利上げについて考えることすら考えていない
リスクオンでもリスクオフでも米ドルが売られている。これは今までになかった動きである。
「米国では共和党の大統領がベーシックインカムを導入したようにみえる。もちろん、最初は『緊急対策の一環として』である。米国経済は政府支出(主に非生産的な無償の給付あるいは無益な戦争)とFRB(米連邦準備制度理事会)の膨れ上がるバランスシートに完全に依存するようになるだろう。」
と、著名投資家マーク・ファーバーが危惧するように、FRBはルビコン川を渡り、後戻りのきかない道へと歩み出した。
パウエルFRB議長は、景気が回復した場合FRBは利上げを検討するかと聞かれ、「利上げについては考えていない。利上げについて考えることすら考えていない。」と回答した。マーク・ファーバーに言わせると、「米国の財務省・企業・家計が膨大な債務残高を抱えているため、利上げは選択肢にない」となる。
膨大な赤字を垂れ流し、2度と利上げできない米国のドルに対して、コロナバブルで能天気な市場も少しかんしゃくを起こしだしたのかもしれない。
過去8度の大統領任期中の連邦債務と連邦準備制度のバランスシート
2008年以降、連邦準備制度は議会にお金が「無料」であるという考えを与えた
ドルインデックス先物(日足)とトレンドシグナル ドル売りトレンドシグナル点灯中!
楽天証券21周年記念投資セミナーでは、「アフターコロナのFX投資戦略」と題して、楽天証券FX事業部長の永倉さんとドル安、ユーロ安見通しについて対談したが、その後、ユーロ/ドルの相場は素晴らしいトレンド相場に発展している。
ユーロ/ドル(日足)と売買シグナル グリーン=買いトレンド・オレンジ=売りトレンド
先週のレポート『いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事』で「マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート」を紹介したが、エリオットの波動カウントでは、ドルインデックスは100を超えない限り、5年間の保ち合いを下放れて下落する波動になる可能性が濃厚となっている。
ドルインデックス(2008~2020年)
「最も高くなるのは日本円とみている。FRBが利上げについて「考えることすら考えていない」のであれば、ドル安になる公算が大きい。」と、マーク・ファーバーは述べたが、ドル/円は皆がレンジ相場を予想する中、105円台割れの水準まで下落している。
ドル/円(日足)と売買シグナル グリーン=買いトレンド・オレンジ=売りトレンド
私が最も懸念するのは米ドルの健全性についてだ(レイ・ダリオ)
米著名投資家レイ・ダリオはFOXテレビで、「私が最も懸念するのは、われわれの通貨の健全性についてだ。生産性を高めずに財政赤字を計上し、国債を発行し、貨幣を増発し続けることはできず、それは長期的に持続不可能だ」と述べた。
米中「資本戦争」ならドルに打撃と警告、健全性に既に不安-ダリオ氏
(ブルームバーグ 7月27日)世界最大のヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者であるレイモンド・ダリオ氏は、米中対立について、ドルに打撃を与える「資本戦争」に発展する恐れがあると警鐘を鳴らした。
ダリオ氏は、同氏が想定の範囲と考える手段に基づく次の米中衝突のシナリオを提示。また、放漫な財政政策とイデオロギーの分断が米国を凋落(ちょうらく)に追い込みつつあると警告した。
ダリオ氏はFOXの「サンデー・モーニング・フューチャーズ」で、「貿易戦争があり、テクノロジー戦争があり、地政学的戦争があるが、資本戦争もあり得る」と発言。「『中国に投資してはならない』と法律で定めたり、場合によって米国が中国で義務を負う債券の支払いをやめたりすれば、これらは可能性だが、例えばドルの価値に対する大きな影響を伴う」と述べた。
「米国が「自国の最大の敵」になることで、ドルの安定を既に危険にさらしている」とダリオ氏は指摘。「私が最も懸念するのは、われわれの通貨の健全性についてだ。生産性を高めずに財政赤字を計上し、国債を発行し、貨幣を増発し続けることはできず、それは長期的に持続不可能だ」と訴えた。
ユーロ/ドル(週足)と52週(1年)移動平均線
景気は悪いが、出口のない中銀によって株式市場だけが国家公認の賭博場として賑わっている。ばら撒いたカネはいずれインフレ、増税、通貨切下げなどで減価していくだろう。そうした漠たる不安が、現在のゴールド高・ドル安という現象だ。
ゴールド先物(日足)と売買シグナル グリーン=買いトレンド・オレンジ=売りトレンド
新型コロナウイルスのワクチンが完成すれば株価は大暴騰!?
一方で株式市場も堅調である。上値は重くなっているものの、国家管理で空前の流動性が保証されており、これで新型コロナウイルスのワクチンが完成すれば株価は大暴騰するとウォール街の連中は息巻いている。
だが、新型コロナウイルスのワクチンができるという保証は何もない。治験や安全性も含めて、ワクチンが実用化されるのは、まだまだ先の話になるだろう。ワクチンが利用可能になるまでは、米経済は活気に乏しくまだら模様の成長にとどまり、最悪の場合、長期低迷か恐慌に陥るだろう。
仮に、新型コロナウイルスのワクチンが完成して株価が大暴騰したとしよう。そのケースではFRBはインフレ対策という窮地に陥ると思われる。
「無制限のQE(量的緩和)」バズーカは、FRBが経済成長を支えるために赤字をマネタイズする必要があることに依存している。しかし、完全雇用と経済成長という目標がすぐに実現すれば、FRBは「インフレの急上昇」に直面することになる。
過剰流動性とインフレ圧力
モノには限度があり、トンデモ理論や政策には副作用がつきものである。
為政者はカネをばら撒くより、減税をやって消費を刺激し、企業の利益も増え税収も増えていく好循環に持っていくべきなのである。MMT(現代貨幣理論)をやれば英国病時代の英国のようになるだろう。シュンペーターは政府から十分な支援を得てしまえば資本主義は停滞すると信じていた。
昨今、タダで得られる既得権益であるかのように、「政策とカネをくれ!」というあなたまかせの時代になっている。FRBが何とかしてくれる、トランプ大統領が何とかしてくれる、バイデン氏なら…。そんなことを言っているうちは何も変わらない。米国は建国の精神を忘れてしまったのか。無責任な中央銀行によって、旧ソ連末期のような政策が行なわれている。だが、歴史を見ると、それも必然なのか…。
過去500年のビッグサイクル
「信用拡大は政府が市場経済と闘う第一手である」・「資本主義から計画経済に導くすべての歩みが必然的に専制・独裁に近づく歩みとなる」
(ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス)
資本主義から計画経済へ。資本主義が社会主義に勝利したと言われて30年。今度は資本主義が危機を迎えている。
経済の2番底は必ずやってくる。
「政府について知りたければ、これだけ知っておけばいい――『政府は嘘をつく』」
I・F・ストーン(米国の作家)
7月22日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
7月22日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、永倉弘昭さん(楽天証券FX事業本部長)をお招きして、「FX相場の見通しとユーロ/ドル相場」について話をしてみた。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。
7月22日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー(ラジオNIKKEI)
日本のMMT的政策と失われた30年
MT4~世界で愛用されているFX取引ツールの始め方
楽天証券21周年記念投資セミナーでは、楽天証券FX事業部の袁さんとFX取引ツールである「楽天MT4」の使い方とテクニカル指標のツボを紹介させていただいた。
「MT4~世界で愛用されているFX取引ツールの始め方~」
FXを取引してみたい方、FX初心者の方はぜひ、ご覧ください。
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