貴金属が急落、景気連動指数は上昇へ

 先週は、日経225、マザーズ指数、NYダウ、S&P500、ナスダック、上海総合指数といった、日米中の主要株価指数が上昇しました。また、景気の動向に連想する傾向がある、天然ガス、銅、原油も上昇しました。

 一方、貴金属は、総じて下落しました。4つの貴金属の中で最も人気がある金は▲4.2%、金におおむね連動しつつ、金よりも変動率が高い傾向がある銀は▲7.3%、自動車の排ガス浄化装置を主な用途とするプラチナとパラジウムは、それぞれ▲2.1%、▲2.6%でした。

 先週は、上昇銘柄数が19、下落銘柄数が6、最大と最小を除く変動率の平均は+0.9%でした。全体的には、8月7日(金)から14日(金)の週は “強気だった”と言えると思います。

※今回より、マザーズ指数とイーサリアムを追加し、合計25銘柄とします。

※金を含む貴金属価格の今後の動向について、筆者の連載[週刊コモディティマーケット]の本日更新分「8/11、金急落!落ちた理由と今後の行方をプロが解説」を御参照ください。

8月7日(金)から 8月14日(金)までのジャンル横断騰落率ランキング

※楽天証券のマーケットスピードⅡのデータより楽天証券作成
※パラジウムは楽天証券のマーケットスピードCX内「海外市場」の、中心限月のデータを参照。
※ビットコインとイーサリアムは楽天ウォレットのビットコイン価格を参照。日本時間の前々週土曜日午前6時と前週土曜日午前6時を比較
※ドル指数はICEのデータを参照
※騰落率は前々週金曜日の終値と前週金曜日の終値より算出。(前週金曜日終値-前々週金曜日終値)/前々週金曜日の終値

先週の「ジャンル横断・騰落率」を受けた今週の見通し

 先週、景気動向に連動する傾向がある、主要な株価指数やエネルギーが上昇、そして、貴金属が下落しました。金が下落した背景に、“複数の悲観論の同時後退”があったと、筆者は考えています。特に8月11日(火)の急落時、米国、中国、ロシアで、悲観論が後退する動きが目立ちました。

 米国で黒人女性初の副大統領候補が誕生、米金融大手がS&P500指数採用銘柄の収益見通しを引き上げ、香港で逮捕されていた地元メディアや活動家が保釈、そしてロシアで新型コロナワクチンが承認されました。

 この日、サプライズ感のある副大統領候補が誕生し、主要企業の収益見通しが引き上げられ、新型コロナや大統領選挙、人種差別問題、米中問題で混沌とする米国で、これまであった悲観的なムードが後退しました。

 同日、香港で、活動家らが保釈され、中国政府による言論統制が緩むのではないか、と期待が生じました。ロシアでは、人類が切望するワクチンが承認されたことに、大きな期待が集まりました。

 このような、“複数の悲観論の同時後退”が、景気連動型銘柄の上昇、それに伴い、資金の逃避先需要、代替資産需要、代替通貨需要、という金の主要需要が減少する懸念が生じ、金価格が下落したとみられます。

 ただ、本当に、悲観論が後退する材料だったのか? と問われると、筆者は決して悲観論が後退する材料だったとは、言えないと考えています。

 副大統領候補の誕生だけで、混沌とする米国経済が回復するとは思えず、企業の収益見通しが引き上げられたとはいえ、それはまだ実態ではない。香港の活動家の件は保釈直後、再び中国政府を批判し、ロシアのワクチンは臨床試験が終わっていないとのこと。

 このように考えれば、悲観論が後退したのではなく、過度な楽観論が浮上した、と言えると思います。

 悲観論も楽観論も“ムード”に関わる要素です。ムードの良し悪しで市場が動くことがあるため、このような要素に注目することも必要です。しかし、やはり、このような時こそ、数字が示す実態に目を向けることが必要でしょう。足元、特に、景況感を示す経済指標に注目する必要性が高まっていると考えられます。

 8月17日(月)、日本の4-6月期GDP(速報値) 、6月鉱工業生産(確報値) 、米国の8月ニューヨーク連銀製造業景気指数、19日(水)、日本の7月の貿易統計、ユーロ圏の6月の経常収支、21日(金)、英国の7月の小売売上高、フランス、ドイツ、ユーロ圏、英国、米国の8月各種購買担当者景気指数(PMI)などに、注目です。

 また、米国の金融政策のスタンスや、景気動向の見通しなどに関わる、19日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨にも注目です。

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