日経平均は週足で下落。短期の上昇基調ストップの可能性も

 先週末5月15日(金)の日経平均株価は2万37円で取引を終えました。この日は取引時間中に2万円台を下回る場面があったものの、終値では何とか維持することができました。とはいえ、前週末終値(2万179円)からは142円安となり、週足ベースで下落に転じています。

■(図1)日経平均(日足)とMACDの動き(2020年5月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作

 まずは、いつもの通り足元の状況から確認です。

 先週の日経平均は25日と75日移動平均線のあいだの比較的狭い範囲内での推移となりました。週初の11日(月)に直近高値(4月30日の2万365円)を超え、2万500円台をつける時間帯もあったのですが、以降は伸び悩んでしまい、週末にかけては5日移動平均線に上値が抑えられ、2万円割れの場面も出てきました。

 前回のレポートでも指摘した、目先の目標である直近高値(2万365円)超えは達成したものの、3月6~9日に空けた「窓埋め」トライ(2万749円)までは上昇できなかったわけです。

 確かに、先週の東証1部の売買代金は2兆円を少し超える程度の推移が続き、あまり盛り上がらなかった他、米中摩擦に対する警戒感もくすぶっていましたので、2万1,000円台乗せには思ったよりも買いのエネルギーが必要であることをあらためて確認する格好になったと言えます。ローソク足の形も11日(月)の陽線を除いてすべて陰線となっていて、売りが優勢だったことが分かります。

 また、先週の値動きによって下段のMACDとシグナルの間隔が縮小してきました。15日(金)時点でのMACDは214円、シグナルが163円です。今週の日経平均がさえない展開となれば、MACDがシグナルを下抜けてしまい、短期の上昇基調がいったんストップすることも考えられます。

米国株市場では短期トレンド転換のサインがすでに出現

 ちなみに、MACDのシグナル下抜けについては、米国株市場が一足早く出現しています(下の図2と図3)。

■(図2)米NYダウ(日足)の平均足とMACDの動き(2020年5月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

■(図3)米NASDAQ(日足)の平均足とMACDの動き(2020年5月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 米NYダウ平均株価、NASDAQの両方で上段の平均足がともに陰転した後にMACDがシグナルを下抜けしているため、短期的なトレンドが転換し、上昇から下落への意識が強まるサインとなっています。

 今週は、ソフトバンクGをはじめとする企業決算が相次ぐ他、1-3月期GDP(国内総生産)や3月機械受注、4月貿易統計といった経済指標など、国内のイベントが多くなっています。また、21日には緊急事態宣言の追加解除の判断もされる予定ですが、日本は株式市場もコロナ対応も世界から出遅れ傾向にあるため、基本的な相場の方向感は海外市場の動向やムードに左右されることになります。とりわけ、先週も株価の上値を抑えた米中関係の動向がカギです。

 米国からの圧力が強まる中、中国では今週22日から全人代(全国人民代表大会)が開幕します。全人代は中国国内に向けたアピールという側面があり、メンツを重視する中国としては、このタイミングで米国に対して強気に出ざるを得ず、さらに米中関係がより悪化してしまうという展開には警戒が必要かもしれません。

中長期的なチャートの形を改善できるか

 最後に、週足でも日経平均の平均足とMACDの状況についても見ていきます。

■(図4)日経平均(週足)の平均足とMACDの動き(2020年5月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 週足の日経平均の平均足は4月に入ってから陽線が続き、下段のMACDとシグナルのクロスももうすぐ実現しそうなところまで来ています。この流れでみれば中長期的に下落トレンドからの転換となりますが、先週末時点のMACDがマイナス809円、シグナルがマイナス767円ですので、「0円」ラインからまだかなり下に位置しています。そのため、本格的な上昇トレンド入りと判断するにはまだ時間が掛かりそうです。

 さらに、上段の移動平均線についても、株価が13週移動平均を超えてきたものの、13週移動平均線自体が下向きである他、26週と52週移動平均線を見ても、「デッド・クロス」が実現しそうな状況となっており、移動平均線からはまだ下方向への意識を保ったままです。

 そのため、短期的に強まっている下方向の意識が、「最近までの株高による利益確定売り」なのか、「再下落の始まりなのか」を見極めつつ、中長期的なチャートの形を改善できるかを探ることになり、今週も2万円台の攻防を中心に株価の上げ下げを繰り返すというのが、メインシナリオになりそうです。