日経平均急落

 先週の日経平均株価は、1週間で1,041円下がり、2万1,710円となりました。4~6月の景気・企業業績の予想以上の落ち込み、円高(ドル/円が一時1ドル104円台)、新型コロナ感染の世界的な拡大などが嫌気されました。

<日経平均日足:2020年2月3日~7月31日>

 2月半ばからコロナ・ショックで暴落、3月半ばから急反発した日経平均は、6月以降、やや膠着感が出つつありました。強弱材料がきっこうし、大きくは上へも下へも動けない展開が続いていました。ただし、先週、久々に大きく下がりました。まだレンジを下放れたわけではありませんが、ここから下げが加速するのか、注目されます。

まだ、世界株安にはなっていない

 先週、日経平均は大きく下げましたが、まだ世界株安が起こったとは言えません。NYダウ平均株価の下げ幅は小さく、世界のITインフラを支配するGAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル・マイクロソフト)構成比が高い米ナスダック総合指数は高値を更新しています。上海総合指数も今のところ堅調です。

<米ナスダック総合指数・上海総合指数・日経平均・NYダウの動き比較:2019年末~2020年7月31日>

注:2019年末の値を100として指数化

4-6月の景気・企業業績は、日米欧とも良くない

 先週、米国と欧州(ユーロ圏)の4-6月GDP(国内総生産)成長率が発表されました。米国は前期比年率▲32.9%、ユーロ圏は同▲40.3%と、どちらも事前の市場予想よりも悪い、過去最大の落ち込みでした。GDPデータを嫌気して、欧米株式は弱含みました。

 日本の4-6月GDP速報値はまだ発表されていませんが、7月31日の日本経済新聞によると、民間26社の予測平均で、前期比年率▲26.3%のマイナスと、過去最大の落ち込みとなります。

 ただし、日米欧とも、これは過去(4-6月)のデータです。今四半期(7-9月)は、回復が予想されています。株は、普通は過去データにそんなに大きく反応するものではありません。コロナ感染の再拡大で、米国や欧州の7-9月の回復が、想定よりも鈍くなりそうだと思われ始めているところだったので、4-6月のデータにも株はネガティブに反応しました。

 同様に、発表が続く4-6月の日本の企業業績も良くないのですが、それも過去のデータです。7月から、鈍いながらも回復が始まっていると考えられることから、4-6月の業績だけで大きく売り込まれる要因になるとは思われません。

日本株の下げが大きくなったのは、円高進行の影響と考えられる

 先週の日経平均の下げが大きくなったのは、久々に対ドルで円高が進んだことが影響したと見ています。

<ドル/円為替レートの動き:2017年末~2020年7月31日>

 1ドル104円台に入る円高は、2018年以降、5回ありました。それぞれ簡単に振り返ります。

【1】2018年3月
 世界的な株安を受けて、リスクオフの円買いが進みました。この頃は、まだ世界景気は好調でした。米国の長期金利が3%に近づいたこと、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めスタンスを強めていたことが嫌気され、世界株安になりました。実際、FRBは2018年に0.25%の利上げを4回実施しました。ただし、4月以降、世界的に株が反発したことを受けて、再び、円安が進みました。

【2】2019年1月
 2018年末にかけて世界景気が急激に悪化してきたことを嫌気して世界株安が起こりました。世界株安を嫌気して、リスクオフの円高が進みました。1月2日東京で、ドルのフラッシュ・クラッシュが起こりました。一時1ドル104円台をつけましたが、その日のうちに、108円台まで戻りました。

【3】2019年8月
 2019年2~4月は、世界的に株が反発したことを受けて、一時、リスクオンの円安が進みました。ところが、5~8月は、再び円高が進みました。2019年に入ってから、米FRBがハト派に転換、積極的に利下げを始めたことを受け、日米金利差の縮小。円高が進みました。

【4】2020年3月
 コロナ・ショックで、世界的に株が暴落すると、リスクオフの円高が進みました。ただし、4月以降、世界的に株が反発すると円安が進みました。

【5】2020年7月
 米FRBが、積極的な量的緩和を実施、ドルのゼロ金利が長期化する見通しとなったことを受け、じりじりと円高が進みました。

 足元、急激な円高が進んだのは、リスクオフの円高ではなく、日米金利差の縮小を織り込む動きであると思います。

<日米2年金利差(2年国債利回りの差)推移:2008年1月~2020年7月>

 米国でゼロ金利が長期化する見通しとなったことから、日米金利差が縮んだまま、戻りにくくなることを、改めて織り込む動きだったと思います。

 今後、ドル/円は、1ドル105円を中心にプラスマイナス5円程度の範囲で動くと考えています。

日本株の投資判断

 結論は毎回述べていることと、変わりません。日本株は割安で、長期的に買い場との判断を維持します。

 ただ、短期的には急落急騰を繰り返すと思います。時間分散しながら、割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えます。

 先週のように、日経平均が大きく下がった時は、積極的に投資していくべきと考えます。

▼著者おすすめのバックナンバー
2020年7月27日:アフター・コロナを見据えた2020年後半の日本株投資戦略。今買うなら高配当利回り株?