上場会社から受け取る配当金は確定申告する、しないの有利な方を選択できます。過去分の確定申告忘れに気づいた場合、対応はできるのでしょうか。

配当金の税金についてもう一度おさらい

 前回のコラム(税金払いすぎ?配当金の確定申告、得するケースと損益通算の考え方)にて、上場企業から受け取る配当金の税金についてお伝えしました。まず、3つの選択肢を再度確認します。

(1)確定申告しない(何もしなくてもすでに源泉徴収されている)
(2)総合課税で確定申告する
(3)申告分離課税で確定申告する

 基本は(1)で問題はありませんが、配当金以外の所得が少ない方などは(2)の選択肢を、株式の売却損や繰越損失がある方は(3)の選択肢を選ぶことで、源泉徴収された税金が戻ってくることになります。自分でどの方法が最も有利かを計算し、選択することが必要となります。

配当金の確定申告を忘れた!期限後でも間に合う?

 今回の本題はここからです。上記(1)~(3)のうち、確定申告の期日が過ぎてしまった後に(2)や(3)を選んだ方が有利だったと気づいた場合、後日に確定申告をして有利な選択肢を選ぶことはできるか?

 例えば2019年分の確定申告書を作る際、2018年分の確定申告で配当金を申告した方が有利だった、という場合です。

 2018年分の確定申告の期日は2019年の3月15日。すでに期日をかなり経過しています。期限後の今からでも間に合うのでしょうか?

 もし、2018年分の確定申告書をすでに提出していて、その際、配当金の確定申告をしていなかった場合は、今から確定申告のやり直し(修正申告もしくは更正の請求)をして、配当金分の確定申告をすることはできません。

 なぜなら、2018年分の確定申告書を提出した際に、「配当金については確定申告をしないことを選択した」ものと扱われてしまうからです。一度選択したものを、後から取り消しや他の選択肢に変更することは認められていないのです。

確定申告しない方が良かった?申告分離課税を選択すれば良かった?

 逆にこんなケースもあるかもしれません。2018年分の確定申告で配当金を総合課税で申告したが、よくよく計算してみると確定申告しない(申告不要)という選択肢の方が有利だった、というケースです。

 しかし残念ながら、一度確定申告をした配当金を、後になって「やっぱり申告不要を選択します」とすることはできません。

 また「2018年分の確定申告で配当金を総合課税で申告したが、実際は申告分離課税を選択した方が有利だった」というケースも同様、今から内容を修正することはできないのです。

 確定申告書を提出するときに、配当金について3つの選択肢のうちどれを選ぶかは、私たちが自らの意思で決めています。その選択自体は法的になにも誤ってはいません。
 法的な誤りがなければ、税法では後から申告書を修正することはできないことになっています。

 つまり「税法は納税者に3つの選択肢を与えているのに、わざわざあなたが自分の意思で不利な選択肢を選んだのだから、それを救済する必要はない」というのが税法的な考え方です。厳しいようですが、これが法律です。
 確定申告の後に後悔しないためにも、配当金などを考慮し判断を行ってください。

番外編・総合課税と申告分離課税を併用してしまったらどうなる?

 前回のコラムにて、配当金を確定申告する際、総合課税と申告分離課税の併用はできないとお伝えしました。

 実際、国税庁の確定申告書作成コーナーでも、総合課税と申告分離課税のどちらかを選ぶ形になっていて、「総合課税と申告分離課税の併用はできない」と注意書きがあります。

 でも、手書きでの申告書を作成や、他のシステムで作成した確定申告書を提出する場合、誤って総合課税と申告分離課税を併用してしまう可能性があります。そのような場合はどうなるのでしょうか?

 実は、2018年12月6日の東京地裁の判決にて、「総合課税と申告分離課税を併用した場合は、全て総合課税になる」とされています。

 したがって、申告分離課税の適用で株式の売却損と配当金の損益通算をしようとしていたにもかかわらず、誤って配当金の一部を申告分離課税ではなく総合課税で確定申告すると、逆に税金を余計に支払わなければならなくなる可能性があります。
 特に手書きの場合は十分に注意した方がよいですね。

 配当金の確定申告についても、全ては税法という法律で決められたもの。法律を知らなかったから……では通りません。
 正しい知識を身に付けて、ご自身にとって最も有利な選択肢を選ぶようにしてくださいね。