毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄:カプコン(9697)東映アニメーション(4816)

1.「巣ごもり」関連銘柄

 先週の楽天証券投資WEEKLYで巣ごもり消費関連銘柄として任天堂を取り上げました。今回はその続きとして、幅広い分野から巣ごもり関連を探そうと思います。注目銘柄としては、カプコンと東映アニメーションを取り上げます。

 表1が巣ごもり関連銘柄のリストです。

 世界中で在宅勤務をする人が急増しているため、パソコン需要も増加していると思われます。通信ネットワークやデータセンター需要も同様です。そのため、この動きはパソコンの製造販売業者だけでなく、パソコン関連、データセンター関連の半導体、電子部品メーカーにも恩恵があると思われます。

 また、ビデオ会議システムが日本でも一気に普及してきました。

 オンラインでの買い物関連は、楽天、アマゾン・ドット・コム、Zホールディングス(ヤフー)などですが、パソコンやゲーム機、ゲームソフトのネット販売なら、カカクコム、ビックカメラなど専門性の高いサイトも重要です。

 エンタテインメントで重要なのは、動画配信とゲームです。動画配信サイトは数が多いですが、外資系ではネットフリックス、アマゾン・ドット・コム、Hulu、日系ではWOWOW、スカパーJSATホールディングス、ひかりTV(NTTドコモが運営)、dTV(NTTドコモとエイベックスが共同運営)などがあります。また、AbemaTV(サイバーエージェント)、ニコニコ動画(KADOKAWA)、YouTube(アルファベット(グーグルの親会社)の子会社)の存在感にも大きなものがあります。

 ゲームでは、万人向け、特に子供と女性向けゲームが得意な任天堂に引き続き注目したいと思います。世界中で大ヒットしている「あつまれ どうぶつの森」ではオンライン機能が人気です。カプコンの「モンスターハンター:ワールド」もオンライン機能が充実していることが人気の大きな要因になっています。自粛中は友人知人に会うこともままならないので、ゲームの中で一緒にプレイして会話することが息抜きとして重要になっているのです。

 また、大人向け、子供・学生向けの両方で、オンライン学習(Eラーニング)の市場が拡大すると思われます。

 在宅勤務は日本で定着する可能性があります。そうなれば、在宅勤務のための投資も、企業、個人の両方で継続する可能性があります。

表1「巣ごもり」関連銘柄

出所:楽天証券作成
注:下線は外国上場企業

2.10万円をどうする?

 国民1人当たり現金10万円の一律給付が実現しそうになってきました。

 皆さんは10万円もらったらどうしますか?

 以下の事例は、ありきたりな例ですが、私が考えたものです。ただし、映画、舞台観劇、音楽ライブ、旅行などは、現時点で劇場や会場が閉鎖されていたり、感染を避けるために行かないほうがよいと思われるものもあるため、除いています。また、製品やサービスによっては10万円に5万円以上自分で付け足す場合も考えています。

生活費の補填:在宅勤務では残業代がでない場合が多いと思われます。リストラ、倒産による失業も増え始めています。そのため、10万円を生活費の足しにする人は多いと思われます。

パソコン:在宅勤務には必ずパソコンが必要になります。会社から貸与される場合は別ですが、自分のパソコンを使う場合は、会社のシステムに接続することを考えると、CPUはインテルのCore i7、メインメモリ8Gバイト以上、1テラバイトのHDDまたは500Gバイト以上のSSDがあれば、通常の業務には十分だと思われます。このスペックであれば、8万円前後から購入できます(価格は価格.comによる。以下同様)。CPUは普通の業務であれば普及タイプのCore i5でもいいと思われますが、メモリ8Gバイト以上でSSD搭載であればより高速化でき便利になります(これで価格は7万円前後からです)。

 ただし、クリエイティブ系(設計、開発、デザイン、音楽、画像編集など)の仕事の場合は、20万円台半ばから上の価格帯のMacPCかCore i9搭載パソコンも検討対象に入ってくると思われます。10万円を購入代金の一部に充てるという考え方です。

