※本記事は2010年8月19日に公開したものです。

投資資金により異なる3つのステージ

 株式投資では、投資資金によって大きく3つのステージに分かれると筆者は考えています。

 1つめは投資資金100万円。この金額は、複数の銘柄に分散して投資するための必要最小限の金額です。もちろん、投資資金10万円でも買える銘柄はたくさんありますが、複数の銘柄に分散して投資するのは難しいといえます。まずは投資資金として100万円を確保することが株式投資を有利に行うための第一歩です。

 2つめは投資資金1,000万円。このくらいの金額になると、複数の銘柄に分散して投資することはもちろん、1銘柄ごとに複数単位の投資も可能ですし、投資タイミングを何回かに分けて実行することもできます。1,000万円は、株式投資の選択肢や行動の幅、自由度が広がる理想的な金額といえます。1,000万円あれば、そこから3,000万円、5,000万円と増やしていくのもそれほど難しくありません。

 3つめは投資資金1億円。ここまで投資資金が増えると、全額を株式投資に回すのはリスクも大きくなります。資金が同じ半分になってしまうといっても100万円が50万円になるのと1億円が5,000万円になってしまうのとでは意味が全く異なります。100万円が50万円になったところでいくらでも挽回可能ですが、1億円を5,000万円に減らしてしまえば、そこから挽回するのは非常に困難になってしまいます。どちらかといえば今ある資産をできるだけ減らさないようにしながら、年率10%ほどのリターンで十分、というような、保守的な要素も取り込んだ運用手法が求められます。

資産を大きく増やすには信用取引が有効

 このように考えると、まず100万円を株式投資の原資として確保した上で、多少無理をしてでもできるだけ早く1,000万円に到達することが、資産を大きく増やすためには必要といえます。

 もし100万円を元手に現物取引のみを行った場合、毎年30%ずつの利益を上げられたとしても1,000万円にするのに9年かかります。

 しかし、100万円を担保に信用取引を行い、レバレッジを3倍に効かせた上で毎年30%ずつの利益を上げ続ければ、4年で1,300万円にまで増やすことができます。

 したがって、多少のリスク覚悟で信用取引を活用して勝負することで、自由度が高く安定した株式投資ができる水準である1,000万円までより早く達することができるのです。

 100万円であれば、仮に全額失っても再起可能な金額です。だからこそ多少無理をしてでも早い段階で上のステージを目指す価値があるのです。

「勝負」のタイミングを間違えない

 しかし、レバレッジを効かせた信用取引は当然失敗したときの損失も現物取引の場合より大きくなります。そのため、いつでも信用取引で勝負、というわけにはいきません。信用取引を使って勝負した場合に成功する可能性が高い状況、つまり中長期的な上昇相場で実行すべきなのです。

 例えば2004~2005年にかけての上昇相場や、2012年終わり~2013年前半のアベノミクス相場初期では、信用取引を使ってたった1年で投資資金を10倍、20倍にする個人投資家が続出しました。

 10倍、20倍まではいかなくとも、この間に投資資金を2倍、3倍にすることは比較的容易でした。なぜなら、この間は持ち株のほぼすべてが大きく上昇していったのですから。

 しかし、信用取引を使って大勝負できるほどの中長期的な上昇相場はそう頻繁には訪れません。こうした中、資産を大きく増やそうと大勝負をしても、逆に投資資金の全てを失うことになりかねません。

 マラソン選手はここぞというタイミングで勝負を仕掛けます。それまでは虎視眈々と勝負に打って出るチャンスをうかがっているのです。決してむやみやたらと勝負を仕掛けたりはしません。

 株式投資も同じです。勝負してよいタイミングとそうでないタイミングがあるのです。大勝負は中長期的な上昇トレンドにあるとき、個別銘柄の大部分が上昇トレンドにあるときのような、勝算の高い時期に行うようにしましょう。

塩漬け株も有効活用できる

 塩漬け株ばかりで資金1,000万円にする原資がない、という個人投資家の方に朗報です。信用取引を使えば、塩漬け株を有効活用できます。信用取引では担保(保証金)を差し入れてその約3倍の取引を実行することができますが、担保として金銭ではなく手持ちの株式を差し入れることもできるのです。

 評価額は証券会社や銘柄によって異なるものの、おおむね時価の80%です。ですから、例えば塩漬け株が時価にして500万円あれば、500万円×80%×3倍=約1,200万円の信用取引が可能になるのです。

 塩漬け株をただ寝かしておくだけならばせいぜい配当金をもらえるくらいですが、塩漬け株を担保に信用取引を行うことで、新たな投資資金を生み出すことも十分可能です。

 ただし、信用取引で含み損が膨らんだ場合、その損失を金銭で穴埋めできなければ強制的に担保としている塩漬け株を売却して決済されてしまいます。

 塩漬け株を強制売却されるほど損失が膨らむ前に、損切りをきっちりと実行することが信用取引では求められますので、その点はご注意ください。

まずは信用取引をはじめてみよう

 将来必ず2004~2005年や2013年前半のような、利益を容易に上げることができる上昇相場がくるはずです。その時に備えて、信用取引を経験したことのない個人投資家の方は、信用口座を開設し、少額で良いので実際に信用取引を始めて慣れておくのがよいと思います。

 もちろん信用取引は現物取引に比べてリスクの高い取引ですから、筆者も無理に勧めるつもりはありません。でも、リスク覚悟で資産を大きく増やしたいなら、信用取引を活用するのは効果的な方法です。

 信用取引はリスク管理さえきっちりできれば非常に使い勝手のよいものです。資産を大きく増やすこと以外にも色々と活用できます。今後も、信用取引で必ず守るべきポイントや、筆者なりの信用取引活用法をご紹介していきます。

  関連記事≫≫信用取引の「空売り」の2つの使い方:下げ相場での利益狙いとリスクヘッジ