ひな:しんた君、面白いもの見つけちゃった。
しんた:なになに?
ひな:先生が「買いは急いでない人が多くて、売りは急いでる人が多い」って言ってたよね。

しんた:うん。
ひな:他にもないか「相場の格言」を検索してみたんだ。

しんた:どんなのがあったの? 
ひな:気になったのは「買い上手より売り上手」と「仕掛けはたやすく、手仕舞いは難し」。この2つは言ってることは似ていて、つまり「売り」が「買い」より難しいんだってことみたい。

しんた:へぇ。どうしてなんだろう?

売りが買いより難しい理由

投資家のキモチ ケース1

先生:「売りが買いより難しい理由」ね。まずは、投資家の気持ちになってみてもらおうかな。
しんた:どうすれば良いですか?

先生:投資家だから、投資する資金を持っている。まずは二人が自分の貯金から投資する場合を考えてみよう! お小遣いから1万円を投資する商品を選んで。

しんた:とりあえず「日経平均株価連動で手数料がない(ノーロード)ファンド」にします。
ひな:わたしも!

先生:じゃあ次。「いつ」買いますか。明日? 1カ月後?
ひな:利益を出したいから……できれば安い値段で買いたいな。

しんた:うん、ある程度「下がった」ところで買いたいよね。
ひな:そして、ある程度「上がった」ところで売って、差額を利益としてもらう。

先生:つまりね、「買い」が先で、「売り」が後。後から「売る」ってことは、「買う」時には必要のない判断がいるんだけど、分かる?

しんた:そっか!「利益」か「損」かを決めないといけない!

先生:その通り。「買う」時は、安いと思ったところで買えばいいんだけど、「売る」時は、今の利益で確定していいのか、今の損失で確定していいのか、判断しないと売れないよね。

ひな:「今の利益よりも、もっと上がるかも」、「今は損だけど、いつか上がるかも」って思いそう。確かに「売る」のって、大変だ。

投資家のキモチ ケース2

先生:次は、二人に100万円持っている気分になってもらおうかな。
ひな:ひゃ、ひゃくまんえん!
先生:今日から1カ月後までに、100万円全部を投資してくれる? ただし1カ月の間なら、いつ買ってもいいの。

しんた:1カ月で100万円…。今日買っても、明日上がるかもしれないし。
ひな:下がるかもしれないね。
しんた:ちょっと下がったところで買っても…。

ひな:やっぱりその後、上がるかもしれないし、下がるかもしれない。
しんた:どこで買えばいいか、迷うよ~どうしよう。

ひな:決めた! わたしは1カ月の最初と真ん中に半分ずつ、買います!

しんた:そっか、分散投資(参考:長期投資の買い時。一発勝負VS時間分散)! じゃあ、ぼくは25万円ずつ、4回に分けて毎週買おう。
先生:そうそう。それが普通。1日5万円ずつ、20回でもいいからね。

ひな:なるほど。ちょっと難しいけど、いったん決めてしまえばやりやすいかも。

先生:じゃ、次ね。100万円の投資が終わって、しばらく経過しました。いつになったら売りますか?

しんた:もちろん、利益が出たら!…って、そっか。「どれくらい」利益が出たら売るのか、決めておかなきゃ。
ひな:「決め」が大事だよね。う~ん。どうしよう。

先生:2018年の日経平均株価では、3月に買ってたら、どれくらい利益を確定できそうだったっけ?
しんた:えっと…確か、5%か10%くらいは利益が確定できそう!って言ってた気がします。

ひな:じゃあ、わたし、5%利益が出たら売ることにします。よく分からないから。
しんた:ぼくは8%! 5%と10%の間、ってことで。

先生:じゃ、しんた君、まずはシミュレーション第1回。投資してからしばらくして、今日は8.1%の利益が出る水準になりました。今日は売りますか?

しんた:売ります! 

先生:では、シミュレーション第2回。今日は7.9%の利益が出る水準でした。今日は売りますか?

しんた:売りません!

先生:では、シミュレーション第3回。昨日は7.9%の利益が出る水準だったので売りませんでしたが、今日は5%の利益が出る水準まで下がりました。今日は売りますか?

しんた:うーん…。それは…。

ひな:あれ? さっきまでの勢いがなくなってきたよ?

しんた:下がった理由にもよります。ずっと下がりそうだったら、5%でいいから利益確定したいし、特に材料がなければ8%まで持っていたいし…。

先生:では、シミュレーション第4回。100万円の投資が終わった翌日から下げて、今日は3%の損失が出る水準でした。今日は売りますか?

しんた:むむむ。マイナスなんかじゃ、売りません!

先生:では、シミュレーション第5回。そのまま持っていたら、1週間後に5%の損失が出る水準になりました。今日は売りますか?

しんた:うーん…。それは…。

ひな:しんた君、大丈夫?

しんた:先生、やっぱ、売りって難しいですね。「売ったほうがいいかも」って思っても、決断するは大変です…。

ひな:確かに。特に、損失が出ているときに売りの判断するのって、勇気がいる。

先生:二人とも、売りが難しいわけが少しは分かってくれた?
二人:分かりました!

投資家のキモチ ケース3

先生:今度は、二人とも、大きな機関投資家の気持ちになってみて。運用資産1,000億円、もちろん、自分のお金じゃないし、上司とかにOKがもらえないと、運用できないシステムね。

しんた:ほ、本格的ですね。

ひな:ドキドキします!

