2月1日、沖縄県久米島野球場に東北楽天ゴールデンイーグルスの一軍のメンバーが集結しました。球団創立以来、久米島キャンプは16年目。人懐っこく、温かい久米島の人々に見守られながら、三木肇新監督のもと、南国の地で野球漬けの日々が始まりました。
今季は血の入れ替えを敢行したイーグルス。もともと打てる打線な上に、昨年は森原康平、ブセニッツ、宋家豪、青山浩二らセットアッパーが活躍しました。自慢の先発投手陣に故障がなければ、自然と勝ち星が積み上げられるチームです。
そこにロッテから涌井秀章とセットアッパーの酒居和史、パドレスから日本球界復帰を果たした牧田和久、さらにドジャースからは守護神候補のシャギワと、4人の投手が加入。また内野ならばどこでも守れる鈴木大地がロッテからFA移籍し、ストーブリーグを大いに沸かせました。
注目の選手が多い中、今回は二軍監督から昇格した三木新監督、新天地加入で各方面から熱視線を浴びる鈴木大地、そしてエース・岸孝之に話を聞きました。
課題は機動力。イーグルスは試合を通じて成長する若いチーム
昨年の楽天イーグルスは3位とAクラス入りを果たしましたが、実は走力に問題がありました。チーム盗塁数は日本ハムと並ぶ48で、リーグ最下位。リーグ優勝した西武の盗塁数は134ですから、いかに大きく水をあけられていたかが分かります。また併殺打も114で、リーグ最多。西武は88、2位のソフトバンクは85で、上位2チームより約30もダブルプレーが多かったのです。
そこで三木監督は、秋季キャンプで走塁練習に力を入れました。チーム課題である機動力の向上に着手。「2月からの春季キャンプでは、これまでやってきたことの継続と新たなチャレンジを行っています」との監督のコメント通り、久米島でも「特走」と題した走塁教室を開講しました。
三木監督に一軍監督に昇格した印象を尋ねると、「一軍監督は初めてですが、二軍の時と特に気持ちの面では変わりません」と柔和に答えます。
「そして一軍はより結果が求められるので、常に勝ちにこだわってやっていきたいですね」とも語りました。
また新戦力も加入して、タレントが豊富な中、昨年二軍でともに戦ってきた若手に釘を刺すことを忘れません。「今シーズンは新しい選手も加わりました。昨年一緒にやってきた若いメンバーたちがチーム内の競争をより激しくしてくれれば、チームとしてレベルアップができます。若い選手たちには、もっとガツガツやってほしいですね」。
優勝するためにイーグルスに来た鈴木大地
鈴木は「優勝するために楽天イーグルスに来たので、バッティングでも守備でも貢献したいですし、誰よりも声を出してチームを盛り上げていきたいです」と語ります。元気だけは誰にも負けないつもりだそう。
慣れ親しんだ千葉ロッテマリーンズを離れ、不安はなかったかと問うと、「多少不安はありました」と正直な答えが返ってきました。「でもいろいろな方とコミュニケーションが取れていますし、チームにはもう慣れました(笑)」とも。同級生の選手には、キャッチャーの岡島豪郎、投手の由規、外野手の島内宏明がいます。
「もともと知っている選手もいたので、とても溶け込みやすかったです。実際にチームの中に入ると、選手同士仲もいいですし。中堅、ベテランがよく声を出すチームだなと思いました」。
ここまでいい形でキャンプを送れているという鈴木大地。「数字的な目標はありませんが、一日一日を全力で立ち向かっていきたいです。
シーズン中はいろいろと苦しいこともあると思いますが、チームのメンバーと壁を越えていきたい。
マリーンズ時代からイーグルスを外から見てもいいチームだと思っていました。そんな楽天イーグルスのみんなと優勝がしたいです」と、最後に力強いコメントを残してくれました。
1年間ケガなく投げて、チームが優勝する力になりたい。エース・岸孝之
昨年の楽天イーグルスは先発が大誤算でした。「先発の両輪で30勝できたら」とファンの期待が高まる中、エースの岸孝之が3勝、則本昂大が5勝にとどまりました。「昨年は悔しい思いをした」と語る岸孝之は、7月に扁桃炎で一軍離脱をした経験から、オフに扁桃腺を切る手術をしました。
