割安株に比べると、株価上昇の勢いが強い成長(グロース)株。しかし、業績が期待通り伸びず、投資家の興奮が少しでも冷めると株価が急落しやすい性質を持っている。

「いくら成長株でも、株価が急騰した直後の人気絶頂期に買っては、あまりもうかりません。たとえ成長株でも、何か問題が起きて株価が下落したときが狙い目」と言う楽天証券経済研究所の窪田。

 今、新型コロナウイルスが世界経済を脅かし、世界的に大きく株価は下落している。成長期待株を割安に買う好機といえるかもしれない。

 そこで、コロナ危機で株価が下がっても、コロナ後再び最高益更新が期待できる8銘柄を窪田がラインアップした!

窪田が選定!コロナで下がった成長期待株8銘柄

KDDI(東証1部・9433)

「携帯キャリア大手。前期(2020年3月期)、18期連続増配を達成。今期(2021年3月期)は19期連続増配を予定しています。純利益は前期で7期連続、今期は8期連続の最高益の予想で、コロナ危機下でも、最高益・連続増配を目指す安定成長株です。ただし、株価が成長株として評価されているとは言えません。PER(株価収益率)11倍、配当利回り3.9%(2020年5月22日時点)と、株価指標で見て、割安な株価に据え置かれています。携帯電話事業の成長性が低下していることが、株価の上値を重くしていると考えられます。一方、携帯電話事業に付帯する、ライフデザイン領域、ネット通販・金融・コンテンツなどのビジネスが成長期に入り、全体で最高益更新に貢献しています。KDDIは、3.9%の予想配当利回りに加え、株主優待でも個人投資家に高い人気です。全国各地のグルメカタログから選ぶ、カタログギフトが人気です」(窪田)

成長期待株は?

パーク24(東証1部・4666)

「『時間貸し駐車場(Times)』および『カーシェア』で国内トップのパーク24は、シェアリングエコノミー(*)関連の成長株として、高く評価しています。駐車場事業で安定収益を稼ぎつつ、カーシェア事業で成長することが期待されています。ただし、コロナ危機で、駐車場やカーシェアの売り上げが低迷する不安から、パーク24の株価は足元で急落しています。その結果、今期(2020年10月期)の予想配当利回りは、3.5%まで上昇しています(2020年5月22日時点)。コロナ後に、最高益を更新していく力があると考えており、株価が下がっている今、投資の好機と判断しています」(窪田)

*シェアリングエコノミー:乗り物・住居・家具・衣服や各種サービスなどを単独で所有せず、多数の人間が共有(シェア)して利用すること。または利用する仕組み。所有しないでシェアすることが、今後、自動車を含め、あらゆる分野で進むと考えられおり、シェアリングエコノミーは、成長産業と考えられている。

三菱商事(東証1部・8058)

「三菱商事は、2019年3月期に純利益で5,907億円と最高益を更新しましたが、前期(2020年3月期)の純利益は、コロナ危機の影響から、9%減の5,353億円となりました。続く今期(2021年3月期)の純利益は、25%減の4,000億円を会社では計画しています。原油など資源価格が急落した影響から、資源事業の収益が減少します。ただし、非資源事業を強化してきた成果で、コロナ危機下でも、安定的に収益を稼げていると言えます。同社は、今期、増配を計画していて、予想配当利回りは5.6%に達しています(2020年5月22日時点)。コロナ後に再び最高益を更新していく力のある企業と判断しています。ただし、株式市場での評価は高いとは言えません。会社の純資産に対して株価が何倍まで買われているかを示すPBR(株価純資産倍率)は0.7倍と、解散価値と言われる1倍を下回っています。これは資源関連株というイメージがつきまとっている影響と考えています。非資源事業を拡大し、成長していく企業としての価値が評価されていないと思います」(窪田)

成長期待株は?

三井物産(東証1部・8031)

「コロナ危機・資源価格の下落でダメージを受けているのは三菱商事と同じです。2019年3月期に連結税前利益が5,843億円と最高益を更新したものの、その後利益が落ち込んでいます。ただし、コロナ後には、非資源事業の拡大によって、再び最高益を更新していくと判断しています。今期の配当金は前期水準を維持する予定で、配当利回りは5.1%に達しています(2020年5月22日時点)」(窪田)

日本電産(東証1部・6594)

「静音・省エネ・長寿命のブラシレスモーターで世界シェア1位の国際優良企業です。自動車・産業用モーター事業への進出を加速させており、積極的なM&A(企業の合併、買収)を進めています。2期前(2019年3月期)、前期(2020年3月期)と2期連続減益ですが、それは循環的な成長を続けるためのワンフレーズに過ぎず、再び最高益を更新するでしょう。コロナ危機で株価が急落しましたが、安定的な成長株として株価の反転上昇に期待したいところです」(窪田)

リクルートホールディングス(東証1部・6098)

「人材派遣ビジネスが好景気の人手不足で躍進し、コロナ危機直前の2020年2月末には4,615円の上場来高値をつける成長株でした。しかし、コロナ危機で、主力の人材派遣業やネット旅行サイト『じゃらん』の先行きが不透明になったことで、投資家の熱狂が一気に冷め、株価も急落しました。ただし、ITを駆使した各種ビジネスには今後も成長が期待でき、コロナで売られた今は、投資の好機と思います」(窪田)

成長期待株は?

ソニー(東証1部・6758)

「日本のIT産業は米国のFANG(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字を取り米国巨大ネット銘柄群を表す)に駆逐されてしまった感がありますが、その中にあってゲーム分野だけは、日本勢が支配しています。任天堂とソニーは、ゲームを中心に世界で勝負できるIT成長企業として評価できます。ソニーはスマホカメラなどに欠かせない画像センサでも世界シェア1位で、この分野での成長余地もあります」(窪田)

キッコーマン(東証1部・2801)

「世界的な和食ブームでここ数年、最高益更新が続きました。高成長株とは言えないものの、2018年には株価が6,880円の高値をつけ、順調に上昇していました。ところが、コロナ危機で、株価は2020年5月22日時点で、5,060円まで下落。とはいえ、世界の和食市場は今後も拡大が続き、和食調味料として人気が出ているしょうゆで、高いシェアと高い技術力を持つ同社もその恩恵を受けていくと考えています」(窪田)

※本記事は2020年5月22日現在の株価情報などによるものです。

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