今日のレポートは、7月2日のレポート『8月の人気株主優待トップ10:コロナ危機下の優待投資、注意点は?』の続きです。

 3-5月決算がほぼ出そろいましたので、3-5月の業績を踏まえた上で、改めて8月の人気優待トップ10についてアナリストとしての評価をお伝えします。

8月に優待を得る権利が確定する銘柄の人気トップ10

人気トップ10【注】は、以下の通りです。

【注】人気トップ10

 8月に株主優待を得る権利が確定する銘柄は、105あります。楽天証券のお客様で保有している株主の数が多いほど、人気が高いと判断し、保有株主数の上位10社をピックアップしました。

人気
順位
コード 銘柄名 株価
:円
最低投資金額
:円
優待内容
1 8267 イオン 2,494.5 249,450 優待内容
2 3048 ビックカメラ 1,141 114,100 優待内容
3 9861 吉野家HD 2,072 207,200 優待内容
4 3387 クリエイト・レストランツHD 523 52,300 優待内容
5 3543 コメダHD 1,798 179,800 優待内容
6 8233 高島屋 815 81,500 優待内容
7 7545 西松屋チェーン 1,092 109,200 優待内容
8 4668 明光ネットワークジャパン 756 75,600 優待内容
9 7445 ライトオン 585 58,500 優待内容
10 3222 ユナイテッド・スーパーマーケットHD 1,249 124,900 優待内容
出所:楽天証券「株主優待検索」、株価は7月20日終値

 株価の右側の「優待内容」をクリックしていただくと、どのような優待を実施しているか、ご覧いただくことができます。ただし、優待内容は、予告なく変更されることもあります。常に最新の情報をチェックしてください。楽天証券のウェブサイトでは、1カ月ごとに優待内容を更新しています。

人気トップ10の、四半期業績をチェック

 優待投資を始めようと思っている方に、「優待品の魅力」だけ見て、選ぶ方がいらっしゃいます。株式投資である以上、最低限、足元の業績はチェックしましょう。

 ただし、誤解なきよう申し上げると、「業績を見る」というのは、決して「業績が好調な銘柄だけに投資する」「業績が不調の銘柄には投資しない」という意味ではありません。

 どんな企業も、長い年月の間には、業績が良くなったり悪くなったりします。業績が悪い時は、株価が安くなることが多いと言えます。業績が悪い銘柄でも、将来、回復が期待できるならば、割安で買える好機と言えます。

 今、コロナ・ショックの直撃を受けて、8月の人気優待に多い小売株の業績は軒並み不振です。ただし、コロナ収束後に、業績のV字回復が期待できるならば、業績悪化で売られている今が、投資の好機となります。アフター・コロナで、業績回復が期待できるか否か、判断する必要があります。

8月優待人気トップ10、四半期別の営業利益推移:2019年3-5月期~2020年3-5月期

出所:日経QUICK
注:営業利益は各四半期(3か月)分のみ、小数点2位以下四捨五入、赤字は赤で表示

 ここで、注目していただきたいのは、コロナ・ショックの直撃を受けた2020年3-5月の営業損益です。吉野屋はまだ3-5月の実績を発表していませんが、それ以外の9社のうち、5社が営業赤字です。

 コロナ・ショックのマイナス影響は、2019年11月~2020年2月から出始めていますが、まだ大きな影響にはなっていません。ダメージが大きくなったのは、3-5月からです。

 3-5月の業績を見て、業績の出方から、大きく3つのグループに分けることができます。

【1】    赤字に転落した5社:イオン、クリエイト・レストランツHD、高島屋、明光ネットワークジャパン、ライトオン
【2】    黒字だが大幅減益の2社:ビックカメラ、コメダHD
【3】    業績好調の2社:西松屋チェーン、ユナイテッド・スーパーマーケットHD

