ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ社の2019年度年次報告書「株主への手紙」。2回目となる今回は、鉄道事業をはじめとする多様な非保険事業の業績結果、そしてバフェット氏が広範な事業会社を傘下に持つがゆえに犯してしまった失敗についても述べています。

非保険事業について

 当社の重要な取締役であり、長期にわたり優れた事業マネージャーでもあるトム・マーフィーは昔、私に買収について貴重なアドバイスをしてくれました。「良いマネージャーという評価を得るには、必ず良いビジネスを買うこと」。

 長年にわたり当社は数多くの会社を買ってきましたが、私は全ての会社について当初は「良いビジネス」と考えたものでした。しかし、がっかりする結果となったもの(明白な惨事となったものも幾つか)もありました。一方、悪くない数の投資は私の期待以上のものになりました。

 私の一様でない実績を振り返り精査すると、買収は結婚に似ているとの結論に達しています。買収は勿論、とても楽しい結婚式に始まりますが、結婚前の期待と現実が乖離していきます。時によっては、すばらしいことに双方の期待を超える幸福が生まれます。ある時は幻滅が早く訪れます。これらの事象を企業買収に当てはめると、不快な驚きに出くわすのは大抵買手であると私は思います。企業間の求愛において、夢見がちになるのは容易であります。

 この類推に基づけば、当社の結婚実績の大部分は容認できるものであり、関係者全員は遠い昔に行った意思決定に満足しています。いくつかのタイアップは良い意味で牧歌的でした。しかしプロポーズ時に何を私は考えていたのか、とすぐに疑問に感じるものも無視できない数ありました。

 幸いながら、私の間違いによる悪影響はがっかりするビジネスの特徴により軽減されてきました。「悪い」ビジネスは時の経過と共に停滞する傾向があり、当該事業は当社からさらに小さい比率の資本しか必要とならない状態に入ります。その間、「良い」ビジネスは成長し、魅力的な利益率で追加資本を投資する機会を見つける傾向があります。これら対照的な軌道により、勝ち組会社の合計資本が当社合計資本に占める比率は徐々に上昇していきます。

 上記財務的事象の極端な例として、当社の創業事業であった繊維事業を見てみたいと思います。1965年初めに会社の支配権を取得した時、この窮地に陥った事業は当社のほぼ全ての資本を必要としていました。従って、利益を出さない繊維事業は一定期間、当社全体リターンの大きな足かせになっていました。しかし、やがてたくさんの「良い」ビジネスを買収したことにより1980年代初頭には、縮小を続けていた繊維事業は当社資本のごく一部のみを使用するだけとなりました。

 今日、貴方のお金の大部分は、当社が支配権を持ち、事業上必要となるネット有形資産に対して高いもしくはすばらしいリターンを生む会社に配分されています。当社保険事業はスーパースターであり続けています。この事業は多くの投資家が知らない、成功を測定するに当たりユニークな尺度を付与する特性があります。この議論は次項にとっておきます。

 以下では、当社の様々な非保険事業を金利・減価償却・税金・非現金報酬・リストラクチャリング費用控除後(これらは、CEOやウォール街が時々投資家へ無視することを勧めますが、実際の費用であります)の利益規模で分類しています。

 当社非保険グループの二大事業であるBNSF鉄道及びバークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)は、2019年に合計83億ドル(当社保有のBHE持分は91%のみ)の利益を稼ぎ、2018年から6%増加しました。

 次に利益規模で大きい5つの非保険事業子会社(アルファベット順)である、クレイトン・ホームズ、インターナショナル・メタルワーキング、ルブリゾール、マーモン、プレシジョン・キャストパーツは2019年に合計48億ドルの利益を稼ぎ、2018年と大きく変わりませんでした。

 同様に列挙した次の5社(バークシャー・ハサウェイ・オートモーティブ、ジョンズ・マンビル、ネットジェッツ、ショウ、TTI)は、2019年に19億ドル稼ぎ、2018年の17億ドルから増加しました。

 当社保有の残りの非保険事業(数多くあります)は2019年に合計27億ドルの利益を稼ぎ、2018年の28億ドルからは減少しました。

 当社が支配権を持つ非保険事業の2019年の合計当期純利益は177億ドルとなり、2018年の172億ドルから3%増加しました。これらの結果に、買収・売却はネットではほとんど影響がありませんでした。

 最後に、当社の広範な事業活動を象徴する事象をご説明しなければいけません。2011年から当社はルブリゾールというオハイオ州を拠点とした、オイル添加剤を製造し世界中に販売するメーカーを保有しています。2019年9月26日に隣接する建物からの火災が、ルブリゾール保有のフランスの大きな工場に延焼しました。

 火災は、ルブリゾールの建物に大きな損害と事業活動に著しい混乱をもたらす結果となりました。そうは言っても、会社建物の損害と事業中断により生じた損失の両方は、ルブリゾールが受け取る大きな保険金によって軽減されることになります。

 故ポール・ハーヴィーが天性の才能で、彼の人気ラジオ番組で「これが話の続きだ」と言ったように、ルブリゾールが契約していた主要保険会社の一社は・・・そう、バークシャーが保有する保険会社だったのです。

 マタイによる福音書6:3では「あなたは、施しをするとき、右の手のしていることを左の手に知られないようにしなさい」と求めています。貴方の会長は、明白に指示された通りの行動をしました。

 次回は、バークシャーの中核であり、成長し続ける損害保険事業と、風力発電への巨額投資で大きく成長したバークシャー・ハサウェイ・エネルギーについてお伝えします。

株主への手紙2019(3)保険会社のビジネスモデル、電力事業の強み>>

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