FOMC後はドル高

 7月31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)は0.25%の利下げを決定した。今回のFOMCの決定は8対2で、日本の金融機関の大量のCLO(ローン担保証券)買いに苦言を呈しているボストン地区連銀のローゼングレン総裁やカンザスシティ連銀のジョージ総裁が、政策金利の据え置きを主張して反対票を投じた。

 トランプ米大統領やその側近がパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長に迫っていた0.50%の利下げにパウエル議長が忖度(そんたく)しなかったことや、パウエル議長が会見で「この利下げの本質は、サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」とし、「長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と発言したことから、ドル/円はドル高に振れた。既に今年の大幅利下げを織り込んでいた市場は、利下げ期待の反省に動いたわけだ。

 会見ではその後、パウエル議長が、「利下げは1回だけとは言ってない」、「利下げは1回だけか、継続するか、現時点ではコミットしない」と発言したことで、米ドル安円高方向に振れるなどしたが、市場間の動きはまちまちで、市場はパウエル議長の玉虫色の会見を消化できていないようである。

ドル/円(1時間足)

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ユーロ/ドル(1時間足) 

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ユーロ/円(1時間足)

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ポンド/ドル(1時間足)

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ポンド/円(1時間足)

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

内容の悪い米国株式市場、夏枯れ相場でボラティリティ・ジャンプが起こるか!?

 為替市場は“往って来い”的な動きであったが、今回の0.25%に最も大きく反応したのは米国株市場だ。景気や業績が伸び悩む中で、株式市場は利下げ期待と言う金融相場で上げてきたが、NYダウ平均株価は、パウエル議長が長期緩和サイクルの開始を否定したことを受けて一時500ドル近く下落し、その後、戻したものの、結局333ドル安で引けている。

 先週のレポート(2019年7月25日「なんでもありのトランプ大統領が米単独ドル売り介入をするという観測が浮上!?」)に「7月31日のFOMCでの利上げ幅について、利下げ幅が0.5%だとか0.25%だとか外野がうるさくなっている。今の相場は利下げ期待だけで上げているから、そういう議論になるのだ。筆者の独断と偏見による意見を言えば、0.5%でも0.25%でも株は売られるであろう。0.5%なんてやってしまえば、当面金利は下げないので材料出尽くしとなってしまう。0.25%なら催促相場となるだろう。いずれにせよ、株高・ドル高にはなりにくい。ありえないが、仮に利下げを見送れば、失望の株価急落となるだろう。」と書いた。

 米景気指標は悪化の兆しを見せており、NYダウはここから夏枯れ相場の中でボラティリティ・ジャンプが起こってもおかしくない。

NYダウ(日足)

上段:オプションボラティリティ(赤)・MACDの売買シグナル
下段:14日ATR(緑)・MACD
出所:石原順

 高値圏でしっかりはしているが、米国株式市場も決して内容が良いわけではない。S&P500のETF(上場投資信託)投資は低調で、とても強気相場には見えない。

SPY ETFの出来高(15日間の出来高平均)

出所:ゼロヘッジ

 またナスダック総合指数はADラインとのダイバージェンス現象が起きており、相場がかなり疲れている様子がうかがえる。

ナスダック総合指数とADライン

出所:ゼロヘッジ

 市場は今回のFOMCでの利下げを「予防的措置」とか「保険」と称してはいるが、昨日7月31日に発表された7月のシカゴ連銀製造業景況指数は、前月の49.7から44.4に急低下している。7月の水準は2015年12月(42.1)を除けば、リーマンショック以来の低さである。今後、FRBの利下げが保険的なものではなくなる可能性がある。

T-BOND VS FF rate スプレッドの縮小は不景気の到来のシグナルか!?

出所:ゼロヘッジ

今の株式市場は歴史的にどういうレベルにあるか?

出所:ゼロヘッジ

バブル延命も疲れ果てた株式市場

出所:ゼロヘッジ

 いずれにせよ、株価のピークで利下げを行うという前代未聞の政策が市場にどういう影響を与えるのか? 運用者は固唾をのんで注目している。現在のバブルがさらに延命するのか、それともFRBの利下げを契機に株価が調整に向かうのか、今年の8月相場からは目が離せない。

FFレート(米政策金利)の推移とバブルの崩壊

出所:ゼロヘッジ

2019年の米国株相場は1998年と似ている

 今後の米国株市場はどうなるのだろうか? 運用者の間では周知の事実だが、2019年の米国株式相場は1998年の米国株式相場と相似しており、1998年の相場をなぞる形で進行している。1998年相場が2019年相場の先行指標となっているのである。

 これはチューダーファンドが昔よく使っていた「アナログモデル」という相場の将来予測方法である。今後もこの通り動くわけではない。しかし、8月の米国株式市場はヤバイという声が多い。

2019年(黒)と1998年(青)のS&P500の推移

出所:ゼロヘッジ

2019年のS&P500相場(上段)と1998年のS&P500相場(下段)

出所:石原順

1998年のS&P500相場は8月と10月のダブル底

出所:石原順

為替市場はポンド相場に投機筋が群がっている

 ポンド/ドル相場は200日移動平均を上回るまでは、ストキャスティクス5.3.3の売りシグナルだけに従う戻り売りのスタンスで良いだろう。これは逆張りの話である。

ポンド/ドル(日足)フィルター付逆張り売買

上段:200日EMA・売買シグナル
下段:ストキャスティクス5.3.3
出所:石原順

 ポンド/ドル相場は、ここにきて順張りでも収益が上がる相場になっている。投機筋がポンド相場に群がっており、合意なき離脱に向けて2019年後半は大きなトレンドが発生しそうだ。

ポンド/ドル(週足)

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ポンド/ドル(日足)

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ポンド/ドル(4時間足)

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ポンド/ドル(1時間足)

上段:ATRチャネル
中段:トレンドサイクル
下段:トレードゾーン(赤=買いトレンド・黄=売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター