2017年1月から加入できる対象者が一挙に拡大した個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo イデコ)は実際に加入を申し込んだ人の数もうなぎ登りとなっています。何しろこの制度が始まった2001年から2016年末までの15年間で30万人ぐらいしか加入者がいなかったのが、この3年足らずの間に100万人以上増加し、2019年10月末時点では141万人を超えるまでになりました。

iDeCo(イデコ)記事の多くは“痒いところに手が届かない”

 しかしながら、ちまたに溢れるiDeCo関連の記事は「利用すれば有利!」「資産形成には優れている」といったメリットが強調された内容のものばかりです。もちろんそれはそれで必要なことなのですが、大事なことが抜けています。それは加入の手続きのやり方、金融機関や運用商品の選び方、途中で職業が変わった場合に必要な手続き、そして受け取る時の受け取り方といったきわめて具体的な方法についてです。残念ながらこれらについて詳しく書かれた記事はあまり目にすることがありません。

 特に、職業が変わった時にでも積み立てや運用が続けられるというのが企業型、個人型を問わず確定拠出年金の大きなメリットだと言えます。今回は、転職した場合の3つのケースの対応についてお話していきたいと思います。

「年金を持ち運ぶ」ってどういうこと?

 iDeCo(イデコ)に限らず、確定拠出年金の大きな特徴の一つが、年金資産を持ち運びできるということです。「持ち運び」とはどういうことか? それは会社や職業が変わっても制度の利用を続けていくことができるということを意味します。従来の企業年金というのは会社を辞めたら、一定の勤続年数に達していない場合は、その時点で清算して現金として支給されるか、あるいはまったく支給されないかのどちらかでした。したがって転職するとまた新たにその会社の制度に加入するという方法しかなかったのです。

 ところがiDeCoをはじめとする確定拠出年金の場合は、転職しても新しい会社の企業型確定拠出年金へ資産を持っていくことができるのです。もし新しい会社に企業型確定拠出年金がなければiDeCo(=個人型確定拠出年金)にお金を移せます。すなわち、企業型同士、あるいは企業型と個人型の間でそれぞれどのような形でも資産を移すことができるという仕組みになっているのが確定拠出年金の特徴というわけです。

 もちろんいくつかの留意点はあるものの、これはとても便利です。昔と違って転職したり、いったん退職し、子育てに入った女性が再び復職したりするというケースも多くなってきました。つまり働き方も多様化してきていますから、そんな時代の中で、このように制度間のお金の移し替えができるというのはとても便利なことだろうと思います。

金融機関は選びなおせる

 運営管理手数料や商品ラインナップは、各社によって異なります。それまで企業型に入っていた人が退職して個人型に移す場合は、それまでと同じ金融機関である必要はありません。したがって、自分で判断してもっと良いところがあれば、そちらに移した方がいいでしょう。

こうすればわかりやすい!職業別対応方法

 では具体的にどんなパターンがあるのでしょうか?確定拠出年金には「企業型」と「個人型(iDeCo)」があります。さらに職業によって、民間企業、公務員、自営業・無職、専業主婦(夫)といったパターンがあるため、とても複雑に見えます。企業型と個人型というのは言わば制度の問題ですから、ここから入るとややこしくなります。それよりもむしろ自分が今の立場からどういう風に転職するとどう変わるのか、という観点から考えた方がはるかにわかりやすく、スッキリします。

[1]民間企業に転職したとき
[2]公務員・専業主婦(主夫)になるとき
[3]自営業・フリーランスに変更になるとき、で、どうするかを解説していきます。

教えてくれたのは…

大江英樹(おおえ ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社を定年退職後、(株)オフィス・リベルタスを設立。確定拠出年金、資産運用、行動経済学、セカンドライフ支援の専門家として各種メディアへのコラム執筆、講演やテレビ出演多数。