人気投資ブロガーに聞く割安成長株の投資戦略!

 株式には、成長株(グロース)、割安株(バリュー)をねらって投資する戦略がある。どこに狙いを定めるべきか。百戦錬磨の投資ブロガーが自らの投資戦術を余すことなく紹介する。

 今回は、割安成長株に集中・長期投資しているエナフンさんが、投資術の秘訣(ひけつ)を語った。

生活密着型割安×成長株の見つけ方

 短期トレード主体だったエナフンさんが、急成長間近の割安株を見つけて長期投資するスタイルに目覚めたのは、リーマン・ショック前の2007年のこと。会社員には短期トレードは時間的に無理という事情だけでなく、米国の有名ファンドマネジャーであるピーター・リンチの『ピーター・リンチの株で勝つ』(ダイヤモンド社刊)という成長株投資のバイブルを読んだことで、外食産業など身近な生活圏に潜む割安×成長株投資に目覚めたのだ。

 そんなエナフンさんが最も成功したのが、かつ丼の「かつや」を運営するアークランドサービスHDへの投資。もともとは新潟が地盤のホームセンターの子会社だった「かつや」だが、関東圏に進出し、どんどん店舗数を増やしていた。

「『ピーター・リンチの株で勝つ』に外食産業が意外な大化け株になると書いてあったこともあり、複数の店舗に何度も通って、客の入りや回転の速さなどから成長が続くと確信して購入しました。株価が10倍高したあたりから少しずつ売却し、20倍高の時点で完全売却しました」(エナフンさん)

 10倍高どころか20倍高というのは「すごい」の一言! 足繁く店舗に通って会社の成長ぶりをナマで実地調査する地道な努力があってこその大成功と言えるだろう。とにかく好奇心を旺盛にして、目新しい企業に注目し、地道に決算書を読んだり、店舗に足を運んで研究・観察。時には投資イベントに足を運んで経営トップの話まで直接聞きにいく――あくなき探求心こそがエナフンさんが大成功した秘訣なのだ。

成長株かつ割安株投資の極意とは?

 アークランドサービスHD(3085)の他にも、循環器系の医療機器を製造するDVx(3079)で10倍高、トレジャーファクトリー(3093)で5倍高を勝ち取ったエナフンさん。

「DVxは、購入した2008年当時、ずっと増収増益を繰り返しているのにPER(株価収益率)が5倍前後と著しく低迷しているのが気になって、ディフェンシブ銘柄、かつ安定した需要があると確信して投資しました。トレジャーファクトリーは5倍高ですが、リサイクル意識の高まりや中古品でも気にしないという消費者意識の変化から、市場自体が成長すると実感。裸一貫でこの会社を大きくした経営者の経験や手腕が生きると判断し、底値から2倍高で購入し、結果、5倍高を取ることができました」(エナフンさん)

 単なる思いつきではなく、多くの投資家がまだ注目していない初期の段階で急成長株を見つけるエナフンさんの「嗅覚」は、日ごろから地道に有望企業の分析を続けてきた努力と信念の賜物(たまもの)といえる。

「効率よく、成長株かつ割安な株を見つけるためには、その企業が現在、重点的に取り組んでいる成長戦略を分析し、3~5年後に会社がどう成長して業績がどれだけ伸びているかを、自分なりに数字に落とし込んで予想することが大切です。業績の予想数値と現在の株価を比較して成長性に比べて割安だと判断したら、3~5年程度の保有を前提に、5~10銘柄を分散保有する『長期集中投資』をする。それが私のスタイルです」とエナフンさん。3~4年が経ってまだ成長が続いているようなら、さらに長期保有を考えるのだと言う。

 といっても、どこにそんな成長株があるか、なかなか初心者には分からないもの。エナフンさんが出してくれたヒントは、次の3つのこと。

1:自分がついている職業に強く関連するなど自分自身が他人より詳しいセクター
2:小売りや外食、金融、建設など市場が大きくて安定的な需要があるセクター
3:投資の時期としては一時的な暴落局面や株価低迷が長引いているとき

 コロナ・ショックで多くの企業の株価が急落した今は、ある意味、割安成長株に長期厳選投資を始める格好の時期なのかもしれない。

「業績がいいのに株価低迷」を疑問に思うことが大切

 熊本地震でスマホカメラ向け半導体の主力工場が被災し、一時的に株価が低迷していたソニー(6758)に、アークランドで利益を出した資金の大半を投資して2年で2倍高。アベノミクス初期の頃、好景気が続くと人材不足が深刻化するという判断で『四季報』から探したウィルグループ(6089)でも3倍高を奪取するなど、「成長可能性のある銘柄が不人気になって株価が下落した絶妙のタイミングを狙う」のがエナフンさんの持ち味。

「業績が上向きで安定成長しているにもかかわらず株価が長期的に横ばい」「業績悪化の原因が経営改革にともなう一時的な損失によるもので、ビジネスモデル自体はむしろ健全化している」といった目のつけどころは、プロでもなかなかマネできないほど鋭いものだ。

 そんなエナフンさんも、時には失敗もあったという。

 オーダーメード紳士服のネット販売というビジネスモデルに注目して買ったオンリー(3376)で、20%の損切りを強いられたのは、働き方改革やリモートワーク普及で紳士服という市場自体がしぼみ始めたためだった。エナフンさんが反省するように「投資先企業の成長の前提が崩れ、もう成長する見込みがなくなったときにはスパッと利益確定もしくは損切りする決断力も必要(エナフンさん)」なのだ。

「2008年のリーマン・ショック以降の投資はほぼ一貫してうまくいっています。コロナ・ショックで暴落した2020年2~4月は一時的に前年比30%のマイナスに沈みましたが、5月になって±0%まで取り戻すことができました」と語るエナフンさん。

 お宝株を人知れず発掘できる独自の着眼点や、実地調査もいとわない行動力、成長が続く限り、一時的に下がっても株を長期保有し続ける信念と忍耐力、そして、成長がピークに達したら、これまでの成功体験に酔うことなく利益確定できる見切りの速さはぜひ見習いたいもの。

「丹念に有望そうな銘柄を探索する努力を継続すれば、きっとお宝株に巡り合えます。でも、それだけじゃだめ。その株を忍耐強く、2~3年持ち続ける覚悟も大切です。そうすれば新型コロナウイルスなどの危機が来ても、きっと乗り切ることができると思います」(エナフンさん)

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エナフンさんプロフィール

 長期投資をテーマにした人気ブログ「エナフンさんの梨の木」を運営。サラリーマン投資家ながら割安成長株投資で数億円の利益を上げたプロ顔負けの投資歴を持つ。結婚を機に「妻と一緒にお金持ちになりたい」という一心で貯めた2,000万円を元手に、「かつや」のアークランドサービスHDなど10倍株(テンバガー)を2度ゲット。身近な生活圏にあり成長を実感できる割安な内需成長株に長期集中投資する手法で成功を収めている。著書に『“普通の人”だから勝てるエナフン流株式投資術』(日経BP社刊)。
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