢となり、10月9日以降は2万3,500円超えが定着する形となっています。

 個別では、成長期待の高い情報通信やサービスセクターの中小型株の物色が活発になりました。8月末から10月13日まででは、弁護士ドットコム(6027)AI inside(4488)HENNGE(4475)Sun Asterisk(4053)などが上昇となりました。

 また、脱ハンコ関連として弁護士ドットコムの他にGMOグローバルサイン(3788)、遠隔医療関連としてメディカルデータ(3902)メドレー(4480)なども人気化しました。小売企業の決算発表も集中しましたが、ネクステージ(3186)良品計画(7453)などは決算発表後に強い動きが目立ちました。

 一方、好決算期待が先行していた小売株のライフコーポ(8194)USMH(3222)ウエルシア(3141)などは決算発表が好材料出尽くしと捉えられました。

今後はイベント盛り沢山、バイデン氏当選後の想定にはやや楽観的な印象も

 10月中旬から11月中旬にかけての1カ月間にはイベントが盛り沢山となります。最大の焦点は11月3日の米大統領選となるでしょう。足元ではバイデン氏優位の見方が強まっていますが、最近では、法人税やキャピタルゲイン課税の増税策をネガティブ視するよりも、インフラ投資の拡大政策を期待視するポジティブな見方も強まっているようです。

 また、バイデン氏勝利による米長期金利の上昇、それに伴う円安の進行を想定するような動きもあるようです。

 増税策の実施などは先送りされる公算が大きく、実際にバイデン氏が勝利しても、不透明感の後退としてポジティブに捉えられる可能性も高いでしょう。ただ、キャピタルゲイン課税や法人税増税もいずれは実現されることで、将来的な株価の下押し圧力になります。

 また、議会上院も民主党が優位の状況となれば、左派色の強まりも警戒され、金融機関や巨大IT銘柄に対する規制強化も想定されることになります。これは、米国株式市場の先行き不透明感につながります。

 現状では、バイデン氏当選後の想定はやや楽観的過ぎると考えます。また、15~16日のEU(欧州連合)首脳会議、あるいは10月15日がEUと英国の通商交渉の期限とされており、ブレグジットの行方も懸念されるイベントとなります。部分合意の上で交渉継続となる可能性が高いとみられ、不透明感の長期化がマイナス視されることになりそうです。

 その他、国内外の決算発表も注目材料となりますが、国内決算に関しては、収益の底打ち、回復を相当程度織り込んでいるとみられ、さらなる株価の押し上げ材料となるにはハードルが高い印象です。こうした中、自動車関連や設備投資関連銘柄などは比較的出遅れ感が残っているとみます。

規制緩和の進展が海外投資家の日本株買いにつながる?

「省庁の縦割り体質打破」などといった菅新首相の会見などからは、規制改革が政策の本丸とも捉えられます。規制緩和によって、安倍前首相がなしえなかった成長戦略が進展していくことが望まれます。

 菅新政権誕生後ここまでは、外国人投資家の日本株売り越し基調に変化がみられません。ただ、成長戦略の進展が想起されるような規制緩和の動きが今後表面化するに従い、日本株への関心が高まる余地は大きいとも考えられます。

 ここまで菅首相の政策として注目されているものは、携帯料金の引き下げ、行政システムIT化、地方活性化、不妊治療など少子化対策、地銀や中小企業の再編、地方の活性化、遠隔医療・教育の規制緩和などが挙げられます。

 将来的には、岩盤規制分野とされる、雇用、医療、農業、教育などでの思い切った規制緩和の動きも期待したいところです。とりわけ、雇用分野の規制緩和が進めば、外資系企業の日本進出など対内投資の拡大にもつながっていくと考えます。

菅新政権による政策期待大、高配当利回り銘柄ランキング

 下表は、時価総額300億円以上で配当利回り3.0%以上の銘柄の中から、菅新政権の政策期待が高いものをピックアップしたものです。いわゆる「スガノミクス」関連銘柄は、情報通信やサービスセクターに属し、利回り水準の低い銘柄が多くなっています。

