「業績や保有資産に比べて株価が安過ぎる!」という銘柄に投資して、配当金や株主優待などをもらいながら気長に株価上昇を待つ。それが「割安=バリュー株投資」のスタイル。しっかり銘柄を選べば、株価が「安過ぎる」分、そこからさらに下落して大きな損失をこうむるリスクが限定されている点も魅力だ。割安株に多いと言われる、高配当利回り株にも精通する株式アナリストの佐藤勝己氏が解説する。
割安株って何?どうやって探す?
日常のショッピングでもバーゲンセールが大好きな人は多いはずだ。割安株投資も基本はバーゲンハンティング。普段の生活でも使っている「お買い得感」の嗅覚を、そのまま株銘柄探しに生かすことができる。
「株価が割安かどうかを測る指標は、会社が1年間に上げる利益の何倍まで株が買われているかを示したPER(株価収益率)、1株あたりの純資産の何倍かを示したPBR(株価純資産倍率)が有名です。一般にはPER10倍以下、PBR1倍以下の株価水準になると『割安』と判断されます。中でも一番の割安基準になるのが『PBR1倍割れ』。理論上、その会社の株を全部買い占めて、会社が保有する資産を全部売り払えば、お釣りが来て利益が出るのが、PBR1倍割れの状態です」と佐藤氏。
だからといってPBR0.8倍と0.9倍なら、0.8倍のほうがお買い得かというとそうでもなく、「PBR1倍割れ」はある意味、スーパーの「特売」や「セール」と同様、「この株は割安だ!」という象徴的な水準といえる。
「割安だからお買い得だと判断するには、株主配当や株主優待など、その会社の株を保有することでもらえる金銭的価値を実感できることが大切です。そのため、その会社の株価に対して、年間でいくら配当を受けられるかを示す数値『配当利回り』も割安株投資で投資家が注目する重要な指標といえます。個人の場合、その会社が優待株なら、もらえる優待品の価値もプラスした配当+優待利回りで割安株を選ぶのもいいでしょう」(佐藤氏)
優待株の中には、金銭に換算すると、配当金をはるかに上回るお得な優待がもらえる企業もある。その優待をきっちり利用しているなら、優待利回りも重要な選別基準だと言う佐藤氏。
「むろん、運用会社など機関投資家は、株主優待にはまったく関心がありません。プロが狙う割安株は、キャッシュをたくさん保有しているのに、株価は割安のまま、投資家に関心を持たれていない銘柄。その会社の保有する現預金から有利子負債を差し引いた『ネットキャッシュ』が時価総額の何%になるかは、『会社四季報』などで調べたほうがいいでしょう。コロナ・ショックの影響で、時価総額の倍以上のキャッシュを持つ超・割安株も多数誕生しており、そうしたキャッシュリッチ企業には投資ファンドのTOB(株式の公開買い付け)による株価急騰にも期待できそうです」(佐藤氏)
いくら株価が割安でもその後、破たんしてしまっては元も子もない。その会社のネットキャッシュや自己資本比率に注目することは、これ以上の株価下落リスクが少ないかどうかを確かめる上でも重要だ。
長期戦覚悟の割安株投資。業績の変化に敏感に
割安株というのは「株価が安い」のが特徴。その理由はといえば、とにかく「人気や魅力がない」ことだ。確かに株主配当や優待でお得感を満喫するのが割安株投資の魅力だが、株式投資で利益を得るには株価が上昇しないことには話にならない。「万年割安株」をずっと持っているのは資金効率も悪く、株価がズルズル下がって、配当+優待でもらった金銭的価値以上の含み損を抱えてしまっては本末転倒だ。
「投資家から『この株、割安だけど意外にいいじゃない』という注目を集めるためには、やはり会社自体に変化の兆しがあることも重要です。その会社の業績が上向きに転じたり、新たなビジネスへ挑戦したりなど、業績や経営面でポジティブな変化が生まれそうな銘柄を狙うほうが、効率よく値上がり益も狙えます」(佐藤氏)
そのためには、決算発表で「黒字転換」「業績上方修正」「増配」といったサプライズが出た割安株をいち早く買うなど、変化に敏感であることが大切なのだ。
「割安株が注目されるのは、何らかの要因で株式相場全体が急落したことにつられて下落し、好業績の株までもがたたき売られ、株価が極端に割安になっているようなとき。その意味ではコロナ・ショックで株価水準が全体的に下がっている今は、割安株投資を始める良いタイミングといえるかもしれません。また、金利が上昇する局面では、割高な成長株よりも、業績が安定してバリュエーション(企業価値と比較して、株価が割安か割高かを判断すること)が適正な割安株に注目が集まるなど、投資する時期も大切になってきます」(佐藤氏)
割安株は売り時も大切!
会社が急成長を続ければ、株価もどんどん青天井で上昇する成長株に比べると、「株価が安い」という理由だけで買われている割安株は売り時も大切になる。
「割安株投資はその株に割安感がなくなったら終わり。市場の関心が集まるのを我慢して待っていたのに、少し上がったからといってすぐに売ってしまうことに未練を感じるかしれません。でも、再び誰にも見向きもされない時期が来るかもしれないので、見切りは早いほうがいい。その際、参考にしたいのは同業他社のPERやPBR。他社に比べてこれらが割安だった状態から、同レベルか、それ以上になったら割安株としては卒業。売り時と考えたほうがいいでしょう」(佐藤氏)
株価が割安で、これ以上は安くならないほど下がっていたとしても、業績が悪化すれば破たんするリスクもある。「そういう意味では自分が割安だと思った水準から少しでも下がったら、すぐ損切りすることも大切。会社がつぶれてしまったら、割安も何もないですから」と佐藤氏は割安株投資のいちばん重要な点を教えてくれた。
※本記事は2020年5月15日現在の株価情報などによるものです。
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