5Gスマートフォン:3月下旬からNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの各社が5Gサービスをスタートしました。まだサービスエリアは狭いですが、この2年間で全国主要都市にエリアが拡大すると思われます。5Gスマホは10万円前後で買えるものがあるため、新しいものが好きな人は検討してみるのもいいかもしれません。

 また、パソコンに接続できる5G対応Wi-Fiルーターがあると、仕事をする際に大変便利になると思われます。これをNTTドコモが5月下旬に発売する予定です(価格は未定)。今のインターネット回線は通常数百Mbpsのスピードが出るはずですが、マンションの場合は在宅勤務の人が多くなったため、回線スピードが低下することがあるようです。家庭用として最速のインターネット回線はソニー傘下のISP、ソニーネットワークコミュニケーションズが提供しているNUROで、最大2Gbps(実際には最大で1Gbps以上)がでます。5Gが普及すれば、廉価版の5G対応WiFiルーターでも実測で有線を上回る1~2Gbps以上の回線スピードが出ると思われるため、仕事には大変便利になると思われます。前述のNTTドコモの5G対応WiFIルーターはパソコン接続時に1Gbps以上の速度が出る模様です。

ゲーム機、ゲームソフト:家庭用ゲーム機ではニンテンドースイッチが人気ですが、品薄で入手するのに時間がかかりそうです。プレイステーション4ならすぐに入手できますが、その場合は、上位機種のPS4Proの映像が大変きれいです。また、予定通りならば、今年年末にPS5が発売されるため、それを待つのも一つの考え方です。

 パソコンオンラインゲームに関心がある向きは、15~20万円以上しますが、ゲーミングPCも候補になると思われます。

4Kテレビ:4Kの大型テレビも安くなってきたため、安いもので10万円以内、高いものでも20万円以内で買えるようになっています。

オンライン学習:在宅勤務では通勤がないため、往復の通勤時間が空くことになります。そこで、空いた時間で勉強したいという人が多くなる可能性があります。また、家にいる子供のために子供向けのオンライン学習を契約する人も多いと思われます。大手予備校、学習塾が一部のオンライン教材を無料で提供しています。

 今回の給付金の趣旨は、国民の生活支援にある一方で、経済効果を期待したものであると思われます。公共投資の乗数効果はおおむね1ですが(1,000億円の公共投資は1,000億円の経済効果を生み出す)、各種モノ、サービスの消費に総額約12兆円使えば、1以上の経済効果が出ると思われます。様々な批判があるようですが、今のような非常事態の下でベストの政策はありません。有意義に使うことが我々の生活と経済にとって重要になると思われます。

3.「巣ごもり」関連の注目銘柄

カプコン

1.「モンスターハンター:ワールド」2020年1月初頭に累計1,500万本達成

 カプコンの2020年3月期会社予想は、売上高800億円(前年比20.0%減)、営業利益220億円(同21.3%増)ですが(2020年3月期3Q決算時の会社予想)、楽天証券では売上高800億円(前年比20.0%減)、営業利益226億円(同24.6%増)と予想します。

 2020年3月期3Qまでは、「モンスターハンター:ワールド」(2018年1月発売、PS4、Xbox One、PC)が2020年1月2日までに累計1,500万本を達成し、拡張コンテンツの「モンスターハンターワールド:アイスボーン」も2020年1月28日までに450万本(2020年1月発売のPC版を含む)を出荷しました。その結果、2020年3月期1-3Q累計業績では、13.6%減収、37.1%営業増益と順調な業績となりました(減収になったのは、「アイスボーン」の価格が安いため)。2020年3月期3Qでは、2019年3月期3Qに目立ったソフトがないこともあって、12.9%減収、50.9%営業増益と好業績を達成しました。

 また、会社側は2020年3月期3Q決算時に2020年3月期会社予想を、従来の売上高850億円、営業利益200億円から売上高800億円、営業利益220億円に上方修正しました。売上高の下方修正は「アイスボーン」の出荷が順調ではありますが会社計画よりも遅れていることを反映したものであり、営業利益の上乗せはパチスロ機の出荷増加が見込まれるためです。