 ただ、短期的な過熱感の強いものも多く見受けられ、今後は物色のすそ野の広がりなどを期待したいところです。

菅新政権による政策期待大、高配当利回り銘柄ランキング(10月13日時点)

コード 銘柄名 会社予想配当利回り 株価 時価総額 年初来株価騰落率
1951 協和エクシオ 3.11 2,637 3,107 -4.7
1980 ダイダン 3.35 2,688 618 -4.4
2174 GCA 5.04 694 308 -30.8
4005 住友化学 3.25 369 6,109 -25.9
8387 四国銀行 4.06 739 317 -29.2
配当利回り平均(%) 3.76
注:配当利回り、年初来株価騰落率の単位は%、時価総額の単位は億円、株価は2020年10月13日終値、単位は円。

1 協和エクシオ(1951・東証1部)

▼どんな銘柄?

 電気通信工事大手の一角です。NTTグループ向けが売上高の4割超を占め、光ファイバーケーブル敷設工事やFTTH(家庭向け光ファイバー通信)工事、ビル内のサーバー工事、無線基地局工事などを手掛けています。

 その他、都市インフラやシステムソリューションなども手掛けています。シーキューブや西部電気工業、日本電通などが主要グループ会社です。株主資本配当率3.5%を還元目標としています。

▼業績見通し

 2021年3月期第1四半期売上高は1,061億円で前年同期比15.7%増収、営業利益は42億円で同4.5%増益となりました。都市インフラやシステムソリューションの売上高が大きく拡大した他、利益面では主要グループ会社の損益改善がけん引役になっています。

 2021年3月期通期営業利益は320億円で前期比2.9%増益の見通しです。増益幅は小幅となりますが、2022年3月期にはNTTドコモの5G工事が本格的に寄与してくると見込まれます。

▼ここがポイント

 政府では行政のデジタル化を今後5年で達成する目標を掲げるなどデジタル化への取り組みを進めている他、テレワークの増加やオンライン診療・教育の普及に際しても情報通信量は一段と拡大するため、通信インフラ網の一段の整備が必要になってきます。

 5G基地局工事の拡大も期待される中で、当面は高水準の需要が続いていく見通しです。

2 ダイダン(1980・東証1部)

▼どんな銘柄?

 空調工事が主力で、電気工事や給排水衛生工事なども手掛けています。関西地区が地盤ですが、首都圏での展開も進んできています。リニューアル工事の比率が50%程度を占め、官庁工事も15%程度を占めています。

 シンガポールやタイなどを中心とした海外展開も進めています。また、再生医療分野への取り組みを積極化しており、施設工事やベンチャーへの出資など、同事業で2030年度に150億円の売上を目指しています。

▼業績見通し

 2021年3月期第1四半期売上高は348億円で前年同期比3.9%増収、営業利益は22.8億円で同64.4%増益となっています。手持ち工事の順調な消化によって完成工事高が増加、工事採算も大きく改善しました。

 一方、2021年3月期通期営業利益見通しは80億円で前期比11.7%減益の見通しです。第1四半期は新型コロナの影響で受注高が前年同期比25.7%減と大幅に縮小しており、第2四半期以降の業績に影響が生じる見込みです。

 ただ、受注減少の大半は先送りによるものとみられ、今後に顕在化してくるものと考えられます。

▼ここがポイント

 新型コロナの感染再拡大に対する懸念が依然として拭えないなかでも、新しい生活様式に沿って経済活動は進められていく見通しです。とりわけ、院内感染の防御は最重要視されると考えられ、空調機などの新設や改修工事などが増加していくものとみられます。

 同社は病院向けの空調工事も得意としており、足元でも対策工事などの引き合いが増加してきているもようです。

3 GCA(2174・東証1部)

▼どんな銘柄?

