米中貿易戦争がいったん休戦に向かう期待が生じる
1日の日経平均株価は、前週末比454円高の、2万1,729円と大きく上昇しました。先週末に実施されたG20大阪サミットで実施された「米中首脳会談」が、ポジティブな内容であったことを好感し、電機・機械などの景気敏感株に買い戻しが広がりました。
米中首脳会談で、以下が好感されました。
【1】米中が貿易協議の再開で合意したこと。
【2】米国が、対中国の追加関税を発動しないと決めたこと。
さらに、ポジティブ・サプライズとなったのが、首脳会談後の記者会見でトランプ大統領が
【3】中国通信大手ファーウェイへの禁輸解除に言及したこと、です。
これを受けて、米中の貿易戦争がいったん休戦に向かうとの期待が出ました。これ以上、対立がエスカレートすると、米景気まで悪化する不安がありました。ぎりぎりのタイミングで米中休戦の芽が出てきたことを、株式市場は素直に好感した形です。
1日に発表された6月の日銀短観では、製造業の景況が悪化
1日朝8時50分に発表された6月の日銀短観では、大企業・製造業DIが2期連続で低下しました。大企業・非製造業DIは上昇しました。製造業と非製造業で明暗が分かれました。
日銀短観、大企業製造業・非製造業DIの推移:2012年3月~2019年6月
大企業・製造業DIは「+7」まで低下しました。ただ、2期連続で低下したとは言っても、マイナスになったわけではありません。まだ、プラス圏なので悲観すべき水準ではありません。
逆に、大企業・非製造業DIは、+21から+23へ小幅改善しています。水準も「+23」と高いところにあります。非製造業は、好調が続いていることが確認されました。
非製造業の景況が好調で、製造業の景況が悪化しているのは、米国も同じです。5月までの米国のISM景況感指数の動きは、以下の通りです。
米ISM製造業・非製造業景況感指数の推移:2014年1月~2019年5月
7月中旬から本格化する4-6月期決算発表に注目
7月初に発表される6月の日銀短観DIは、7月中旬から本格化する4-6月期決算の先行指標として注目しています。なぜならば、6月に企業経営者が足元の景況感について回答した結果が、6月のDIだからです。4-6月の企業業績を踏まえながら、DIアンケートに回答することが多いと考えられます。したがって、4-6月の企業業績の先行指標となることが多いわけです。
実際、過去には6月の大企業DIが4-6月期企業業績の先行指標であったことが多かったと言えます。同様に、9月の短観DIは7-9月企業業績の先行指標となることが多く、12月のDIは10-12月期、3月のDIは1-3月期企業業績の先行指標になることが多くなっています。
今回発表された6月の日銀短観DIを見る限り、日本の企業業績は、まだそれほど悪化しているわけではなさそうです。4-6月の決算発表では、製造業の業績がやや低下している可能性がありますが、通期(2020年3月期)の業績予想の下方修正がどんどん出るような状況ではありません。
非製造業の景況は、堅調であったことが、確認されました。内需関連は、そんなに悪くなっていない見込みです。ただし、消費増税を控え、小売業の景況感は低くなっています。
参考までに、6月短観でDIが高かった業種と低かった業種を挙げると、以下の通りです。
6月の日銀短観、大企業・製造業でDIが高かった業種と、低かった業種
6月の日銀短観、大企業・非製造業でDIが高かった業種と、低かった業種
日本株は買い場の判断を継続
東証一部の平均PER(株価収益率)は約13.5倍、平均配当利回りは約2.5%です。日本株は、PERや配当利回りなどの株価指標で見て、割安と判断しています。
今期の企業業績(会社予想)がこれから大幅に下方修正されるのでない限り、日本株がPERで割安な状況は変わりません。日本株は、買い場との判断を継続します。
米中貿易戦争がいったん休戦に向かう前提にたてば、2020年に世界景気の回復が見込まれます。貿易戦争がさらにエスカレートするリスクもありますが、割安な株価を勘案すれば、日本株の投資を増やしていって良いと判断しています。
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