値上がり有望な株見つけた!でも投資資金があと少し足りない!

 

タケル ボクは26歳の営業マン。会社を作って、尊敬するザッカーバーグみたいな大富豪になりたい! どんな会社が稼げそうかウオッチする目的と、起業資金を増やすために株式投資をはじめて3年。だけど今、持っている株式のほとんどが売り時を逃して、下がりっぱなし。伸びそうなR株を見つけたのに、資金があと少し足りない……。

――はじめての街を歩くタケルの目に、「信用取引はじめて道場」という看板を入り口に掲げる古びた雑居ビルが飛び込んできた。

タケル 信用取引? はじめて道場? 信用取引といえば、株式だよね? 営業先の約束まで時間がある。ちょっと冷やかしでのぞいてみようかな。

――雑居ビルの階段を上がったタケルの前に、「信用取引はじめて道場」と書かれた大げさな鉄の扉が現れた。そのノブに「ご自由に」と札が掛かっていることを確認すると、思い切って扉を開けた。

タケル ごめんください…。なんだ、ここは!

――薄暗い部屋にはたくさんのモニターが並び、まるでハッカー集団のアジトをイメージさせる。あぜんとするタケルの背後に人影が忍び寄る。

 ほう。新しい入門者がくるのは、しばらくぶりだ。そういえば今、下げ相場だったな。

タケル え? 相場…って。本当にこんな怪しげなところで、株式投資? 道場っていうくらいだから、信用取引を教えてくれるってことだよね?

 ウヒョヒョヒョ。若いのに、信用取引に興味があるとは珍しい。株取引の経験はあるということだな。私はドーシタという者だ。信用取引で失敗した者たちが、ここに駆け込んでくる。そうだな、かれこれ30年で弟子は200人を超えたかもしれん。

タケル ここに来れば、信用取引でイチかバチかの勝負をしたり、大きな儲(もう)けが出るようになるんですか?

≫≫[2の巻]信用取引に向いている投資、向いていない投資

信用取引はイチかバチかではない!学びと鍛錬が必要

ドーシタ師範 若者よ。イチかバチかなど、軽々しくそのような考えをするということは、まだ信用取引をやったことがないというわけだな。やらんほうが身のためだ。

タケル ボクはもっといろんな株式に投資したい。だから、自己資金が少ない自分でも信用取引の知識と技を身につけて、他の投資家と対等に株式市場で戦いたいんです。

ドーシタ師範 ほう。対等に戦いたいと。面白いことを言う。株投資を戦いだと言うとは、あいつを思い出す。試しにここへ通ってみるか、若者よ。では、まず信用取引で一番大事なことはなんだと思う?

タケル 信用取引で一番大事なこと? よく分からないけれど、追証(◆)が大変だって、聞いたことがあるような。

ドーシタ師範 それも大事なことだが、たゆまぬ学びと鍛錬だ。

タケル たゆまぬ学びと鍛錬?

ドーシタ師範 ピンとこないようだな。ところで、いま自由に動かせるカネはいくら持っているのだ?

タケル 出たばかりのボーナスが30万円あります。授業料が高いのですか?

ドーシタ師範 いやいや、授業料など取らない。ここは私のボランティアでやっている道場だからな。まあ、儲けた弟子たちがいろいろやってくれるが。若者よ、入門を許すから、少し通ってみるといい。

――【2の巻】へ続く

信用取引ことば解説

◆追証(おいしょう)とは

追加保証金の略語。信用取引をするには、証券会社に必ず預けなければならない保証金がある。この金額が最低維持率という基準に足りなくなった場合に追加で預ける資金のことを「追加保証金」という。

信用取引はじめて道場とは?

 この連載では、信用取引をスタートするために必要な準備と、株式の売買一巡するために求められる知識とテクニックを身につけてもらうことを目的にしています。

「信用取引は難しくて、よく分からない」という人にもできるだけやさしく、信用取引のメリットとデメリット、そして手数料などのコスト、さらには特有の言葉遣いの解説をします。現物取引はしているけれど、信用取引はやったことがない人が自分で銘柄を選び、取引一巡するまでをナビゲートします。

 そして、信用取引が力を発揮するのはどんな局面なのか、上手な信用取引の仕方などの技を主人公とともに学び、株式取引のレベルアップをしていきましょう。