 これに対して、楽天証券では、2020年3月期を売上高800億円(同20.0%減)、営業利益226億円(同24.6%増)と予想します。ゲームソフト(デジタルコンテンツ)では、「モンハン:ワールド」が堅調に売れていると思われるほか、(もともとの会社想定よりは遅いとはいえ)「アイスボーン」がパソコン版中心に伸びている模様です。また、世界的な「巣ごもり」の影響で、採算の良い過去作品のダウンロード販売が順調に売れていると思われます。

 一方で、アミューズメント施設は自粛の影響で業績が悪化している可能性がありますが、ゲームソフトのプラスの影響が2020年3月期については大きいと予想します。
 ちなみに、日本の家庭用ゲーム会社の中で特定のタイトルの販売本数が1500万本を超えた記録を持っているのは、任天堂、ソニー、セガ、カプコンの4社だけ、最近では任天堂とカプコンだけです。その意味でカプコンは日本の最優秀ゲームソフト会社の1社と言えます。

表2 カプコンの業績

株価 3,535円(2020/4/16)
発行済み株数 106,751千株
時価総額 377,365百万円(2020/4/16)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

表3 カプコン:セグメント別損益

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

表4 デジタルコンテンツ売上高内訳

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成

2.2021年3月期は業績堅調が予想される

 2021年3月期は、デジタルコンテンツは過去作品のダウンロード販売が引き続き伸びると予想されます。新作では「バイオハザード3」のリメイク版「バイオハザードRE:3」(2020年4月3日発売)が200万本を出荷しており、順調です。2019年1月発売の「バイオハザードRE:2」も650万本売れるなど、過去の優良作品のリメイク版が成功しているため、今後も1年に1回程度の頻度でリメイク版を発売する可能性があります。

 一方で、新型コロナウイルスの影響でアミューズメント施設は店舗の休業や営業時間の短縮が多くなっており、2021年3月期1-2Qは大幅な減収減益が予想されます。同様にアミューズメント機器(パチスロ機)も自粛の影響が予想されます。そのため、楽天証券では2021年3月期を売上高830億円(前年比3.8%増)、営業利益240億円(同6.2%増)と予想します。好調だった2020年3月期の反動もあると思われます。

3.2021年3月期4Q~2022年3月期2Qに「バイオハザード8」発売か

「モンスターハンター」シリーズと「バイオハザード」シリーズはカプコンの両輪です。「モンスターハンター」シリーズは「モンスターハンター:ワールド」が2018年1月に発売され、大型拡張コンテンツ「アイスボーン」(2019年9月発売)が売れているため、新作はまだ先になると思われます。

 一方で、「バイオハザード」シリーズは、「バイオハザード7 レジデント イービル」が2017年1月に発売されて3年が過ぎました。「6」(2012年10月)と「7」(2017年1月)の間が4年3カ月、「5」(2009年3月)と「6」の間が3年7カ月空いているため、2021年3月期4Qから2022年3月期2Qにかけて、次回作「8」が発売される可能性が高くなると思われます。「7」の累計販売本数は700万本なので「8」も700万本以上が目標になると思われます。

 楽天証券では、2022年3月期1-2Qに「バイオハザード8」が発売されると予想します。販売本数は2022年3月期700万本と予想します。また、2022年3月期になれば新型コロナウイルス感染症のアミューズメント施設やアミューズメント機器に対する悪影響は相当和らぐと予想しました。

 この予想に基づいて、2022年3月期の業績を売上高930億円(前年比12.0%増)、営業利益290億円(同20.8%増)と予想します。

 今後6~12カ月間の目標株価を3,400円から4,400円に引き上げます。2022年3月期の楽天証券予想EPS 190.2円に想定PER20~25倍を当てはめました。中長期の投資妙味を感じます。

東映アニメーション

1.2020年3月期業績は会社予想に対して若干上乗せか

 東映アニメーションの2020年3月期業績は、会社予想は売上高550億円(前年比1.3%減)、営業利益150億円(同4.7%減)ですが、それを若干上回った可能性があります。楽天証券では売上高560億円(同0.5%増)、営業利益155億円(同1.5%減)と予想します。

