コロナ危機で、減配や配当を未定とする企業が増える

 3月期決算企業の決算は、本来もう出そろっているタイミングです。ところが、今年はコロナ危機下の特例で、まだ決算を発表していない企業が多数あります。危機対応で、決算作業が大幅に遅延しています。

 既に決算を発表した企業でも、今期(2021年3月期)の業績予想を未定とする企業がたくさんあります。コロナショックがいつ終息するか見通せないため、今期の予想をたてようがないからです。

 業績予想を発表する企業では、保守的な見積もりとして「大幅減益」の予想が多くなっています。たとえば、トヨタ自動車(7203)は、今期の連結営業利益が8割減の5,000億円に落ち込む予想を出しました。業績予想をたてようがない環境でも、豊田社長の強い意向があって、予想を出しました。

 予想を出せない企業がほとんどの中、トヨタが出したことは株式市場で高く評価されました。リーマン・ショック時のように赤字転落とはならない予想にできたことに、トヨタの底力が見えたと言われています。

 ただし、そのトヨタでも、今期の配当予想は出しませんでした。日本中の企業が、コロナ危機で手元現金を積み上げる必要に迫られているため、今期の配当予想を未定とする企業が増えています。減配の発表も増えています。

 配当金を減らしたり、配当予想を未定とする企業が増えているため、東証一部予想配当利回り(加重平均)は、以下の通り、急速に低下しています。

日本の長期金利(10年もの新発国債利回り)と東証一部予想配当利回りの推移:1993年5月~2020年5月(19日まで)

出所:楽天証券経済研究所が作成

コロナ危機下でも配当維持、増配を発表する高配当利回り株に注目

 企業が発表する今期(2021年3月期)業績予想は、仮の予想に過ぎず、あまり当てにはなりません。コロナショックがどこで収束するか前提次第で、業績予想はどうにでも変わるからです。それに対して、企業が発表する今期の配当予想には、企業の本音が表れていると思います。

 配当予想を未定、あるいは減配(1株当たり配当金の減額)とする企業には、財務や将来の収益に自信が持てない企業が多いと言えます。一方、配当維持、あるいは増配(1株当たり配当金の増額)を発表する企業は、財務や収益に自信を持っていると言えます。

 そこで、今回は、配当維持・増配を発表した3月期決算企業の中から、私が今、ファンドマネージャーならば買ってみたい高配当利回り株12銘柄をご紹介します。

投資の参考銘柄:TOPIX500採用の3月期決算企業で、今期配当維持あるいは増配を発表した、予想配当利回り3.7%~6.5%の12社

コード 銘柄名 株 価 配 当 備 考
8316 三井住友FG 2,919.5 6.5% 配当維持
9434 ソフトバンク 1,403.0 6.1% 増 配
8411 みずほFG 123.0 6.1% 配当維持
8306 三菱UFJ FG 423.9 5.9% 配当維持
8058 三菱商事 2,395.0 5.6% 増 配
8031 三井物産 1,604.5 5.0% 配当維持
4502 武田薬品工業 4,085.0 4.4% 配当維持
1812 鹿島建設 1,207.0 4.1% 配当維持
8001 伊藤忠商事 2,242.5 3.9% 増 配
9437 NTTドコモ 3,066.0 3.9% 配当維持
8253 クレディセゾン 1,163.0 3.9% 配当維持
9433 KDDI 3,227.0 3.7% 増 配
出所:各社決算資料から楽天証券経済研究所が作成。配当利回りは、2021年3月期1株当たり配当金(会社予想)を5月19日終値で割って算出

 なお、上記の表に出ている「ソフトバンク」は、親会社のソフトバンクグループではなく、子会社で携帯電話事業をやっているソフトバンクです。親会社のソフトバンクグループは、今期配当を「未定」としていて、孫社長が無配になることもあり得ると話しています。一方、子会社のソフトバンクは、増配を予定しています。親会社にキャッシュを渡すために、配当を続けると考えられます。

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