投資家調査にみる外国株に対する興味の高まり

 今週の米国市場では、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言を受けた金融緩和期待を受け、S&P500指数やナスダック総合指数は再び史上最高値を更新しました(10日)。日本市場では、日米金利差縮小観測を背景にしたドル安・円高観測が根強く、日経平均は上値の重い動きとなっています。

 こうしたなか、日本の個人投資家の興味は外国株式(海外市場)に向かっているようです。楽天証券では毎月「楽天DI」と呼ぶ個人投資家調査を実施。「今後、投資してみたい国(地域)」に関する回答を毎回集計しています。

 図表1は、6月調査の結果を一覧したものです(約3千900人の回答を集計)。特徴としては、

(1)前月比の変化で「日本」のみが減少し、外国(地域)は全て増加
(2)ランキングの1位は米国、2位はインド、日本は3位に沈んだ
(3)米国は前年同月比で10.4%増加し、日本は14.1%も減少した

 などが挙げられます。2018年の半ごろまでは、「日本」と回答した人の割合が「米国」より高位でしたが、年後半に逆転し「今後、投資をするのであれば日本」と考える投資家の割合は減少。中国の景況感鈍化や米中貿易摩擦を巡る不安が拭えず、米金利低下がドル安・円高を誘発しかねない外部環境が影響していると思われます。

<図表1>個人投資家の「今後投資してみたい国」で日本は3位に沈んだ

出所:楽天DI(個人投資家調査/2019年6月<約3900人回答>)より楽天証券経済研究所作成

日本株を凌ぐパフォーマンスの外国株を知る

 実際、日本株のパフォーマンスは外国株と比較して劣勢を続けています。図表2は、ブラジル、インド、米国、中国の株価指数と日本のTOPIXについて、2018年初を100として比較したものです。

 昨年も今年前半もブラジル、インド、米国の株価指数が史上最高値を更新した一方、日本株は「中国株の低調」にお付き合いを余儀なくされている印象です。事業のグローバル化を推進してきた日本企業は、程度の違いはあれ「外需拡大のコア」として中国にコミットしてきました。

 したがって、経済成長率が減速傾向を辿るなか、米中貿易戦争の余波が中国向け設備投資や部材需要の鈍化を介して業績見通し不透明感に繋がっています。

 加えて、米金融政策がハト派に転換したことによるドル売り・円買い(円高)観測が根強いことも不安要因とみなされています。10月の消費税引き上げがほぼ決定したこと、東京五輪開催に向けた特需(建設需要)減退なども視野に入れると、外国人投資家の長期資金も日本株の買い越しに転じにくい印象があります。そもそも10年連続で総人口が減少(10日に総務省発表)し、日本の成長期待は相対的に鈍化しています。

 一方、大統領選挙や下院総選挙を経て「構造改革期待」が高まっているブラジルやインドは総人口が伸び続け、株式指数は昨年も本年前半も史上最高値を更新しました。

 日本だけでなく、先進国市場では「最強のイノベーション(技術革新)と政治経済」を誇る米国、新興国では「総人口で世界最大の民主主義・資本主義国」であるインド、約13年の社会主義政権を経て「構造改革期待が高まっている世界有数の資源国」ブラジルが有望と考えられます。

<図表2>ブラジル、インド、米国の株式パフォーマンスが優勢に

*ブラジル株=ボベスパ指数、インド株=SENSEX指数、米国株式=S&P500指数、中国株式=上海総合指数、 日本株式=TOPIX、*上記は2018年初を100として各指数の推移を比較したものです。 出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019/7/10)

2,300円程度で外国株式に分散投資できる

 日本を除く海外株式(外国株式)に分散投資するにはETF(上場投資信託)を活用するのが便利です。

 図表3で、日本居住者が円で売買ができる東証上場の海外株式連動型ETFを参考例として示しました。下記したファンドの全てが、楽天証券が「0円ETF」と呼ぶ売買手数料無料のETF(計86本)に含まれています。

 ETF取引価格を年初来騰落率の降順で並べると、1位の中国株式に分散投資する「上海株式指数・上証50連動型投信」(1309)、2位の米ナスダック100指数に連動を目指す「NEXT FUND NASDAQ100連動型」(1545)、3位のロシア株式に分散投資する「NEXT FUND NASDAQロシア株式指数連動型」(1324)の上昇率が2割以上となっています。

 ロシアは、プーチン大統領がウクライナ問題を巡る欧米からの経済制裁を契機に、地方の農業開発を促進し「農産物の自給自足」を進めてきました。その結果、一部穀物の輸出額で世界最大国となるなどし、経常収支や財政収支が改善。その結果、S&Pやムーディーズといった格付け会社が、ロシアのソブリン債(国債や政府機関債)の信用格付けを「Investment Grade」(投資適格級)に引き上げました。

 こうしたファンダメンタルズ改善を受け、為替市場では通貨ルーブルが年初来堅調に推移。資源市況回復も追い風となり、ロシア株式(例:MOEXロシア指数)は昨年に続き今年も史上最高値を更新しました。なお、米国株や日本を除く先進国株に分散投資できるETF(1655や1657)の最低投資金額が2,300円程度であることにも注目したいと思います。

<図表3>海外株式連動型ETF(東証上場)<参考情報>

コード ETFの名称 ベンチマーク 運用
総額
取引
価格
取引
単位
年初来
騰落率
1309 上海株式指数・上証50連動型上場投信 中国上海50指数 44.8 33,050 1 28.6
1545 NEXT FUNDS NASDAQ100連動型 米ナスダック100指数 52.2 8,730 10 23.7
1324 NEXT FUNDS ロシア株式指数連動型 ロシアRTS指数 15.0 139 100 23.0
1655 iシェアーズ S&P500 米国株ETF 米S&P500指数 44.9 2,325 1 17.4
1550 MAXIS 海外株式(MSCIコクサイ)上場 MSCIコクサイ指数 87.4 2,413 10 16.5
1657 iシェアーズ・コア MSCI先進国株(除く日本) MSCI先進国
(日本除く)
72.2 2,194 1 16.1
1325 NEXT FUNDSブラジル株式連動型 ブラジルボベスパ 33.1 225 100 15.4
1546 NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株 米ダウ工業株30種 70.0 29,050 1 15.3
1678 NEXT FUNDSインド株式連動型 S&P NCX Nifty 58.4 163 100 7.9
1658 iシェアーズ・コア MSCI新興国株ETF MSCI新興国株 36.0 1,899 1 7.0
*単位 運用総額:億円 取引価格:円 取引単位:口数 年初来騰落率:% *ETFの名称(一部は略称)
*楽天証券では上記ETFは全て「無手数料(0円)ETF」です(7月11日時点)。 *上記は年初来騰落率の降順に示した一覧表です。 *上記は参考情報であり特定の銘柄を推奨する目的のものではありません。 出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019/7/11)

 

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