今日は、10~12月の人気優待トップ10についてコメントします。

10~12月に優待を得る権利が確定する銘柄の人気トップ10

人気トップ10【注】は、以下の通りです。

【注】人気トップ10
10~12月に株主優待を得る権利が確定する銘柄は、239あります。楽天証券のお客様で保有している株主の数が多いほど、人気が高いと判断し、保有株主数の上位10社をピックアップしました。

 ただし、無配(配当金を出していない)銘柄は除外しました。また、楽天(4755)についてコメントすることはできませんので、楽天も除外しています。

人気
順位
コード 銘柄名 優待月 配当
利回り
優待
内容
1 2914 日本たばこ産業 12月 6.6 優待内容
2 3197 すかいらーくHD 6月・12月 1.0 優待内容
3 2702 日本マクドナルドHD 6月・12月 0.6 優待内容
4 7267 本田技研工業 3・6・12月 3.9 優待内容
5 2769 ヴィレッジヴァンガード コーポレーション 11月 1.3 優待内容
6 5301 東海カーボン 12月 4.5 優待内容
7 2809 キユーピー 11月 1.7 優待内容
8 2503 キリンHD 12月 2.7 優待内容
9 4666 パーク24 10月 2.8 優待内容
10 8304 あおぞら銀行 3・6・9・12月 5.7 優待内容
【単位】配当利回り:%
出所:楽天証券「株主優待検索」。配当利回りは今期の1株当たり年間配当金(会社予想)を9月25日の株価で割って算出。今期とはパーク24は2019年10月期、ヴィレッジヴァンガード・キユーピーは2019年11月期、他は2019年12月期のこと

 上の表の右側の「優待内容」をクリックすると、どのような優待を実施しているかご覧いただくことができます。

「いつまでに買わないと優待や配当の権利が得られないか」には、ご注意ください。上記に掲載した人気トップ10銘柄のうち、10月優待銘柄(パーク24)は「10月29日(火)」が権利付き最終日です。11月優待銘柄(ヴィレッジヴァンガード・キユーピー)は「11月27日(水)」が権利付き最終日です。12月決算銘柄の権利付き最終日は「12月26日(木)」です。

 なお、優待内容は、予告なく変更されることもありますので、常に最新の情報をチェックしてください。楽天証券HPでは、1カ月ごとに優待内容を更新しています。

「配当利回り」も重要

 優待投資を始めようと思っている方に、「優待内容の魅力」だけ見て、予想配当利回りを見ない方もいらっしゃいます。予想配当利回りも、必ず見るようにしましょう。配当利回りが高ければ、受け取った配当金で好きなものを買うことができるからです。

 優待品が魅力でも配当利回りが低い銘柄は、株主への利益配分が充実しているとはいえません。優待品と配当金の魅力を両方見て判断するのが、合理的です。

 上記の表を見ると、人気トップの日本たばこ産業(配当利回り6.6%:9月25日時点)は、配当利回りがとても高く、注目できます。人気第2位のすかいらーく、3位の日本マクドナルドは、優待内容がとても魅力的ですが、配当利回りはやや物足りないと感じます。

 ただ、配当利回りは確定利回りではなく、業績変動にともなって増えたり減ったりすることには、注意が必要です。

人気トップ10銘柄の業績をチェック

 優待銘柄を選ぶ時、「優待内容」「配当利回り」だけで決める方もいますが、株式投資である以上、最低限、足元の業績はチェックしましょう。まず、人気トップ10の前期から今期にかけての連結営業利益の推移を見てください。

  前期・今期とは、パーク24は2018年10月期・2019年10月期、ヴィレッジヴァンガード・キユーピーは2018年11月期・2019年11月期のことです。その他の銘柄は、2018年12月期・2019年12月期のことです。

10~12月優待人気トップ10の連結営業利益:前期実績と今期会社予想

出所:各社決算短信より作成、営業利益率は今期営業利益(会社予想)を今期売上高(会社予想)で割って算出。あおぞら銀行には営業利益がないので、営業利益率はNA

 業績動向に加え、注目していただきたいのが、営業利益率です。利益率の高い企業には、収益基盤が堅固な銘柄が多く、長期投資する上で有望です。ここでも、日本たばこ産業の利益率(23.9%)の高さが光っています。日本マクドナルド(営業利益率9.8%)、パーク24(同7.1%)も利益率が高く、収益基盤がしっかりしていて、投資魅力は高いと思います