 吉野屋は、まだ3-5月の実績を発表していませんが、同社が発表している既存店販売が不振であることを考えると、吉野家は【1】か【2】に入ります。

参考:吉野屋の既存店販売(金額:前年同月比%)

出所:同社月次報告、▲はマイナス

 吉野屋の既存店販売は、2019年はきわめて好調でしたが、2020年の2月以降、急激に落ち込んでいます。まだ回復の兆しが見えていません。

人気トップ10、アナリストとしての投資判断 

【1】コロナ下で不振でも、積極的に投資したい2社:イオン、ビックカメラ

 イオンは、感染予防のために店舗閉鎖を行った影響で、3-5月は赤字に転落しました。ただし、赤字転落で株価が下がったところは、投資の好機と判断しています。コロナ収束後に、再び経常最高益を更新していく力があると考えているからです。

 総合小売業として、勝ち残りのビジネスモデルを確立したと判断しています。金融(カード事業)・不動産(テナント管理収入)・ドラッグストア(ウエルシアHD)・海外(アジア)が、中長期的に利益成長を牽引すると、判断しています。

 グループ会社の再編(旧ダイエー店舗など不採算店の整理)にコストがかかる(リストラ関連の特別損失が出る)ので連結純利益は低水準が続きますが、再編が完了する4~5年後には、純利益も最高益を更新すると予想しています。

 ビックカメラも、コロナ収束後に、利益回復を見込むので、積極的に投資したいと考えています。中長期的に経常最高益を更新していく力があると判断しています。

【2】コロナ下でも好調、投資して良いと考える2社:西松屋チェーン、ユナイテッド・スーパーマーケットHD

 コロナ下でも、生活必需品を扱う「生活密着型」小売業は好調です。その代表が、食品スーパーを中心としたユナイテッド・スーパーマーケットHDです。外食から家庭食にシフトする人が増えたため、外食業が不振な反面、食品スーパーは好調です。

 家庭食への回帰は、長期的に続くと考えています。コロナが去っても、在宅勤務が日本中に定着していけば、サラリーマンのランチ需要が、構造的に家庭食にシフトしていく可能性があるからです。

 西松屋チェーンも、幼児・子供用品の必需品を扱っており、好調です。子供用品の製造小売業として、中長期的に業績を拡大していく余地があると判断しています。

【3】不振が長引きそう、投資タイミングを慎重に選ぶべきと考える3社:吉野屋、クリエイト・レストランツHD、高島屋

 吉野屋は外食業の生き残りとして、コロナが収束したのち、収益を回復させられると判断しています。したがって、どこかで投資していきたいと考えています。ただし、足元の既存店販売が大きく落ち込んでおり、短期的な回復は見込めないことから、投資はもう少し、先にした方が良いかもしれません。

 一方、吉野家には今年から1つ好材料があります。牛肉の輸入コストが徐々に低下していくことです。今年1月から日米自由貿易協定がスタートしたからです。米国からの輸入牛肉には、これまで38.5%の高い輸入関税がかけられていましたが、1月から26.6%となりました。その後も段階的に関税率が引き下げられ、2033年には9%になる予定です。米国産牛肉を大量に輸入している吉野家に大きなメリットです。

 とはいえ、外食業の不振は長期化しそうです。クリエイト・レストランも、足元の既存店の落ち込みが大きく、投資するには時期尚早と考えます。

 同様に、業績不振が長引きそうなのが、百貨店です。百貨店への投資は慎重に考えた方が良いと思います。高島屋は、百貨店として生き残りのビジネスモデルを作りつつあると考えていますので、どこかで投資タイミングが来るかもしれません。ただし、当面は様子見した方が良いと考えています。

【4】コロナ前から不振、投資は避けた方が良いと考える銘柄:ライトオン

 ライトオンは、コロナ・ショック前から赤字が続いています。ジーンズセレクトショップとしての強みを生かし切れていません。そこに、コロナ・ショックが追い打ちをかけた形です。当分、投資は見送るべきと考えています。