 2020年3月期4Q(2020年1-3月期)に、海外向け映像配信(表7の映像制作・販売事業の中の「海外映像」)と国内向け映像配信(同じく表7の「その他」)が、「巣ごもり消費」の恩恵で増加した可能性があります。国内外ともに新規の配信契約が増えた可能性もあります。ただし、版権事業(「ドラゴンボールZ  ドッカンバトル」などのゲーム化版権)がスマホゲームの課金減少によって減少トレンドに入っており、これが業績上のマイナス要因になっています。映像制作・販売事業の「劇場アニメ」も、首都圏などでの映画館の営業自粛によって、2020年3月期4Qは減収になった可能性があります。

表5 東映アニメーションの業績

株価 5,060円(2020/4/16)
発行済み株数 40,894千株
時価総額 206,924百万円(2020/4/16)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

表6 東映アニメーションのセグメント別業績

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成。

表7 東映アニメーション:セグメント別売上高細目

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成。

グラフ1 東映アニメーションの版権事業

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

2.「巣ごもり」消費の恩恵で2021年3月期業績は増収増益か

 動画配信は「巣ごもり」エンタテインメントの中でゲームと並ぶ重要分野です。新型コロナウイルス禍の中で在宅勤務や自宅待機が世界的に急増していますが、同時に家で見ることが出来る映画、ドラマ、アニメなどの動画配信の需要も大きく伸びていると思われます。

 この中で大手動画配信業者(ネットフリックス、Hulu、アマゾン・ドット・コムなど)中心に、配信する番組数を増やしていると言われています。そのため、日本のアニメ業界最大手の東映アニメーションが製作したアニメの過去作、新作ともに、契約先動画サイトの配信増加と新規契約の増加の両方が2021年3月期に期待できると思われます。

 また、版権事業は「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」などの優良コンテンツ中心に(一時的かもしれませんが)課金売上高が2021年3月期に盛り返す可能性があります。

 ただし、劇場アニメは2021年3月期1Q~2Qは自粛の影響を受ける可能性があります。テレビアニメは東映アニメでは表面化していないようですが、中国での製作体制が新型コロナウイルス禍の影響を受けているため、新作アニメのテレビ放映が延期になるケースが出ており、東映アニメでもこの問題が起こる可能性があります。商品販売事業(グッズ販売など)も、勢いが落ちる可能性があります。

 これらを総合的に評価して、楽天証券では2021年3月期業績を売上高608億円(前年比8.6%増)、営業利益184億円(同18.7%増)と予想します。

3.今後6~12カ月間の目標株価を6,400円とする

 今後6~12カ月間の目標株価を6,400円とします。2021年3月期の楽天証券予想EPS 317.9円に想定PER20倍を当てはめました。投資妙味を感じます。

 なお、グラフ2、3は日本のアニメ業界のこれまでの動きを見たものです。2018年は国内市場の減少が止まった反面、海外市場の伸びが鈍化しました。表8を見ると、国内向けの商品化権販売(ただし、この中にはスマホゲーム向け版権が含まれていない。スマホゲーム向け版権市場は推定約4,000億円)が減少トレンドに入って、海外向け(配信と商品化権、ゲーム化版権など)の伸びが鈍化している様子がわかります。2019年も同様の傾向と思われますが、2020年に「巣ごもり」消費によって国内向け、海外向けに転機が到来するかどうかが今後の注目点です。

グラフ2 日本のアニメ市場:ユーザーが支払った金額を推定した広義の市場

単位:億円、暦年
出所:日本動画協会より楽天証券作成

グラフ3 日本のアニメ市場(広義)の国内、海外内訳

単位:億円
出所:日本動画協会より楽天証券作成

表8 日本のアニメ市場(広義)の内訳

単位:億円、暦年    
出所:日本動画協会より楽天証券作成

本レポートに掲載した銘柄:カプコン(9697)東映アニメーション(4816)