前回は、「出遅れ銘柄」のメリットとリスクについて解説しました。今回はそれらを理解したうえで、実践ではどのように落とし込んでいくのか、過去の事例も参考にしながらご説明します。

最近は「同業種内の出遅れ」も業種により対処法が異なる

前回のコラムでは、同業種内の出遅れ銘柄として、相場活況局面での証券株、底値圏からの立ち上がり局面での不動産株、その時々のテーマ株(初期アベノミクス相場であればバイオ関連株)について例示しました。そして、これらの銘柄への新規投資については、まだ株価が大きく上昇していなければそれほどリスクは高くならないとご説明しました。

なぜなら、例えば証券株でいえば、「相場活況」→「売買代金急増」→「証券会社の手数料収入増」→「証券会社の業績改善」という連想により、いわば業績改善の先回り買いがされるからです。

実際に業績が発表されたとき、証券会社により業績が異なり、それに従って株価はまちまちの反応を示すことになりますが、まだ業績発表前の理想買いの段階ではあまり心配することもないでしょう。

上記の連想式により、「証券株=買い」という判断をマーケットが下した結果、証券株が一斉に上昇し、上昇トレンドになれば、その流れに乗っていればよいだけです。

そして、理想買いの段階は業績がまだ伴っていないのでいつ株価が下落に転じるか分かりません。そのため、株価が既に大きく上昇している銘柄ではなく、まだあまり上昇していない銘柄を選ぶことが、株価が下落に転じた場合のリスクヘッジにもなります。

「出遅れ」を買うことが有効にならないケースも増えている

同業種内の出遅れといっても、それらの銘柄の株価が上昇する前に先回りをして買う、という戦略が有効とはならないケースも増えてきています。例えば、電機株や鉄鋼株、食品株などです。ひと昔前は、例えば「日立製作所(6501)東芝(6502)三菱電機(6503)」は、似たような動きをしていたものです。それが最近では、東芝の問題を差し引いたとしても、銘柄ごとにかなり動きが異なっています。「プリマハム(2281)丸大食品(2288)」にも同様のことが言えます。これらは、最近の相場は例え同業種といえども、業績いかんにより株価が形成されているという健全性の表れかもしれません。

また、前回ご説明した不動産株も、出遅れ銘柄への買いが有効なのは、不動産株全体が底値から一斉に立ち上がったようないわば「理想買い」の局面のみです。現在の相場のように、理想買いの局面がとっくに終わり、一旦不動産株全体の底上げが起こったあとは、実際の業績に連動して株価が動きます。単純に「出遅れ」=「買い」とはならない点には注意です。

業績の伴わない銘柄を先回り買いすることの是非

前回で触れた初期アベノミクス相場におけるバイオ関連株もそうだったのですが、バブル相場など、株価が大きく上昇する素地を備えている相場では、企業の業績に関係なく株価が変動します。つまり、業績が悪かろうと、株価だけが大きく上昇するケースが今も結構見受けられます。

筆者自身、現在の日本株は、もちろんファンダメンタルも有効であるが、それ以外の要素(つまり需給)で株価が動くことが大きいため、株価チャートで株価のトレンドを確認したうえで売買することの重要性がさらに増していると思います。

また、バブル相場をうまく利用するならば、例え業績が伴っていなくても、新興市場銘柄でまだ株価が反応していないものを複数手に入れて、株価急騰を待つという戦略も当然考えられます。もちろん株価が急騰するかどうかは分かりませんし、業績が悪い銘柄ですから決算発表をきっかけに株価が急落する可能性もあります。

それでも、株価がすでに大きく上昇した銘柄(特に業績が伴っていないもの)を今の時点から新規買いして高値掴みする可能性を考えれば、リスクは相対的に低いと筆者は思います。

初期アベノミクス相場でも、本格上昇のスタート時期は銘柄によりまちまちだった

今でも思い出すのが、2012年11月中旬から2013年5月下旬までの、いわゆる初期アベノミクス相場です。この時期はとにかくほとんどの銘柄の株価が大きく上昇し、よほど高値掴みなどしなければ、誰もが簡単に大きな利益を上げることができた時期でした。

でも、この初期アベノミクス相場をよく観察すると、銘柄によって本格的な上昇がスタートした時期が異なることに気がつきます。

例えば、11月中旬以降株価が大きく値上がりしたのは銀行株、証券株、不動産株などでした。この間、バイオ関連株など新興市場銘柄などはあまり大きく値上がりしなかったのです。新興市場銘柄が本格的に上昇したのは、実は2013年1月下旬になってからです。

こうした過去の事実を踏まえると、現時点では出遅れている業種ないし銘柄であっても、今後株価が本格的に上昇する可能性も大いにある、ということです。

もちろん、2000年前後のITバブルの時のように、特定の業種・銘柄以外は全くと言ってよいほど上昇しないケースもあります。したがって、最低でも下降トレンドの間は新規買いをしないようにして、時流から外れた銘柄をつかまないよう気を付けましょう。

「出遅れ銘柄」に投資する際の具体的な対処法は?

このように、株価があまり上昇していないことをもって、「出遅れ銘柄」であると一概には言えない、下手をするとそこからさらに株価が下がることもある、という点をご理解いただけたでしょうか。筆者は「出遅れ銘柄」に見える銘柄を新規買いしようとする際、次のような手法を用いています。

大原則として、どんなに「出遅れ」に見えても、株価が下降トレンドにある間は新規買いをせず、静観します。

また、足元の相場では、特に新興市場銘柄を中心に、業績がそれほど良くないにもかかわらず株価が大きく上昇する銘柄が目立ちます。そうなると、まだ値上がりしていない銘柄に先回りの買いを入れたくなるものですが、この時も注意が必要です。業績の伴っていない銘柄については、決算発表等をきっかけとして、株価が大きく値下がりしてしまう恐れがあるからです。

そこで、好業績が期待できる銘柄以外の銘柄を買う場合は、決算発表がすでに終わったものから優先的に買い候補を探すようにしています。

以上を踏まえると、「好業績の続いている銘柄」が「上昇トレンド」にあるときに買う、「業績がそれほどよくない銘柄」の場合は「決算発表通過後」かつ「上昇トレンド」にあるときに買う、というのが「出遅れ銘柄」を買う際のポイントとなります。

もちろん、買った後で株価が下落して下降トレンドに転じたら、保有株はいったん売却するのが大ケガをしないためには重要です。