来年景気回復を予想。ただ、予想は当たることも外れることもある

 私は、2021年に世界景気は回復すると予想しています。したがって、今、投資対象として、債券より株の魅力が高いと判断しています。

 景気回復のドライバーとして、

  1. 新型コロナ予防ワクチンの大量供給実現、
  2. 第4次産業革命(AI・IoTを活用した技術革新)の加速、
  3. 資源安メリット浸透、

があると考えています。

 ただ、「あなたの景気予測は当たりますか?」と問われれば、「当たることもあるし、外れることもあります」と答えます。ワクチン供給の実現を前提として予想していますが、本当に実現するか、現時点ではっきりとはわからないからです。

 したがって、景気予測に基づいて、過度に投機的なポジションを取るべきではありません。来年になってもワクチン供給が実現せず、米中対立が激化して世界経済の分断が一段と深刻になれば、世界景気が二番底に向かうリスクもあります。

 それでは、今、株をどのくらい持ったら良いのでしょうか? 株を買い増すべきでしょうか、売るべきでしょうか。

 私は、景気予測に依拠せず、長期的にいいタイミングで、株を売ったり買ったりする方法を、ファンドマネージャー時代に学びました。その方法を私は「最強のローテーション投資法」と呼んでいます。それを説明します。

景気予測に依拠しない、株のリバランス方法

 今日、ご紹介するのは、私が運用を担当していたある公的年金ファンドで実際にやっていたアセットアロケーション(資産配分)のリバランス(変更)ルールです。とても簡単です。まねしようと思えば、誰でもできることです。

 まず、そのファンドが、どこで日本株を売り、どこで日本株を買ったか、見てください。

日経平均月足:2005年1月~2013年12月

 このファンドでは、青矢印をつけたところ(2007年4~6月)、日経平均が1万8,000円をつけた時、日本株を売り、国債を買いました。当時は世界的に景気が良く、私は、「日経平均はまだまだ上がりそうなのに、ルールだから仕方ない」と渋々、日本株を売ったのを覚えています。

 赤矢印をつけたところ(2008年10月)、日経平均が1万円から8,000円割れまで下がった時は、複数回にわたり、国債を売却し、日本株を買い増ししました。この時、私は、「日本株は下がり過ぎ」と考えていましたので、株を買っていくことに違和感はありませんでした。ただし、ルールがなければ、あそこまで大胆に買い増しを続けることはできなかったと思います。

 それでは、そのファンドに定められていたリバランスのルールを、説明します。そのファンドは、国内株と国内債券に投資するファンドでした。投資比率は時価ベースで、国内株40%・国内債券60%と決められていました。このファンドには、以下のようなリバランスのルールが定められていました。「時価ベースで組み入れ比率が、5%以上基準から離れた時、組み入れを基準の方向に戻す」というルールです。それだけです。

 どういうことか、具体的に説明しましょう。仮に100億円のファンドの運用を、国内株式40億円・国内債券60億円でスタートしたとします。スタート時点で、株の組み入れ比率は40%、債券の組み入れ比率は60%です。

 その後、国内株式の値上がりが続くと、時価で評価して、株式の組み入れ比率は、上昇します。時価ベースで組み入れ比率をはかり直し、国内株式の組み入れ比率が45%に上昇、国内債券が55%に下がったとき、基準となる組み入れ比率(株40%・債券60%)より5%かい離したことになります。

 ここで、リバランス・ルールが発動されます。ファンドマネージャーは株を売り、債券を買わなければなりません。実際、2007年4-6月に、このルールが発動され、私は日本株を売り、国債を買いました。当時、日本株に強気だった私が、日本株を売ることができたのは、リスク管理のためのリバランス・ルールに従ったからです。

 逆に、日本株が大きく下落し、日本株の組み入れ比率が35%以下になると、リバランス・ルールによって、日本株を買い増ししなければなりません。2008年10月、リーマンショック後に日経平均が急落する局面で、このルールは複数回にわたって発動されました。

 私がそのファンドを運用していたのは、2003年から2013年までですが、日本株組み入れ比率の引き下げ・引き上げについて、大きな間違いをしないで済んだのは、リスクをコントロールするための適切なリバランス・ルールがあったからです。私が日経平均の先行きを予見する能力があったからではありません。

日経平均インデックスファンドだけ使うシンプルなリバランス方法

 この簡単なリバランス・ルールは個人投資家でもまねしようと思えば、まねできます。どうすればいいのでしょう? 話を簡単にするため、運用対象とするリスク資産は、日経平均インデックスファンドだけとして、説明します。【1】~【4】の手順でリバランスを行います。

【1】投資金額を決める

 まず、日経平均インデックスファンドを長期的にいくら持つか、基準となる投資額を決めてください。仮に100万円として、説明します。次に、日経平均インデックスファンドの時価ベースの保有額の下限と上限を決めます。基準となる投資額のプラスマイナス20%くらいがいいと思いますので、下限を80万円、上限を120万円とします。

【2】投資を開始

 まず、日経平均インデックスファンドを100万円買います。

【3】大きく下がった時のリバランス

 日経平均が20%下がると、投資金額は時価ベースで80万円となります。さらに下がると、時価評価額が80万円を下回ります。保有額の下限は80万円と決めていますので、ここでリバランスルールが発動されます。日経平均インデックスファンドを20万円買い増しして、投資額を100万円に戻します。

【4】大きく上がった時のリバランス

 逆に、日経平均が20%以上、上昇し、時価ベースで120万円を超えてくるときは、売る必要があります。保有上限を120万円と決めているからです。日経平均インデックスファンドを20万円売って、保有金額を100万円に戻します。

 リバランスは、一気に20万円やらないでも、とりあえず10万円だけやるというルールでも構いません。自分にとって、やりやすいルールを決めていただければ良いと思います。

 以上【1】~【4】のシンプルなルールに従うだけで、私が実際に年金の運用で行っていたようないいタイミングでの売買ができるようになります。

 今まで、このような考えがなかった人は、今日から決めてやってみたら、いかがでしょうか。日経平均のように激しく乱高下しながら、長期的に上昇していくと期待されるアセットのリバランスに適したルールです。

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