 東海カーボンは利益率(25.3%)がとても高いが、同社は利益率の変動が激しく、現在の高利益率は一時的の可能性もあります。

人気トップ10、窪田コメント

人気トップ10の私の投資判断は、以下の通りです。

積極的に投資したいと考える2銘柄:日本たばこ産業とパーク24

 日本たばこ産業は、優待よりも、6.6%の配当利回りに魅力を感じます(9月25日時点)。優待については、1つ注意すべきことがあります。最近、優待内容に変更があったことです。

 これまでは、買ったばかり(1年未満)の株主にも、権利確定日に優待を得る権利が付与されましたが、これからは、1年未満の株主は優待が得られず、1年以上の株主だけが優待の対象となりました。今から投資しても2019年12月の優待は得られません。最初に優待が得られるのは2020年末となります。また、これまで6月末と12月末の株主に優待を得る権利が付与されましたが、12月末だけになりました。同社は、自社製品(食品)などを贈る優待を行っています。

 パーク24は「シェアリングエコノミー関連」の成長株として評価しています。消費増税後の10-12月に駐車場ビジネスが一時的に落ち込む可能性がありますが、中長期で「カーシェアリング」の成長に期待しています。
詳しくは、以下のレポートを参照してください。

8月29日:配当利回り6.9%、株主優待でも人気。JTの投資価値
9月12日:配当利回り3%!「シェアリングエコノミー」関連の成長株として期待されるパーク24

優待を楽しみながら長期投資するのに適格と考える6社:すかいらーくHD・日本マクドナルドHD・本田技研工業・東海カーボン・キューピー・キリンHD

【1】    すかいらーくHD
 外食業界の生き残りで、優待を楽しみながら長期投資するのに適格と考えています。同社は、株主に魅力的な利益還元を行っています。100株保有(投資額は19万7,900円。9月25日終値で投資した場合)すると、配当金は年間1,900円、株主優待「食事カード」を年間6,000円がもらえる予定です。

 合計で年間7,900円の経済価値が得られます。すかいらーくの優待食事カードは、カフェレストラン「ガスト」、中華レストラン「バーミヤン」のほか、「ジョナサン」「夢庵」「藍屋」「ステーキガスト」「グラッチェガーデンズ」「魚屋路」「とんから亭」など、幅広い店舗で利用できます。「500円単位」で、食事代金から割引されます。優待カードからお釣りは出ませんが、500円単位で使えるので、使いやすいといえます。ただし、株主優待内容は、予告なく変更されることもあるので、注意が必要です。

 業績動向も見ている必要があります。同社は、2016年12月期に営業最高益312億円を計上した後、3期連続減益で、今期(2019年12月期)営業利益は、220億円まで減る見込みです。人件費の上昇や、店舗運営の合理化・省力化のためのシステム投資のコストが、減益要因です。同社は、優待内容を2017年12月期から3倍に増加させていますが、優待コストの増加も減益要因となっています。

 ただし、売上は堅調です。魅力ある業態やメニュー作りに成功しているため、毎期、売上高は1%くらい増加して過去最高を更新しています。私は、来期(2020年12月)以降、消費税の引き上げを乗り越え、業績は回復に向かうと予想しています。

【2】日本マクドナルドHD
  構造改革に成功して業績好調が続く日本マクドナルドは、来期(2020年12月期)にも営業最高益を更新する可能性があると考えています。詳しくは、以下のレポートを参照してください。

3月13日:日本マクドナルド、過去最高の営業利益が視野に。「未来型店舗」で何が変わる?

