中国景気悪化、世界景気減速の影響を受けて、2期連続減益へ

 9月中間決算の発表が終盤に入っています。これまでの発表を総括すると、米中貿易戦争の影響により、中国を中心に世界景気が減速した影響を受け、製造業(自動車・設備投資関連株)の業績悪化が目立ちます。

 非製造業の業績は堅調ですが、製造業の業績見通し引き下げを受け、東証1部3月期決算、主要841社の今期(2020年3月期)純利益(会社予想)は、11月8日時点で、前期比3.6%減る見通しとなりました。期初(5月時点)の予想は、2.4%の増益でしたが、2期連続減益見通しに下方修正されました。

東証1部3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比変化率):2016年3月期(実績)~2020年3月期(予想)

決算期 実績/予想 純利益
2016年3月期 実績 ▲ 4.7%
2017年3月期 実績 + 12.3%
2018年3月期 会社予想(期初予想:5月) + 5.9%
会社予想(12月末時点) + 12.2%
実績 + 27.5%
2019年3月期 会社予想(期初予想:5月) ▲ 2.5%
会社予想(12月末時点) ▲ 1.8%
実績 ▲ 6.2%
2020年3月期 会社予想(期初予想:5月) + 2.4%
会社予想(11月8日) ▲ 3.6%
(出所:楽天証券経済研究所が作成)

過去4年の業績推移振り返り

 2016年3月期以降の東証1部主要841社の業績推移を、簡単に振り返ります。

◆2016年3月期:4.7%の減益
 下期(2015年10月~2016年3月)の景気が「景気後退ぎりぎり」まで悪化したため、減益となりました。ただし、「景気後退」の定義を満たすまでは悪化しませんでした。結果的に、「景気減速・踊り場」と位置づけられています。
 チャイナ・ショック(中国景気の悪化)、原油安ショック(資源国の景気悪化)、米国景気減速を受け、世界的に景気が停滞した影響を受け、日本の景気も低迷しました。

◆2017年3月期:12.3%の増益
 2016年4月以降、世界的な景気回復を受け、日本の景気も持ち直しました。景気好転を受けて、増益となりました。

◆2018年3月期:27.5%の増益
 期初(2017年5月時点)の会社予想を集計すると、5.9%の増益予想でした。それが、四半期決算が出るごとに上方修正され、最終的に27.5%増益まで拡大しました。世界まるごと好景気の恩恵を受けて、日本も好調でした。

◆2019年3月期:6.2%の減益
 期初(2018年5月時点)の会社予想を集計すると、小幅(▲2.5%)の減益見込みでした。例年通り、保守的(低め)の予想で、先行き、上方修正され、増益になると考えられていました。上期(2018年9月)までの景況は一進一退でした。ところが、下期(2018年10月以降)に、中国を中心に世界景気が悪化した影響を受けて、日本の企業業績予想も、下方修正が増え、最終的に6.2%の減益となりました。

◆2020年3月期(途中経過):3.6%の減益予想
 期初(2019年5月時点)の会社予想を集計すると、小幅(2.4%)の増益見込みでした。この時点では、例年通り、保守的な見通しでした。ところが、その後、中国景気の悪化の影響を受けて、世界的に景気減速が鮮明になってきたため、9月中間決算の発表で下方修正が増え、11月8日時点では、▲3.6%の減益見通しとなっています。

今期の連結純利益(会社予想)の上・下方修正額が大きい企業

 通期(2020年3月期)業績予想を下方修正する企業が、製造業に増えています。以下に上・下方修正額の大きい企業を挙げます。

今期(2020年3月期)の連結純利益(会社予想)の下方修正額が大きい14社:11月8日時点

NO コード 銘柄名 下方修正額
1 5020 JXTG HD ▲ 1,650
2 7203 トヨタ自動車 ▲ 1,000
3 7003 三井E&S HD ▲ 910
4 7267 本田技研工業 ▲ 900
5 8058 三菱商事 ▲ 800
6 5486 日立金属 ▲ 755
7 6501 日立製作所 ▲ 750
8 7211 三菱自動車工業 ▲ 600
9 7269 スズキ ▲ 600
10 7259 アイシン精機 ▲ 530
11 4005 住友化学 ▲ 500
12 6902 デンソー ▲ 480
13 7270 SUBARU ▲ 470
14 8053 住友商事 ▲ 400
(出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成)
(単位:億円)

 世界景気減速を受けて、自動車関連株の業績悪化が目立ちます。また、原油や石油化学市況の下落を受けて、石油精製・化学・商社などの業績も悪化しています。

今期(2020年3月期)の連結純利益(会社予想)の上方修正額が大きい14社:11月8日時点

NO コード 銘柄名 上方修正額
1 4502 武田薬品工業 1,100
2 6758 ソニー 400
3 4503 アステラス製薬 280
4 6645 オムロン 235
5 6702 富士通 200
6 4568 第一三共 180
7 4307 野村総合研究所 130
8 4661 オリエンタルランド 109
9 6857 アドバンテスト 105
10 1605 国際石油開発帝石 100
11 9022 東海旅客鉄道 100
12 4523 エーザイ 96
13 6444 サンデンHD 85
14 1662 石油資源開発 74
(出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成)
(単位:億円)

 医薬品・情報通信・半導体製造装置に、上方修正が増えています。

日本株は「買い場」の判断継続

 足元の景気・企業業績の悪化は、昨年10月以降の日経平均株価の急落で、織り込み済みと判断しています。株価は、おおよそ半年から1年後の景気変化を織り込みながら動きます。ここからは、来期の景気・企業業績を織り込む動きが始まると見ています。

 足元、日経平均が順調に上昇してきているのは、来期の景気・企業業績回復を織り込む、最初の動きと見ています。来期は、5G(第5世代移動体通信)・半導体への投資が世界的に盛り上がり、ハイテク産業の業績が増加に転じると予想しています。

 日本株は、引き続き「買い場」と判断しています。

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