先週の日経平均は、上下とも大きくは動かず。強弱材料が綱引き

 先週の日経平均株価は、1週間で33円上昇し、2万2,512円となりました。強弱材料が拮抗(きっこう)し、大きくは上下とも動きにくい週となりました。

日経平均日足:2020年2月3日~6月26日

注:楽天証券経済研究所が作成

  改めて、株式市場の強弱材料を、次ページから解説します。

株式市場の強弱材料【強材料】

強材料

【1】世界各国政府・中央銀行が、巨額の財政・金融政策の大判ぶるまい

 特に、かつてタカ派だったFRB(米連邦準備制度理事会)パウエル議長が、今や、景気・株価のためには何でもやる超ハト派に転換した効果が大。また、日本についていえば、日銀・黒田総裁が、年12兆円のペースで日本株ETF(上場投資信託)を買い続ける姿勢を続けている効果が大。

【2】予防ワクチンの開発が、想定よりも早いピッチで進展

 米国・英国・中国で、予防用ワクチンの開発が急速に進みつつあることが、株式相場の希望の灯となっています。通常ならば、5~10年かかる開発が、半年~1年で進む可能性も出ています。米国政府は、トランプ米大統領が進める「ワープ・アンド・スピード作戦」により、ワクチンの早期実現を支援しています。日本では、アンジェス・塩野義製薬などが開発を進めていますが、米・英・中と比較すると出遅れています。

 ただし、日本政府は、ワクチンの開発が先に海外で成功すれば、海外からワクチンを輸入する交渉も進めています。26日の英アストラゼネカの発表によると、同社がオックスフォード大学と開発を進める新型コロナのワクチンは今年秋にも実用化される見通しですが、来春には日本にも導入すると合意したようです。

【3】中国・米国・欧州・日本で、経済再開により景気が回復に向かう期待

 経済再開に伴い、米景気が回復に向かう期待が高まっています。一方、経済再開にともない、米国で新型コロナの感染が再び拡大していることに不安が出ています。

株式市場の強弱材料【弱材料】

弱材料

【1】世界景気が、戦後最悪のピッチで悪化

 足元の世界景気は戦後最悪の景気後退期に入っています。今のところ、日米欧の政府および中央銀行が、財政・金融政策の大判ぶるまいで破産の連鎖が起こることを防いでいます。

 ただし、景気悪化がこれ以上長引くと支えきれなくなり、破綻の連鎖から、金融危機が起こる不安もあります。感染再拡大を受け、早期の景気回復が実現するか、不透明な情勢です。

【2】米中対立が再燃

 米中の対立が再び激化する兆しがあります。トランプ大統領は、大統領選前は、株価を暴落させるような形で、対立をエスカレートさせないよう、気を使っていると考えられます。

 それを象徴する出来事が、6月15日(月)の東京市場でありました。ナバロ米大統領補佐官が「トランプ大統領が米中第一段階の合意の打ち切りを決めた」と発言したことが伝わり、日経平均は一時180円安まで売られていました。ところが、その後トランプ大統領が、それを否定するツイートを出すと、日経平均は一転して256円高まで買われました。

 ただし、11月の大統領選が終わった後は、トランプ大統領が再選するか否かにかかわらず、米中対立は激化すると考えられます。

【3】世界全体で感染が爆発、経済再開を進める米国も感染が再拡大

 日・米・欧・中国などの先進国では一時感染が減少していました。ところが、米国では再び感染が拡大しています。26日の米国での新規感染者は4万4,000人を超え、過去最高を更新しています。

 また、世界全体では新規感染者が加速、1日で18~19万人まで増えています。ブラジル・インド・ロシアなど新興国で感染が急拡大しています。これによって、経済再開、世界景気の回復が順調に進むか、不透明となっています。

NYダウに調整色

 NYダウ平均株価には、やや調整色が出つつあります。目先、2万4,000ドル前後まで下がる可能性はあると思います。

NYダウ日足:2020年2月3日~6月19日

 NYダウは、6月11日の急落で、アイランド・リバーサルという弱気シグナルが出て、警戒感が高まり、以後、調整色が出ています。

【注】アイランド・リバーサル
 株価が、窓あけして急騰、高値でもみあった後、窓あけして急落、急騰前の水準に戻ることでできあがる形。高値でもみあった部分が、「離れ小島」のように見えることから、「アイランド(島)リバーサル(反転)」と呼ばれる。この形が出ると、上昇相場がいったん終了することが多いので、短期的な弱気シグナルとして意識されることがあります。

 米国で感染が再び拡大していることが、不安を招いています。トランプ大統領は、ワクチンが開発されるまで、ウィズ・コロナで経済を回し続けるしかない、との考えを示しています。ただし、それができるのは、感染の再拡大が一定範囲に収まる必要があります。経済を再び止めないで済むのか、今後の米国内の感染者がどう推移するか、重要な局面です。

短期的な下落リスクに注意しつつ日本株の組み入れを少しずつ引き上げていく局面

 結論は毎回述べていることと、変わりません。日本株は割安で、長期的に買い場との判断を維持します。

 ただ、短期的には急落急騰を繰り返すと思います。時間分散しながら、割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えます。

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