次々と新しいITサービスが生まれて成長

 21世紀の成長産業筆頭として、ITサービス産業があります。IT(情報技術)を活用した新しいサービスが、私たちの生活・産業構造を一変させつつあります。そこから、多くの成長企業が生まれています。

 Eコマース、SNS、フィンテック(金融新技術)、仮想通貨(デジタル資産)、ネット広告、VRゲーム、音楽配信、人材紹介、介護ロボット、医療ロボット、チャットボット(問い合わせへの自動応答)、スマートコンストラクション(ITを活用した建設土木)、スマート農業(ITを活用した農業)、自動運転、シェアリングサービス(自動車、自転車などの共同利用サービス)など、さまざまな成長分野が出てきています。これに伴い、ITインフラの構築・高度化が喫緊の課題となっています。

ITインフラ構築が急務

 ITサービスの進化は、それを支えるITインフラが整っていて初めて実現するものです。高速大容量の通信ネットワーク・データセンターなどの社会インフラに加え、個々の企業レベルでも社内ネットワークを構築する必要があります。

 社内ネットワークの構築は、民間大企業から先に進みました。中小企業や官公庁は、相対的に遅れていました。ところが、2016年から、中小企業や官公庁でも、ITインフラ整備が待ったなしとなりました。2016年から導入された、マイナンバー制度が起爆剤となりました。ITを使った業務効率化が、官公庁や中小企業にも広がってきています。

 人手不足も、この流れを後押しします。小売業や外食業では、店舗オペレーション効率化のためのIT投資が待ったなしになっています。

最高益更新が続くシステムインテグレーター

 こうした環境下、大企業・中小企業・官公庁のシステム構築を担う、SI(システムインテグレーター)の仕事が超繁忙となっています。ただ、デジタル化の流れを妨げる要因もあります。ネットを使った犯罪が巧妙化する問題が深刻化しつつあります。サイバーセキュリティ対策を強化するニーズも、急速に拡大しています。

 こうした環境変化を受け、ITインフラ構築を手がけるシステムインテグレーターや、サイバーセキュリティを提供する大手には、最高益を連続更新する企業が増えています。

システムインテグレーター、情報セキュリティ大手の今期連結営業利益(市場予想)

コード 銘柄名 連結営業利益 (市場予想) 増益率 営業最高益
4307 野村総合研究所 778 8.9% 5期連続
4704 トレンドマイクロ 389 8.5% 2期ぶり最高益
4684 オービック 424 11.8% 26期連続
9613 NTTデータ 1,526 3.3% 5期連続
9749 富士ソフト 133 16.4% 13期ぶり最高益
【金額単位:億円】
出所:QUICKコンセンサス予想、トレンドマイクロ・富士ソフトの営業利益は2019年12月期予想、その他は2020年3月期予想

 システムインテグレ-ター・情報セキュリティ大手の株価バリュエーション:8月14日

コード 銘柄名 株価:円 PER:倍 配当利回り
4307 野村総合研究所 1,933 24.4 1.6%
4704 トレンドマイクロ 4,925 23.8 3.4%
4684 オービック 11,500 31.6 1.2%
9613 NTTデータ 1,347 20.5 1.3%
9749 富士ソフト 4,685 21.8 0.9%
出所:PERは、14日株価を今期1株当たり利益(会社予想)で割って算出。配当利回りは、今期1株当たり年間配当金(会社予想)を14日株価で割って算出

 野村総合研究所(4307)は、野村系SIで、コンサル・システム開発・運用を一貫して提供できることが特色です。金融・小売り業などに強みを持ちます。

 トレンドマイクロ(4704)は、個人・法人向けの情報セキュリティソフトで国内トップです。近年、法人向けの契約が伸びています。

 オービック(4684)は、独立系SIで、主力のERPが安定成長しています。中小・中堅企業向けで強みを持ちます。

 NTTデータ(9613)は、SI専業で国内トップです。金融や、官公庁向けで強みを持ちます。M&A巧者で、積極的なM&Aが業績拡大に貢献しています。

 富士ソフト(9749)は、業務ソフトが全般に好調です。組込・制御系ソフトも自動車向け(電装関連)が好調です。今後、5G(第5世代移動体通信)の投資が活発化すると、通信制御系ソフトの受注が伸びることが期待されます。

第4次産業革命の進展で、システムインテグレーターの繁忙続く

 IT活用の最先端で、新たな変化が起こりつつあります。それが、第4次産業革命と言われる変化です。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、ビッグデータ分析、ロボットの普及によって、ITを活用した産業構造の革新が一段と加速する見込みです。これに対応するための、IT投資の拡大が続く見込みです。

 世界景気が多少減速しても、第4次産業革命の進展にともない、IT投資は滞ることなく拡大していくことが予想されます。

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