新型肺炎ショックで、日経平均2万3,000円割れ

 2月3日の日経平均株価は、前週比233円(1%)下がって2万2,971円となりました。春節明けで約2週間ぶりに取引が行われた上海株(上海総合株価指数)はこの日、7.7%下落しました。中国武漢で発生した新型肺炎の感染拡大が想定以上に速く、世界景気に悪影響が及ぶ懸念が強まったことから、世界的な株安連鎖が続いています。

 3日の日経平均は、一時429円安の2万2,775円まで下がりましたが、その後、買い戻されて、2万2,971円で引けました。中国市場が閉まっていた春節(1月24日―2月2日)の間、中国株が売れないので、代わりに日経平均先物を売っていた外国人投資家もいたと考えられます。その一部は、中国株を売れるようになった3日に、上海株を売り、代理で売っていた日経平均先物を買い戻した可能性もあります。

 私は、日本株は配当利回りや買収価値から割安と判断しており、日経平均2万3,000円割れでは、積極的に買っていくべきと考えています。

リスクが高まった時こそ、日本の高配当株に注目したい

 資産形成をはかるには、「外国株・日本株・外国債券・国内債券の4資産に分散・長期投資すれば良い」がかつての資産運用の常識でした。ところが、その常識が通用しない時代が始まりつつあります。国内債券は、長期金利(10年新発国債利回り)がゼロ近辺に固定されているので、投資する価値がありません。国内債券は、分散投資対象から除外すべきと考えます。

 ところが、日本の投資家に、「リスクが高いときは株への投資比率を下げて、債券への投資比率を上げるべき」という、ステレオタイプの思い込みがあります。金融機関など機関投資家は、新型肺炎などリスクを高める材料が出ると、日本株を売って、国内債券を買おうとします。

 ただし、国内債券には、金利がほとんどありません。そこで、低下する金利収入を補うために、低信用債(ジャンクボンド)を組み入れる動きが、金融機関に広がっています。これは、危険な兆候と見ています。

 低金利に追い詰められ、運用難におちいっている日本の金融機関が、大型の高配当利回り株に投資しないで、リスクの高い低信用債に積極的に資金を振り向けるのは、奇妙な現象と考えています。

 堅実に資産形成を進めるならば、債券投資はあくまでも国債などの流動性が高く、信用力の高いものを中心とすべきです。金利低下によって、投資する価値のある債券が減っているならば、それに合わせて、債券投資の比率は減らすべきです。国内債券はゼロにすべきと考えます。

 それでは、国内債券の代わりに何に投資したら良いでしょうか?  金・プラチナや、REIT(上場不動産投資信託)に加え、日本の大型バリュー(割安)株がその候補になると考えています。今、日本の大型株には、財務内容が良好で収益基盤が堅固で、予想配当利回りが4%超に達している銘柄がたくさんあるからです。

バリュー・グロースで、バリュエーション二極化

 私は、2020年は債券投資の比率を減らして、日本の大型バリュー(割安)株の投資比率を高めるべきと考えています。特に、予想配当利回りが4~6%に達している大型優良株が有望と考えています。

 なぜならば、今、日本株市場で、極端な二極化が進んでいるからです。AI(人工知能)・フィンテック(金融新技術)・バイオ・自動運転・製造小売・レジャーなど、成長が期待されるセクターのバリュエーション(PER・PBRなど)がきわめて高くなっています。

 一方、「時代の変化に取り残されている」と誤解されて人気のない、製造業・金融・資源関連などの大型優良株には配当利回りで4~6%に達しているものが多数あります。買収価値から割安と判断されるほど、バリュエーションが低くなっている銘柄が多いので、ここに投資チャンスがあると考えています。

代表的大型バリュー(割安)株の株価バリュエーション:2020年2月3日時点

コード 銘柄名 業種 株価 配当
利回り
PER PBR
2914 日本たばこ産業 食品 2,290.5 6.7 11.0 1.6
4188 三菱ケミカルHD 化学 791.7 5.1 8.5 0.8
5108 ブリヂストン タイヤ 3,898.0 4.1 9.9 1.3
8058 三菱商事 商社 2,798.0 4.7 8.0 0.8
8316 三井住友FG 銀行 3,868.0 4.7 7.5 0.5
8591 オリックス その他金融 1,840.0 4.1 7.8 0.8
【単位】株価:円  配当利回り:%  PER:倍  PBR:倍


代表的大型グロース(成長)株の株価バリュエーション:2020年2月3日時点

コード 銘柄名 種別 株価 配当
利回り
PER PBR
4307 野村総合研究所 情報通信 2,546.0 1.3 21.9 5.6
4519 中外製薬 医薬品 11,570.0 1.3 34.9 7.4
4661 オリエンタルランド サービス 14,015.0 0.3 60.4 5.4
4716 日本オラクル 情報通信 9,500.0 1.5 27.4 7.4
6098 リクルートHD 情報通信 4,336.0 0.7 37.1 7.0
9983 ファーストリテイリング 小売 57,600.0 0.9 35.6 5.9
【単位】株価:円  配当利回り:%  PER:倍  PBR:倍
出所:配当利回りは、今期1株当たり年間配当金(会社予想)を2月3日の株価で割って算出。配当金の予想を公表していない中外製薬・日本オラクルはQUICKコンセンサス予想を使用。PERは、2月3日株価を今期1株当たり利益(会社予想)で割って算出。純利益の予想を公表していない中外製薬・リクルートHDは日経QUICKコンセンサス予想を使用。今期とは、日本たばこ産業・ブリヂストンは2019年12月期、日本オラクルは2020年5月期、ファーストリテイリングでは2020年8月期、中外製薬は2020年12月期、他は2020年3月期のこと
 上のバリュエーション比較表をご覧いただくと、バリュー(割安)株とグロース(成長)株でいかに大きなバリュエーションの差があるか、ご理解いただけると思います。バリュー株の予想配当利回りが4~6%に達しているとき、グロース株は0.3~1.5%です。バリュー株のPER(株価収益率)は10倍割れが多いのに対し、グロース株のPERは30~40倍が多くなっています。

 さらに、バリュー株のPBR(株価純資産倍率)を見てください。解散価値と言われるPBR1倍を割り込んだ銘柄が多数あります。一方、グロース株のPBRは5~7倍と高水準です。

 同じ日本株でも、グロース株とバリュー株で、これだけ極端にバリュエーションに差があると、もはや「日本株」という1つのアセットクラスに入れて、アロケーション(投資比率)を考えるのは不適切と思います。

 今の日本の大型バリュー株は、独立した1つのアセットクラスとして、投資比率を考えた方が良いと思っています。

 新型肺炎による世界景気悪化リスクが意識される中、今、バリュエーションの高いグロース株を積極的に買う環境は、まだ整っていません。

 それでも、バリュエーションがきわめて割安と言える日本の大型バリュー株には、積極的に投資していくべきと考えています。国内債券への投資をやめて、予想配当利回りが4~6%に達している日本の大型高配当株に積極投資していくべきと考えています。

 

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