 独立系のM&A(買収や合併)の助言会社です。日米欧の3極体制を敷いており、2019年末時点では欧米アジアに23拠点を有しています。そのため、国内M&A会社においてはクロスボーダー案件に強いといえるでしょう。

 M&A仲介会社と異なり、買い手または売り手のどちらか一方に助言業務を行っており、企業価値向上の戦略立案などM&A周辺業務も手掛けています。テクノロジー分野や事業継承案件に注力しています。

▼業績見通し

 2020年12月期第2四半期の累計売上高は62.3億円で前年同期比33.1%減収、営業損益は0.9億円の赤字となりました。新型コロナの世界的な感染拡大の影響で、主力すべてでM&A案件が大きく減速したようです。

 とりわけ、クロスボーダー案件は影響が大きくなったとみられます。ただ、2020年12月期業績見通しは引き続き非開示となっていますが、欧州を中心に4-6月期の新規受注は好調、上半期は前年同期比8%増となっており、今後の収益化へのつながりが期待できます。

▼ここがポイント

 菅新総理は中小企業の再編に関しても積極的に取り組むとみられています。

 これはブレーンの一人とされるデービット・アトキンソン氏の政策とされ、デフレの原因となっている中小企業の賃金引き下げを転換させ、賃金引き上げによって中小企業を淘汰(とうた)すべきとしているようです。

 再編を促すインセンティブなどの政策も打ち出されれば、結果的に中小企業の再編の動きが進み、同社などのM&A助言会社、仲介会社のビジネスチャンスが広がることになるでしょう。

4 住友化学(4005・東証1部)

▼どんな銘柄?

 総合化学大手の一角です。相対的に石油化学事業のウエートが低い一方で、農薬事業は国内トップの実績、また、医薬品事業では子会社に大日本住友製薬を抱えています。

 サウジアラビアでは同国の国営石油会社であるサウジ・アラムコと合弁で、石油精製・石油化学事業を行うペトロ・ラービグも展開しています。

 他の化学大手と比較すると、短期的なコストアップにつながる原油市況上昇のマイナス影響は受けにくい収益構造になっています。

▼ここがポイント

 菅新総理はもともと、ふるさと納税や農産物輸出の推進など地方の活性化政策に積極的です。農業における規制緩和の動きなどを進めて、地方の活力を取り戻させる政策が期待できます。

 国内農薬市場では圧倒的なプレゼンスを誇る同社も、農業関連銘柄として市場の拡大が期待される余地があるでしょう。

▼業績見通し

 2021年3月期第1四半期コア営業利益(営業利益から特殊要因として発生した損益を控除)は202億円で前年同期比54.5%の減益となりました。

 自動車用合成樹脂の出荷減少、石油化学品の市況悪化、持分法適用会社であるラービグの定期修繕の影響などで、主力の石油化学事業の損益が悪化しました。

 2021年3月期通期予想は800億円で前期比39.7%減益の予想、自動車関連やディスプレイ関連の出荷数量減少を見込んでいます。

5 四国銀行(8387・東証1部)

▼どんな銘柄?

 高知県を地盤として四国各県に展開する地方銀行です。3月末現在の店舗数は110店となります。4月には、四国アライアンス4行による地域商社「Shikokuブランド」を設立しています。

 2020年3月期末の自己資本比率は8.63%で、国内基準の4%を大きく上回っています。不良債権比率は2.19%で、保全率は十分な水準を確保しています。また、事業継承問題なども積極的に取り組んでいます。

▼ここがポイント

 菅新総理は総裁選立候補の際から、地銀の数が多すぎることや地銀の再編の必要性について言及してきました。地域経済活性化のためにも、強固な地銀の存在が必要となってくるでしょう。

 とりわけ、地銀の再編においては、地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が成立したこともあって、地域内での統合が進んでいくものとみられます。

 経済規模に対して地銀の数が多い地域での再編の動きが予想され、四国地域を拠点とする地銀などはその候補となり得るでしょう。再編インセンティブのアナウンスなど今後期待したいところです。

▼業績見通し

 2021年3月期第1四半期純利益は17.7億円で前年同期比7.4%減益となっています。資金利益は増加しましたが、債券関係損益などが減少したようです。

 一方、上半期計画の14億円は超過しており、通期計画の30億円、前期比3.1%減益に対する進捗率も59%に達しています。株式売却益の前倒し確保などが好進捗の要因と説明されていますが、足元の業績面での安心感は強いと考えられます。