今年のシーズンはいつもより1週間早い3月20日(金・祝)開幕※。通常より急ピッチでキャンプが進んでいますが、35歳の岸はいたってマイペースです。
※3月11日時点で開幕は4月中に延期
準備を急がない理由を教えてくれました。「これまではオープン戦の実践に合わせて調整をしてきたのですが、今年はシーズン開幕の時期に100%の状態で入れるために調整をしているからです」。2月23日の巨人とのオープン戦は2回を投げ、亀井善行に初球、先頭打者ホームランを浴びたものの、失ったのはその1点のみでした。さらに岸はこう付け加えます。「今年はまず1年間けがなく投げ続けて、チームが優勝するための力になりたいです。優勝して、東北のファンの皆さんと一緒に喜びたいです」。
チームの競争は苛烈。でも大事なのは困った時に伸びてくる若手の存在
今年のイーグルスは、先発ローテーションを誰もが簡単に名前を挙げられてしまうほど、層の厚さが特徴です。かつて西武の投手王国を支えた岸、涌井、牧田に加え、キャンプ中にナックルカーブを習得した則本昂大、さらにクローザーから先発転向する松井裕樹に、昨年岸・則本のWエースが抜けた穴を埋めるべく9勝した辛島航などがいます。
セットアッパー、クローザー候補も12球団屈指の安定感です。「今シーズンはクローザーに挑戦したい」と守護神に名乗りを挙げている森原康平は昨年64登板で4勝29ホールド。ブセニッツは昨年54登板で4勝28ホールド、青山浩二は昨年62登板で2勝16ホールドでした。さらに石井一久GMが、メジャーでの古巣であるドジャースからシャギワを獲得。ストレートとスライダーがさえる右腕と評判で、守護神候補とも言われています。
一方、浅村栄斗を中心とした打撃陣を見ていくと、昨年は浅村と銀次とブラッシュがチーム内打撃リーダーの各部門を見事に分け合う状況でした。
そこに内野ユーティリティの鈴木大地が加入し、打撃好調の茂木栄五郎がいて、さらに走攻守全てそろうドラフト1位の小深田大翔が虎視眈々とショート、セカンドの位置を狙っています。
外野も、島内宏明、辰己涼介、田中和基、ブラッシュがいつでも入れ替え可能な状況に。複数ポジションを守れる選手が多く、内外野ともに競争が熾烈を極めています。まず出塁できることが必須条件です。
ここに2月19日のヤクルトとの練習試合で活躍した山﨑剛らレギュラーを狙う若手が、途中出場でも監督の掲げる機動力野球のピースとして上手くハマれば、さらにチーム力はアップします。
皆がけがなく一年間プレーできれば優勝は堅いですが、そうもいかないのが勝負の世界。誰かが離脱した時に、スッとそのポジションに入れる若手の底上げが必要なのです。山﨑は「自分のアピールポイントは足なので、機動力、小技をしっかりやっていきたいです」とコメント。自らの役割をしっかりと認識しています。
昨年はイースタン・リーグ優勝に導き、若手の指導に長けた三木監督。「イーグルスの良さはチームワーク。まだまだ成長できるチームです」と語ります。大幅な血の入れ替えを行い、一新したイーグルスのタクトをどのように振っていくのでしょうか。選手のことをまず第一に考える監督は、「試合を重ねながら、私も選手も一緒に成長し、最終的にはリーグ優勝という目標を達成できるよう、チーム一丸となって戦っていきたいです」と語りました。
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執筆者:横山 由希路
フリーランスライター・編集者
ぴあ株式会社での情報誌編集・執筆業を経て、フリーランスとして独立。スポーツ、演劇などのエンターテインメント、ビジネス分野のほか、「週刊『SPA!』」「YEN SPA!」などでやわらかマネー記事も執筆する。「東洋経済オンライン」などで介護記事も。広瀬宏之「『ウチの子、発達障害かも?』と思ったら最初に読む本」(永岡書店)で一冊構成。
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