先生:二人とも、今日は4月1日とするよ。4月から始まって9月に終わる期間で、その1,000億円を使って、5%の利益を出しなさい、っていう指示が出ました。

ひな:しんた君、1,000億円の5%って、いくら?
しんた:50億円。
ひな:ご、ごじゅうおく…。

先生:投資する資産は、さっきと同じ日経平均株価に連動するファンドにしようかな。そして、4月中に買わなきゃいけないとしようか。しんた君、まずはどうする?

しんた:さっきと同じ、いくつかに分割して買います。100億円ずつ10日間で、とか。
先生:そうね。それなら、上司も納得してくれそう。

ひな:下がったら一気に1,000億円買います! というのは?

しんた:それって、上司が納得しないよ。次の日に下がっちゃったら、「何で全部買っちゃったんだ!」って怒られそう。

ひな:なるほど。

しんた:その点、分散しておけば、「平均的に買えました」って言えそう。

先生:しんた君、明日から会社員できそう。じゃ、次ね。4月中に投資が終わり、9月1日になりました。まだ一度も5%の利益が出る水準にはなっていませんが、3%程度なら利益が出る水準です。

しんた:実践的ですね。実際にありそう!!

ひな:とってもドキドキする!!

先生:上司から指示がありました。9月中に売り切って、今期3%の利益を出しなさい、って。しんた君、どうする?

しんた:もちろん、早速売り始めます。
ひな:待っている間に下がり始めちゃったら、もうパニック!!

先生:ただし、1,000億円もあるから、一気に売って相場が崩れないようにしないといけないよ。

ひな:分散して売ればいいんじゃない? 買ったときみたいに。
先生:ひなちゃん、それだと、どんどん下がっちゃったら、3%の利益が出なくなるリスクが出てくる。

しんた:ってことは、「一気に相場が崩れない程度になるべく早く売る」ってことか。
先生:そうそう。それなら、上司も納得いくでしょ?

ひな:なるほどですね。
しんた:奥が深いなぁ。

先生:では、ここで、クイーズ!
しんた:!!先生、クイズですか?
ひな:まって、しんた君、そういえば、もともとわたしたち、クイズ研究部じゃなかったっけ?

しんた:あ、そうだった。
先生:今の最後の設定、しんた君が「実践的ですね!実際にありそう!!」って、言ってたけど、よーーーーく見直して、何か気づくことがないかな?

しんた:えー!

ひな:難しくないですか?
しんた:…。そもそも今日の議題は「売りが買いより難しい理由」だったはずだよね。

ひな:あ! しんた君、最初に二人で話していたときに、「買い上手より売り上手」「仕掛けはたやすく、手仕舞いは難し」って、言ってたよね?

しんた:そっか。さっきの「買いは平均的に買う」、「売りは一気に相場が崩れない程度になるべく早く売る」ってことは、それを表現しているんだ!
「買い」は「時間をかけて買う」、「売り」は「時間をかけずに売る」。だから、「買い」のチャンスは長くあるけど、「売り」のチャンスは少なくなりがちなんだ。

ひな:それを、多くの機関投資家がやったら、大変なことになる!

先生:でしょ。わたしが勝手に仮定した問題だから、実際のところは分からないけど。
しんた:しかし、うちの父さんより説得力があります!

先生:しんた君、もうひとつ、気がついてほしいことがあるんだけど。
ひな:ええっ! まだあるんですか?

しんた:分かった! 格言の「セルインメイ」では、4月と5月が高値だったけど、4月に決算期がスタートするから、「4月に買い」が出る。だから、株価は上がりやすい。そして、半期決算の出る9月に利益を確定するから株価は下がりやすい…。

 だから、個人投資家としては、その動きを利用して、4月と5月に高値圏になったら売っておく。9月になったら、買い戻す。
 だって、「売り」は「一気に相場が崩れない程度になるべく早く売る」んだから、無理に9月末まで待つ必要もない。これこそ、「セルインメイ」!

ひな:す、すごい!

先生:あと付け加えると「節分天井彼岸底(せつぶんてんじょう・ひがんぞこ)」。9月末を過ぎると今度は、「10月にスタートして、3月に終わる」期だから、もちろん、3月に売りが出る可能性が高くなる。

 あとは、「4月にスタートして、3月に終わる」のが「ほとんどの日本企業の決算年度」だから、「4月に買って、3月に売る」だけの投資家もいる可能性があるよね。ってことは、3月の売りが多い分だけ、「彼岸底」になりやすい。

ひな:すす、すごい!!

先生:一方で忘れそうだったけど、外国人は、「1月にスタートして、12月に終わる」のが「ほとんどの欧米企業の決算年度」だから、「1月に買って秋口の9月から11月に売ることが多い」。「節分天井」は、海外投資家の買いが一巡するのが2月の上旬になりやすい、っていうのと一致するのね。

ひな:すすす、すごい!!!

先生:相場は、どうなるかはだれも分からないけど、投資額が多い外国人投資家や機関投資家の動きを見ることは大事だと思う。

最後に

先生:…ということで、「売りが買いより難しい理由」は、こんなところでいいかしら?
二人:はい!ありがとうございました!!