先週は不安が緩和し株高・円安に

 先週の日経平均は、1週間で495円上昇し、2万1,199円となりました。世界の株式市場を不安に陥れていた「三大不安」がそろって緩和したことから、先週は世界的に株が反発し、日経平均も買い戻されました。

日経平均株価の動き:2018年12月末~2019年9月6日

 

 為替市場では、世界的に株が下がると「リスクオフの円高」が進み、世界的に株が上がると「リスクオンの円安」が進む傾向が続いています。先週は、不安が緩和して世界的に株が反発したので、ドル/円はやや円安に進みました。

ドル/円為替レート推移:2018年1月1日~2019年9月6日

 

「三大不安」がそろって緩和

 以下の通り、先週は三大不安がそろって緩和しました。ただ、不安は「やや緩和」しただけで、抜本的な解決は何ら見えていません。しばらく不安が「高まったり緩和したり」を繰り返すと考えられます。

【1】米中貿易戦争がエスカレートする不安が「やや緩和」

 米中通商協議が10月初旬に再開されることが決まり、マーケットに安堵感を与えました。もともとは9月にワシントンで閣僚級の米中協議が行われる予定でしたが、9月1日に米国が対中制裁第4弾を発動し、中国も報復関税を発動したため、9月中の協議は絶望視されていました。

 しかし先週、9月の協議を延期して、10月に開催することで米中が合意したことが、安心感につながりました。

 トランプ大統領は、最近しきりに「来年の大統領選で再選が決まったら、もっと厳しい姿勢で中国と対峙する」という発言を繰り返しています。この発言は、裏を返せば、「大統領選が近づいてきたので株安を招く強硬策を取りにくくなりつつある」ことを白状しているようなものでもあります。

 トランプ大統領の支持率は株価の影響を大きく受けるので、最近のトランプ大統領は、「NYダウが上がると中国に対して強硬になり、NYダウが下がると融和姿勢になる」傾向が鮮明です。本音では、中国と一時休戦したがっているように見えます。

 一方、中国サイドでも、景気悪化が長引くと習近平国家主席への批判が強まること、香港民主化デモが過激化しつつあることから、米国と一時休戦するインセンティブは高まっていると考えられます。

 米中の対立に抜本的な解決策はないものの、一時休戦に持っていくインセンティブが双方に高まっている可能性はあります。

【2】英国がEUから「合意なき離脱」を強行するリスクが低下

 英議会下院は4日、EU(欧州連合)からの離脱を、現在予定されている10月末から3カ月延期して2020年1月末とする法案を、賛成327票、反対299票で可決。これで、ボリス・ジョンソン英首相が強行しようとしていた10月末の「合意なき離脱」は、阻止されることに。野党各党に加え、与党からも造反議員が出たことで、延期法案は可決されました。

 ジョンソン首相は英議会を解散し、総選挙を行う構えですが、野党はそれにも応じない姿勢です。議論の迷走がまだ長引きそうですが、とりあえず10月の合意なき離脱が避けられる見通しとなったことを、マーケットは好感しました。

【3】香港の民主化デモの解決に向けて「逃亡犯条例」を香港政府が撤回

 香港で民主化デモが過激化しつつあり、中国政府が武力行使に踏み切れば、「第二の天安門事件」になるとの不安が高まっていました。香港政府は4日、民主化デモのきっかけとなった「逃亡犯条例」の正式撤回を発表しました。

 ただし、その後も大規模デモは続いており、香港情勢が沈静化する気配はありません。香港デモの沈静化に向けて、一時期待が出ましたが、情勢は依然混沌としています。

日本株は買い場の見方を継続

 米中対立が緩和すれば、5G(第5世代移動体通信)や半導体への投資が世界で復活し、世界景気が回復に向かう期待があります。対立緩和が続くか、まったく現時点ではわかりませんが、日本株が長期的に良い買い場を迎えているとの判断は継続します。

 日本株は買収価値や配当利回りから見て「割安」と判断しています。不安があって株価が安くなっている局面で、日本株を積極的に買っていくことが、長期的な資産形成に貢献すると考えています。

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