株主優待のメリット・デメリット

 株主優待とは株式会社が権利確定日に一定数の株数を保有していた株主に対し与える制度のこと。法的な義務はなく、あくまでも企業が株主に対し「気持ち」を示すものです。

 企業の「お気持ち」をどう捉えるかは株主次第ですが、日本文化の一つでもあるお中元やお歳暮、贈り物文化が日本独自で特異な制度として株主優待が確立されている理由だと思われます。

 株主優待を行っている企業数は上場企業約3,700社のうち、およそ1,500社。近年人気となり年々増加傾向にあります。

 長期的に、安定的に株を保有する傾向が強い株主優待は、プレゼントのように楽しめる個人投資家と企業側の思惑が一致した結果かもしれません。

 コロナ・ショックによる3月の急激な下落時は、近年の優待人気で相対的に高値圏だった優待銘柄もバーゲン価格となり、株取引を始めた方の中には、まず入り口として株主優待銘柄を検索し、購入された方も多かったと思います。

 優待銘柄は何があっても保有し続けているファン株主優待が魅力的で下がったら買おうと狙っている投資家がいるため、株価が下がっても買いが入りやすく、人気の優待銘柄は底堅いと言われています。

 しかし、業績や財務内容に関係なく、株主優待があることだけで株価が維持されている銘柄もあり、機関投資家や外国人投資家の中には「本来の株価が分からない」、「優待を出すなら配当を厚くしてほしい」などの声もあります。また優待投資のいちばんのリスクは優待改悪や優待廃止。株保有の目的が失われてしまうので、一気に売りに転じ、あっという間に株価半減ということもあり得ます。

 株主優待投資のどんなことがメリットで、何がデメリットか。自分はどこまでそれを求めているのか、許せないのか。
ちょっと立ち止まって考えてみてください。

 それでも選んだ銘柄は、優待の到着を待ちつつ、じっくり付き合っていくのが優待を楽しむコツです。

コロナ禍での優待投資

 ここ半年のコロナ禍において、優待投資はどうだったのか。外出ができず、経済活動が止まり、4-6月期の決算は軒並み減収減益。先日発表されたGDP(国内総生産)も年率27.8%減と戦後最悪のマイナス成長。有事の際は現金がいちばんと、財務強化に舵を切った企業も多くありました。

 そんな中、財務見直し対象に株主優待も組み込まれ、優待改悪、中止、廃止を発表した企業も。昨年は4月から8月まで優待廃止のIRを出した企業は約10社ですが、今年は約20社と倍の結果に。

 廃止はしないが、一時的に中止や優待額を減らすなど改悪に動いた企業を加えるとより多くなり、企業がコロナ禍を生き抜くためには株主優待も聖域ではないことが分かります。

 この傾向は今後も続くと見られ、特に影響の大きかった外食銘柄や交通、レジャー関連銘柄のIRには注意が必要だと思います。

 優待の種類では、自社製品や自社サービスを提供している企業は改悪が少ない印象。一方で、導入もしやすいが、廃止もしやすい、クオカードなどの金券銘柄、プレミアム優待倶楽部を出している企業のIRは改悪の傾向がありました。

 優待廃止や改悪を事前に知ることはかなり難しいですが、配当の有無、優待内容、株価に対して大盤振る舞いをしていないか、過去に優待改悪をしていないか、この辺りを注視してみると、危険アラート発生の予備知識になるかもしれません。

 優待廃止や改悪などの大きなニュースに当たってしまったら、運が悪かったと諦め、保有目的から外れてしまうので心を鬼にして売却し、次の銘柄に移ってもよいと思います。

 ただ、業績不振や全体的な株価の流れで下落してしまったらどうするか。私の場合せっかくじっくり選んだ思い入れの強い優待銘柄なので、優待の到着を楽しみに待っています。

「優待が来たらあれ食べよう」、「優待が来たら前から欲しかったのをカタログから選ぼう」とか。株価の下落は多少目をつぶって、楽しみを優先するのは精神衛生上もよいのです。

 優待株は長期で持っていれば持っているほど、インカムゲインで継続的な収入が得られます。

 そういった意味でも、優待銘柄を選ぶ際にはじっくり長く付き合えるか考えるのが大切です。また、気になっていた銘柄の株価が下がってきたら、思い切って買うのもあり。下落が特別な理由であるならば、それが解決した時に上昇する可能性が高い。今回のコロナ・ショックでも、3月の下落時から現在の株価の戻りは皆さんコロナが終息すると信じ、また日常が戻ってくるとこの先を見越しているわけで、希望の列車には乗っておいた方が明るい未来が待っている気がします。

優待の投資家はありか、なしか

 新型コロナウイルスにより大きく世の中が変わりました。優待投資の今後は、より銘柄選定の重要度が増すと思っています。

 業種や業態による選別、この先の業績への影響、withコロナでどのように生き残っていくのか、多角的な視点で見ながらも、自分軸の「好き」の部分を残しつつ、優待投資を考えてみるのが一番ではないでしょうか。

 個人投資家の一番の強みは時間を持っていること。3カ月、半年、というスパンではなく、もう少し長い目でドンと構えているのが良いかと思います。

 税制優遇のNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座も大いに活用し、個人投資家である強みを武器にして、半年に一度、年に一度企業からの「お気持ち」を楽しみに、投資家として企業とお付き合いするのはありだと思います。頂いた優待が高くついたり、思ったものではなかったり、へこむこともありますが、好奇心の扉を開けてくれる素敵なギフトの一つでもある株主優待は資産を増やすだけでなく、楽しみも届けてくれますよ。

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