2万2,500円を挟んだもみ合い続く

 先週末6月26日(金)の日経平均終値は2万2,512円でした。週足ベースで2週連続の上昇となったものの、前週末終値(2万2,478円)比で34円高と小幅だった他、週を通じた値動きも2万2,500円台を挟んだもみ合いが続き、目立った方向感は出ませんでした。前回のレポートでも想定していたように、日柄調整が進んだ印象です。

 今週は「月またぎ」で7月相場入りを迎えます。さらに、週初の29日(月)が6月の権利落ち日である他、週末3日(金)の米国市場が独立記念日絡みで休場のため、月初恒例の米雇用統計の発表が前日の2日(木)に前倒しされます。やや変則的なスケジュールの中、そろそろ株価が動き出す可能性についても想定しておく必要がありそうです。

 そこで、いつもの通り下の図1で足元の日経平均の状況から確認します。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年6月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 冒頭でも触れた通り、先週の日経平均の値動きは2万2,500円を挟んだもみ合いが続きました。ローソク足の形を見ても、実体が短くヒゲの長いものが多くなっており、日々の値動きはあるが、方向感に欠ける展開が続いていたことが分かります。日々の終値ベースでは、今年3番目の上げ幅を見せた16日の陽線の範囲内での推移にとどまった格好です。

 ただ、方向感が出ない中でも、ローソク足のヒゲの部分を捉えると、23日(火)に直近高値(16日の2万2,624円)を上回る場面があった他、25日(木)には、25日移動平均線の攻防戦が繰り広げられるなど、「次の動き」に向けた兆しも見えつつあります。

 その次の動きについては週初の29日(月)に試練を迎えそうです。先週末の日経平均先物取引が大阪取引所とCME(シカゴ)でともに2万2,230円と下落して終えており、先週末時点の25日移動平均線の水準(2万2,306円)を下回っています。

 そのため、今週はひとまず25日移動平均線を維持できるかが焦点となり、その後は引き続き、9~10日の高値を結んだラインと、15日の安値とのふたつの「トレンドブレイク」を待ちながらの展開となりそうです。

上下どちらのブレイクになる?

 では、現時点では上方向と下方向のどちらの可能性が高いのでしょうか。次に、他の株価指数の状況も見てみます。

■(図2)TOPIX(日足)の動き(2020年6月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 TOPIX(東証株価指数)も日経平均と同様に、二つのブレイクアウトが意識されています。

 ただ、チャートの形状については、日経平均よりも明確に上値が切り下がっている他、株価と移動平均線との位置関係についても、先週の値動きによって200日移動平均線や25日移動平均線を下抜けてしまっています。さらに、5日と25日移動平均の「デッド・クロス」も出現しているため、早い段階で株価が25日・200日移動平均線の上抜けを回復できないと、下方向に動きやすい状況となっています。

NYダウは下方向の意識強まる、NASDAQは上昇基調をキープ

 続いて、米国株市場です。

■(図3)NYダウ(日足)とMACDの動き(2020年6月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 NYダウ平均株価は、6月5~10日にかけて、200日移動平均線をまたいだ格好で「アイランド・リバーサル」が形成され、以降も200日移動平均線を上抜けできない状況が続く一方で、25日移動平均線がサポートになっていましたが、先週、この25日移動平均線を下抜けてしまいました。

 ただ、チャートを少し過去にさかのぼると、5月中旬も株価が25日移動平均線を下抜けた場面があったのですが、この時は早い段階で回復できたこともあり、このまま相場が崩れるとは言えない面があります。とはいえ、下段のMACDの下降が継続しているため、やはり下方向への意識の方に傾きつつある点に留意する必要があります。

 米国の経済指標については、改善もしくは予想ほど悪くない結果が増えていることが直近の相場を支えてきた面がありましたが、先週末26日(金)の取引では、この日に発表された5月の個人消費が過去最大の上げ幅(8.2%増)だったにもかかわらず、NYダウの下げ幅は700ドルを超えています。

 今週の米国も、4月のS&P/ケース・シラー米住宅価格指数をはじめ、6月CB消費者信頼感指数や6月ISM製造業景況指数、そして6月雇用統計と数多くの経済指標の発表が予定されていますが、最近になって、米国の1日あたりのコロナ新規感染者数が連日で過去最高を更新していることを背景に、経済活動とコロナ感染拡大が裏表の関係にあることがあらためて意識されています。経済回復のスピード鈍化や長期化が警戒されはじめたとすれば、下げ幅が大きくなってしまう可能性があります。ちなみに、IMF(国際通貨基金)が先週発表した世界経済の見通しも下方修正されています。

 一応、米株市場をけん引してきたGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)が所属するNASDAQは、まだ25日移動平均線がサポートとして機能しています。

■(図4)米NASDAQ(日足)の動き(2020年6月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 6月のNASDAQは1万pに乗せる場面があるなど、史上最高値を更新しました。また、先週は75日と200日移動平均線のゴールデン・クロスも出現しており、こちらはまだ上昇基調を保っていますが、NYダウと同様に耐えきれなかった場合には警戒感が高まりそうです。

日経平均は下向きが優勢、政治面にも注意を

 このように、他の株価指数を含めて考えると、現時点の日経平均は何となく下向きが優勢のような雰囲気です。もちろん、今週も各国の金融緩和や日銀のETF(上場投資信託)買い、売り方の買い戻しなどの需給面が相場の支えとなりますが、上値余地への期待が後退しているムードでは、株価を支える材料となっても、買い上がる材料にはなりにくいと思われます。

 先ほども述べた通り、今週は「下振れを警戒しつつ、トレンドブレイクを意識したもみ合いが続きそう」というのがメインシナリオですが、注意しておきたいのは政治面です。

 今週は中国でいわゆる「香港国家安全維持法」が成立する可能性があります。可決されれば香港の高度な自治の維持が困難となり、海外からの反発を招くことが考えられます。具体的な措置を伴う米中関係等の悪化にまで波及すれば、株価がさらに下落するスイッチになる展開も考えられ、サブシナリオとして想定しておく必要があるかもしれません。