原油、なぜ下落が続く?

 先週は、大豆とトウモロコシの上昇が目立ちました。収穫前の天候不順などが要因と言われています。プラチナも上昇しました。

 一方、原油と天然ガスの下落が目立ちました。米中の主要株価指数の下落による、消費減退懸念が一因とみられます。

 先週は、上昇銘柄数が7(前週は9)、下落銘柄数が18(16)、最大と最小を除く変動率の平均は▲0.7%(▲0.8%)でした。全体的には、9月4日(金)から11日(金)の週は、 “おおむね弱かった”と言えると思います。

・プラチナの今後の動向については、今週の週刊コモディティレポートで述べています。
・原油の下落の背景と注目点については、本欄の後半で述べています。

9月4日(金)と11日(金)のジャンル横断騰落率ランキング

※楽天証券のマーケットスピードⅡのデータより楽天証券作成
※プラチナとパラジウムは楽天証券のマーケットスピードCX内「海外市場」の、中心限月のデータを参照。
※ビットコインとイーサリアムは楽天ウォレットのビットコイン価格を参照。日本時間の前々週土曜日午前6時と前週土曜日午前6時を比較
※騰落率は前々週金曜日の終値と前週金曜日の終値より算出。(前週金曜日終値-前々週金曜日終値)/前々週金曜日の終値

先週の「ジャンル横断・騰落率」を受けた今週の見通し

 先週も下落した原油相場においては、複数の下落要因があると考えられます。(1)新型コロナ感染拡大による消費減少の長期化懸念、(2)OPEC(石油輸出国機構)の減産終了懸念、(3)米国の原油供給増加観測、などです。新型コロナの感染者数は、世界全体でまだ増加傾向にあり、各国で経済再開は行われているものの、引き続き大きな懸念と言えます。世界全体が立ち直り、石油の消費が回復するには、まだ時間がかかる可能性があり、このような懸念が市場の上値を重くしていると、みられます。

 (2)OPECの減産終了懸念についてですが、基本的には、現在の協調減産は、2022年4月まで継続することとなっています。しかし、今年6月の会合で合意した内容には、継続にあたり条件が付けられています。5月と6月に減産を順守できなかった国は、7月から9月に、未達分を上乗せして削減をする、という条件が盛り込まれています。OPEC内でも複数の国が、5月と6月、減産を順守できませんでした。

 それらの国は、その未達分の削減を、今月までに実施しなければなりません。9月17日に、総会ではありませんが、会合があることについて、昨日ロシアの石油大臣が改めて指摘しました。5月と6月に減産を順守できなかった国に、9月中に、きちんと条件を守らせるための、アナウンスと考えられます。

 5月・6月に減産を順守できず、かつ7月・8月に生産量が増えた国は、海外メディアの情報をもとにした推計では、3つあります。UAE、クウェート、赤道ギニアです。サウジとアルジェリア以外の8つは、5月・6月に減産を順守できなかったとみられ、なお、削減が必要ですが、中でも、先に述べた3カ国は、生産量を大幅に減少させる必要があります。いずれにせよ、今月のOPEC各国の生産量が、今後の減産の行方を決める可能性があり、要注目です。

 6月から8月末まで、原油相場はほぼ横ばいで推移してきました。上昇要因と下落要因が交錯していた結果と考えられます。しかし、先週から下落が目立ち始めました。短期的には、下落要因が優勢とみられます。OPECプラスの減産が今後、終了しないか、懸念が強まっている点が、足元の最も大きな、原油固有の下落要因とみられます。

 今月、OPECのみならずOPECプラスの一員として減産に参加している非OPECの国々が、減産継続のための条件を達成することが望まれます。また、足元の株価の反発は、原油相場にとってプラス要因と言えると思います。OPECプラス起因のマイナス材料を相殺するだけの株価の上昇があれば、原油相場は40ドル近辺まで、回復する可能性があると、考えています。

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