【3】本田技研工業
 配当利回り3.9%(9月25日時点)と高く、優待よりも配当の方が魅力的と考えます。本田は長期投資で買い場と考えています。ただ、今、自動車株に投資するのは、リスクが高いことを理解しておく必要があります。短期的には貿易戦争に巻き込まれるリスク、長期的にはEV(電気自動車)化が進むリスクが意識されます。EV化は既存のガソリン車メーカーにとって重大なリスクです。

 今、自動車関連株に投資するならば、トヨタ自動車(7203)、本田技研工業(7267)、ブリヂストン(5108)などに絞ったほうが良いと考えています。

【4】東海カーボン
 東海カーボンは、前期(2018年12月期)まで業績急拡大が続き、営業最高益を更新していました。今期(2019年12月期)は中国景気悪化による黒鉛電極の市況低下で、業績に急ブレーキがかかっていますが、それでも会社予想ベースで小幅に営業最高益を更新する見込みです。

 業績急拡大に株価上昇が追いつかず、予想PERは9月25日時点で、4.6倍まで低下しています。今後、業績が急激に悪化しない限り、割安株として見直されて株価が上昇する余地が大きいと考えています。

 前期まで、業績拡大を牽引してきたのは、黒鉛電極です。鉄スクラップを溶かして鉄鋼製品を生産する電炉【注】に必須の中心的素材です。

【注】電炉と高炉
鉄鋼を生産する方式に、電炉法と高炉法がある。電炉では、電気で鉄スクラップを溶融して鉄鋼を生産する。高炉では、鉄鉱石と石炭から、鉄鋼を生産する。

 中国が、国策として、高炉にかたよった製鉄方式を見直して電炉拡大を打ち出したため、黒鉛電極に大量の注文が集中し、2017年後半から2018年にかけて需給逼迫が続きました。深刻な品不足が続く中、価格上昇と数量増の両面から、東海カーボンの業績拡大につながりました。

 中国は、環境規制を強化し、大気汚染の原因となっている高炉から、電炉への切り替えを急いでいます。足元、中国景気の悪化、鉄鋼需要の鈍化の影響から、黒鉛電極の市況が低下してきていますが、ここからさらに中国景気の悪化が加速しない限り、市況は下げ止まると考えています。そうなれば、来期(2020年12月期)以降、業績や株価の回復が見込めます。

 ただし、同社への投資には、リスクも伴います。中国景気の悪化が長期化すると、業績が一段と悪化する可能性もあります。これからも、株価の乱高下が続くと想定されます。

【5】キユーピー
  今期(2019年11月期)、小幅ながら6期連続で経常最高益を更新する見込みです。中国や東南アジアでドレッシングなど調味料の売り上げが拡大しています。国内では、サラダや惣菜などの売り上げが伸びてきました。高い成長は見込めないものの、これからも最高益を更新していくことが期待されます。

【6】キリンHD
 今期(2019年12月期)の営業利益(会社予想)は前期比▲51.6%の960億円と見た目が悪いが、オセアニアの飲料事業減損など一時的要因によるものです。今期業績の実態は悪くありません。会社が開示している連結事業利益(一時的損益を除く経常的な業績)で見ると、上半期(2019年1-6月期)は、前年同期比+5.0%と好調で、通期では前期比▲4.7%の1,900億円を見込んでいます。

 国内の酒類・飲料事業は成長が見込めなくなってきていますが、医薬品事業(協和キリン)やミャンマーでのビール事業には成長余地があります。今後は、医と食をつなぐ分野での成長を目指します。そのために、上場企業であるファンケルへ33%の出資を決めました。完全子会社とした協和発酵バイオと、資本提携したファンケルの力を使って、健康分野のビジネス拡大を目指します。

投資を避けた方が良いと考える2社

【1】ヴィレッジヴァンガード・コーポレーション
 かつて異色の小売業として成長した時代がありましたがが、徐々に競争力を失い、収益が悪化しました。今期、収益回復を見込んでいるものの、それでも営業利益率(会社予想)は1.4%と低いままです。小売業の優勝劣敗が強まる中、生き残りのビジネスモデルを確立できているとは、まだ判断できません。

【2】あおぞら銀行
 低金利の長期化で国内商業銀行業務の収益性低下が続いています。銀行株で投資するならば、海外での利益拡大が期待される3メガ銀行(三菱UFJ FG:8306、三井住友FG:8316、みずほFG:8411)に限定すべきと考えています。