ETFとは?
ETFはエクスチェンジ・トレーデッド・ファンドの略で、そのまま訳すと「取引所で取引される投資信託」という意味です。
米国で最初のETF(上場投資信託)はSPDR S&P500 ETF(SPY)で、1993年に上場されました。
それ以降、ETFの市場は急拡大を見ており、ICI(米国投資会社協会)によると2018年12月の時点で米国のETFの数は1,660、総資産は3.37兆ドルにのぼっています。
図:ETF総資産(2018年末)
つまりETFは大ヒット商品なのです。
世界のETFの総資産の71%は米国にあります。
図:世界のETFシェア(資産ベース、2018年末)
これは海外ETFに投資することで、巨大で、流動性の高い米国のマーケットに投資できることを意味します。もちろん日本の証券市場にもETFは上場されているわけですが、私が海外ETFに投資した方がずっと良いと考える理由は、このようにマーケットの大きさと流動性の高さにあります。
ETFのどこが「ダントツに優れモノ」なのか?
ETFはなぜこれほどまでに成功したのでしょうか? それは率直的な言い方をすれば「既存の投資商品より、ダントツに優れモノの商品だったから」ということに尽きます。つまり成功すべくして成功したわけです。
それではETFのどこが「ダントツに優れモノ」なのでしょうか。ポイントは次の5点です。
1.購入タイミングが自由
2.フィー(手数料)が安い
3.米国の投資信託税制の不利益を受けない
4.透明性が高い
5.ポートフォリオを組む際の利便性
それでは具体的に説明します。
1:購入タイミングが自由
個人投資家の方々が分かっているようで、実はあまり分かっていない大事なポイント、それが「購入タイミングが自由であるメリット」です。
従来の投資信託の場合、一日が終わって、株式市場(マーケット)が閉まった後で、投資信託の価格である基準価額を計算します。別の言い方をすれば、投資信託の価格は、一日に1回しか付かないのです。
例えば、ある日、相場を眺めていたら、マーケットが急騰したとします。このとき、急騰する前日の基準価額で投資信託(ファンド)を購入することができたら、これほどおいしい話はないですよね? 値上がりする前に安くファンドを手に入れることができるのですから。
でも、これを許すと、既にその投信を購入し、保有し続けてきた他の投資家に不公平になります。
このため、日中に投資信託の買い注文を入れた投資家は、その日のマーケットが閉まった後に計算される値段でファンドを買い付けるルールになっています。この例でいえば、急騰後の価格になります。
このように、日中は自分が買い付ける際の基準価額が分からないままに注文を入れることから、これを「ブラインド(盲目)方式」と呼びます。
ブラインド方式は、相場が急騰したからといって慌てて注文を出しても、その日、マーケットが上がった後の値段でしか買えないのです。また相場が急落している日に慌てて売り注文を出したとしても、その日、マーケットが下がった後の値段でしか逃げることはできません。
こう書くと、皆さんは(私はデイトレーダーじゃない。だからそんな細かいことは関係ない)と思われるかもしれません。しかし、ブラインド方式は買い付け価格が分からないままに発注する方法ですから、あなたが買いコストを厳密に管理することは不可能なのです。
いまマーケットが日中に1%上がったり、下がったりすることは、日常茶飯事です。下手をすれば、これだけで1年間の運用フィー(手数料)に匹敵するようなコストを被りかねないのです!
その点、ETFは株式と同様に株式市場が開いている間、リアルタイムの価格で購入、売却ができます。だから、自分の納得のいくピンポイントの価格(指値)、ないしは時間(成行注文)で取引ができるのです。本当にコストにシビアな投資家は、ちゃんと指値をして自分の納得のいく値段でETFを買っています。
2:フィー(手数料)が安い
ETFは基本、インデックスファンドです。インデックスファンドは、別名、パッシブ運用と言われる場合もありますが、単に株価指数をなぞるように設計されています。もっと踏み込んだ言い方をすれば、ファンドマネージャーの銘柄選択の腕前は関係ないのです。
銘柄を選定しないということは、企業調査などの手間もかからないわけで、ローコストにファンドを運営することができます。
下はファンドのタイプ別の費用比率を比較したグラフです。ICIの調査では2018年のアクティブファンドの平均費用比率は0.76%でした。
図:ファンドのタイプ別費用比率の比較(2018年)
これに対してインデックスファンドの平均費用比率は0.08%でした。
そしてETFは、新規顧客がニューマネーでファンドを購入した際、ファンドの資産が増えた分だけ、これに呼応する株式を購入するコストが外部化されています。これは難しい概念なので、第2章の「良いETF、悪いETF」で詳しく説明することにします。
3:米国の投信税制の不利益を受けない
ETFのもう一つの優位性は、米国の投信税制の不利益を受けない点にあります。
いまファンドがその中に組み入れられている銘柄を売却した場合、それが利益になればキャピタルゲイン課税の対象になります。これはインデックスファンドの場合でも例外ではありません。
(でも自分がインデックスファンドを解約するまでは、銘柄は売却しないだろう?)
投資家は、そう考えがちです。
しかし、この理解は正しくありません。自分とは何の関係もない他の投資家が、インデックスファンドを解約して現金を引き出せば、運用会社は解約に応じるためのキャッシュをこしらえるべく、ファンドで保有している株式の一部を売らなければいけないのです。
もし、そのときにキャピタルゲイン(売買差益)が発生したら、売らずにずっとファンドを持ち続けた投資家も、キャピタルゲイン税を払わないといけないのです。つまり、キャピタルゲイン税を払うことは、そのファンドに投資しているメンバー全員の責任になるのです。
これに対してETFは税法上、株式と同じ扱いを受けます。つまり、自分がそのETFを売却しない限り、キャピタルゲインは発生しないのです。
4:透明性が高い
ETFの利点は透明性が極めて高い点にあります。ETFは、その仕組み上、毎日、そのETFを構成している銘柄、ならびに個々の比重を公表しなければいけません(これを「ポートフォリオ・コンポジット・ファイル」といいます)。
これに対してファンドは、年に2回しか開示が義務付けられていません。もちろん、多くのファンドは月次レポートを公表していますが、月末直前に顧客レポートに載ると、きまりの悪い銘柄を処分するなどのウインドウ・ドレッシング(=ポートフォリオのお化粧)が行われることも多いです。
ETFの場合、毎日、きっちりとポートフォリオが公表されるため、運用は極めて透明です。
5:ポートフォリオを組む際の利便性
ETFはここで論じたように、中身が透明であり、投資家が何に投資しているのかが一目瞭然です。
加えて、取引所に上場されている関係で、必要な時には、自分の考えるタイミングでポジションを建てたり、処分したりすることができます。
ETFには株式だけでなくコモディティや債券に投資できるものもあり、銘柄は多岐にわたっています。
これらのことはETFがポートフォリオを組む際に、極めて便利な投資対象であることを示唆しています。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。