経済再開への期待で、日経平均は2万1,000円超え

 26日の日経平均株価は、前日比529円高の2万1,271円となりました。新型コロナ感染鈍化を受け、全都道府県で非常事態宣言が解除されたことを好感。経済を徐々に再開していくことに期待が集まりました。

 経済再開期待から、26日の東京市場では、空運・海運・自動車など、コロナショックで売り込まれた景気敏感株の上昇率が高くなりました。

日経平均日足:2020年1月4日~5月26日

 上のチャートをご覧いただくと、じりじりと下値を切り上げてきた日経平均が、一気に上放れしたように見えます。経済再開後の、感染二次拡大のリスクを、株式市場はどう解釈しているのでしょうか?

 改めて、株式市場の強弱材料を、以下に掲載します。

株式市場の強弱材料

出所:筆者作成

 3つの弱材料を無視して、株価が上昇しているように見えます。ただし、視点を変えれば、先行きの回復期待が強まったことに反応していると解釈することもできます。

 3つの弱材料を、個別に検証します。まず、世界経済が戦後最悪のピッチで急激に悪化していることが不安視されています。これを無視して良いのでしょうか?

 今の景気悪化は、世界各国が感染を抑えるために都市封鎖をやったために起こっています。したがって、中国、米国、欧州、日本で徐々に経済を再開していけば、先行き、急回復が見込まれます。株は先読みして動くものですから、足元の景気悪化より先行きの回復期待に反応していると、解釈することができます。

 ただし、経済再開後に感染が再拡大したらどうなる、という不安もあります。これに対しても、楽観論があります。ワクチンの開発が、米国・欧州・中国で、予想以上の速さで進んでいることが楽観論につながっています。半年~1年後に、予防用ワクチンが利用可能となり、感染終息に寄与するとの期待があります。

 それでも、ワクチンが利用可能になる前に、感染が拡大したらどうなる、との不安もあります。これに対して、感染が再拡大しても、もはや再び都市封鎖することはない、との楽観もあります。

アフター・コロナの前に、ウィズ・コロナの対応が求められる

 感染の二次拡大があった時に、社会的議論が巻き起こると思います。再び、都市封鎖すべきか、あるいは、ウィズ・コロナ(コロナと共存)のまま経済を動かし続けるべきか、いずれかを選択しなければ、なりません。

 都市封鎖のコストがいかに大きいか、世界中が骨身に染みてわかった今、ウィズ・コロナでやっていくしかないと、考える人が欧米では増えています。日本でも、いずれそう考える人が増える可能性があります。

 仮に1年後に、ワクチンの普及でコロナが終息するとしても、それまでの間、ウィズ・コロナで経済を動かす工夫が求められます。ワクチンが普及するアフター・コロナ(コロナ後)の前に、ワクチンのないウィズ・コロナで生きていく知恵が必要です。

 株式市場は、ウィズ・コロナで経済の回復が続くシナリオを織り込み始めていると、考えられます。

最大の悪材料は、米中対立の再燃

 コロナ後を考えると、株式市場の最大の悪材料は、米中対立の激化だと思います。現在、世界を苦しめている新型コロナは、たぶん、1年後には先進国では終息に向かっていると思います(新興国ではさらに長引くかもしれません)。

 ところが、米中対立は、終息しません。20世紀後半の米ソ冷戦のように、50年は続くと考えられます。コロナショックが激化していく最中、一時的に米中は休戦していましたが、すでにコロナ後を見据えた、対立の再燃が見られます。

 米中対立がもたらす、世界経済の分断は、かなり重たいものになるでしょう。ちょうど、新型コロナの流行で、グローバル分業が高リスクだと、多くの国が思い始めているタイミングです。ここに、米中対立による分断が加われば、グローバリスムはかなり後退することになるでしょう。

 コロナ以上に、米中対立の激化に注意が必要と思います。

気になるのは、Sell in Mayのウォール街格言

 1つ気になるのは、米国株の季節アノマリーです。米国株は、5月に高値をつけ、夏場に調整し、9月から12月にかけて再び高値を取りにいく傾向が、過去に何度も見られています。そこで、米国ウォール街(ニューヨークの金融街)には、Sell in May(5月に売れ)の格言があります。

 日本株は長期的に良い買い場と考えていますが、短期的には、上昇ピッチが速すぎることに、やや警戒も必要と思います。

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