高配当株投資は、節税口座で

 コロナ危機からの回復の道筋が見えない中、米中対立が再び激化する懸念もくすぶっています。投資デビューしようと思って証券口座を開いたものの、不安材料が多くてなかなか投資を始められない方もいると思います。

 私は、日本株は配当利回りや買収価値から見て「割安」と判断しています。短期的な下値リスクは払拭できませんが、不安材料が多いからこそ株価が安くなっていると言えます。不安材料がなくなって株価が高くなったところで買うより、不安材料がある間に割安な株価で投資を始めた方が、長期的な資産形成には良いと思います。

 大型株で4%以上の利回りが出る「高配当株」から投資したら良いと思います。高配当株への長期投資には、売買益や配当金が非課税になるNISA(ニーサ)口座を使うと良いと思います。つみたてNISAでも非課税投資ができますが、つみたてNISAでは投資信託にしか投資できません。個別株を買うには、NISAを選ぶ必要があります。

18.9%の方が、NISAもつみたてNISAもやっていない

 2018年11月に実施した楽天DI(読者の皆さまへのアンケート調査)で、NISA・つみたてNISAの利用状況について伺い、2,900人超の回答をいただきました。結果は、以下の通りです。

2018年にNISA、つみたてNISAをしましたか?

出所:楽天証券、2018年11月時点

 近年、非課税で資産形成できる制度が、いろいろ増えています。利用可能な範囲で、しっかり使いましょう。

 利用できる節税手段があるのに、使わないのは、とてももったいないことです。「よく分からない、面倒くさい」とほったらかしにすべきでありません。

 NISA口座で、高配当株5銘柄(平均配当利回り5%)合計120万円に投資するとします。すると、年間6万円(120万×5%)の配当金が得られます。

 課税口座(特定口座)で投資すると、6万円の配当金から20.315%(約1万2,000円)の税金(源泉税)が差し引かれます(分離課税選択の場合)。6万円配当金が出ても、税引き後で受け取れるのは、約4万8,000円となります。

 ただし、NISAで投資すれば、非課税なのでまるまる6万円受け取れます。その差は大きいです。

NISAとつみたてNISA、どう使い分けるべき?

 NISAには、2014年から始まった従来型「NISA」と、2018年から新たに始まった「つみたてNISA」の2種類があります。1年間にどちらか1つしかできません。両者の大きな違いは、非課税となる期間、年間上限額、そして、対象商品の3点です。概要は、以下の通りです。

NISA・つみたてNISA概要

出所:楽天証券経済研究所が作成

これまでやって来なかった人は、今年から始めるべき

 これまでNISAやつみたてNISAをやってこなかった方は、今年から始めるべきと思います。不安が出て株が下がった時は、始めるのに良いタイミングと判断します。

 NISAに投資していく場合、現在の予定では2023年まで、毎年新規に120万円の非課税投資枠を得ることができます。2020年から始めて2023年まで毎年120万円ずつ非課税投資をすれば、4年でかなり大きな非課税投資枠が得られます。

 ただし、非課税枠は、以下の場合に消滅することを理解していてください。

【1】枠を得てから5年後
→2020年に得た枠は、2024年末で終了します。

【2】5年たつ前に買った金融商品を売却した場合
→売却益は非課税ですが、売却した部分は非課税枠が終了します。少しずつ売却していく場合は、売却した分だけ非課税枠が減少していくことになります。

【3】120万円まで投資せずに非課税投資枠を残した場合
 →2020年分のNISA枠は、2020年中に投資しないと有効になりません。投資せずに残した非課税枠は消滅します。次の年に引き継げません。たとえば、2020年に120万円のNISA非課税枠を得ても、2020年末(受渡ベース)までに70万円までしか投資しなかった場合、残りの50万円の非課税枠は消滅します。2021年に引き継ぐことはできません。
 ただし、2021年には、2021年のNISA枠として、新たに120万円の非課税枠を得ることが可能です。

NISAとつみたてNISA、どちらを使ったら良いか

 2020年の非課税投資枠として、NISAかつみたてNISA,どちらか1つしか選べません。NISAは、1年間に120万円まで非課税枠がありますが、5年しか有効ではありません。単純計算すると5年間で、120万円×5年=600万円の非課税枠を使えることになります。

 一方、つみたてNISAでは、40万円しか非課税枠が得られないものの、20年間有効です。単純計算すると20年間で、40万円×20年=800万円の非課税枠を使えることになります。どちらが有利とは、一概に言えません。

 1年ごとにNISAとつみたてNISAを交互に使うのも良いでしょう。2020年はつみたてNISA、2021年はNISAといった具合です。また、夫婦で使い分けても良いでしょう。2020年に夫がNISA、妻がつみたてNISAという具合です。2021年には、逆にして、夫がつみたてNISA、妻がNISAという使い方も可能です。

 すでに、120万円の投資資金をお持ちの方は、非課税枠が大きいNISAを選んだ方が良いでしょう。年間の投資可能額が40万円以内で、毎月積み立てでコツコツ投資していきたい方は、つみたてNISAの方が良いと思います。

 投資対象の違いも考慮に入れる必要があります。つみたてNISAは投資信託だけになります。個別株に投資したい場合は、NISAを選ぶ必要があります。

 つみたてNISAは、国の定めた条件を満たした投資信託しか買うことができません。ただし、手数料が高すぎず、インデックスファンドなど分散投資ができているファンドしか投資対象として指定されていません。手数料が高すぎる、不適切なリスクを取っている投信を、ついつい買ってしまう人は、つみたてNISAにすれば、その心配がありません。

特定口座で保有している株式を、NISA口座に移すことはできません

 NISA口座を使って、非課税で高配当株投資をするためには、まず、NISA口座を開くことから始めなければなりません。NISA口座を開き、NISA口座で買い付けた銘柄だけが、非課税になります。

 NISA口座を開く前に、課税口座(特定口座や一般口座)で買い付けた銘柄を、後からNISA口座に移すことはできません。ご注意ください。

NISA口座で投資可能な高配当株ポートフォリオ

 ご参考までに、NISA口座での1年間の投資枠(120万円)以内で買えるように、大型の高配当株5銘柄で作ったポートフォリオを掲げます。このポートフォリオの平均配当利回りは5.9%です(5月18日時点)。

投資の参考:5銘柄で作った高配当株ポートフォリオ

コード 銘柄名 配当利回り 18日株価 投資株数 投資金額 投資比率
2914 日本たばこ産業 7.6% 2,024.5 100 202,450 18.1%
8316 三井住友FG 6.8% 2,805.5 100 280,550 25.1%
8058 三菱商事 5.7% 2,340.0 100 234,000 20.9%
8031 三井物産 5.1% 1,559.0 100 155,900 14.0%
9432 日本電信電話 4.1% 2,446.5 100 244,650 21.9%
  合計 5.9%     1,117,550 100.0%
【単位】 配当利回り:%  18日株価:円   投資金額:円   投資比率:%
出所:配当利回りは、今期1株当たり配当金(会社予想)を、5月18日の株価で割って算出。楽天証券経済研究所が作成

 投資信託で、高配当利回り株ファンドを買わなくても、このように自分で高配当株ファンドを作って長期投資するのも良いと思います。

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