消費増税前の駆け込みはNG?

 消費税の税率が10%になる日がだんだんと近づいてきました。

「10%になる前に買いだめしておかなくちゃ!」「高い買い物は今のうちに!」という声もチラホラ聞こえてきます。

 家族7人の家計を切り盛りする筆者も、可能な限り「安く買い物をしたい!」と願う1人ではありますが、消費増税前には実は「買ってはイケナイ」のです。この3つのワケをお話しします。

「増税前」vs.「増税後の10%OFF」どちらがトク!? 

 住宅や車、家電などの高額なものは2%の増税分が大きく感じることでしょう。ですが、増税前の駆け込み需要を見込み、実は値下げされないことが考えられます。逆に増税後は買い控えを懸念し、セールの実施や値下げ交渉に応じてくれるということがある可能性があります。

 10%の消費税になると、どうしても「10」のインパクトが強いため、購買欲を促すために、10%OFFセールが行われることが考えられます。そこで、増税後に「10%値下げされたら」でシミュレーションしてみましょう。

増税前 100万円のものを買った→100万円×消費税8%=108万円(税込み)

増税後 100万円のものが10%引き→100万円の10%引き×消費税10%=99万円(税込み)

 10%引きの場合、増税後でも9万円も安いということになります。

 さらに、2%以上割引してもらえるなら増税後でも、実はお得になります。増税後の買い控え対策として、各店舗ポイント還元などのキャンペーンが行われる可能性もあります。特に高額商品などについては決算前の割引も大きいことが予想されます。増税前に慌てて買う必要はないでしょう。

価格(円) 10,000 15,000 100,000 1,000,000 10,000,000
増税前税込み価格(円) 10,800 16,200 108,000 1,080,000 10,800,000
消費税10%で右記の割引があった場合の税込み価格(円) 1% 10,890 16,335 108,900 1,089,000 10,890,000
2% 10,780 16,170 107,800 1,780,000 10,780,000
3% 10,670 16,005 106,700 1,067,000 10,670,000
4% 10,560 15,840 105,600 1,056,000 10,560,000
5% 10,450 15,675 104,500 1,045,000 10,450,000
6% 10,340 15,510 103,400 1,034,000 10,340,000
7% 10,230 15,345 102,300 1,023,000 10,230,000
8% 10,120 15,180 101,200 1,012,000 10,120,000
9% 10,010 15,015 100,100 1,001,000 990,000
10% 9,900 14,850 99,000 990,000 9,900,000

増税がなくても欲しいですか?

 ところで、8%に増税前の駆け込み需要が以前も話題になりました。それは本当に欲しかったものでしょうか。例えば、値引きされないブランド品は「増税前に買っておこう!」などと考えるかもしれません。ですが、増税を理由に買おうとする物であれば、本当はしないはずの支出です。単なる無駄遣いになりますので、よく考えることが大事です。

 さらに、増税されようが、されまいが、絶対に買わなくてはいけない日用品や消耗品、カウンセリング化粧品は通常は割引もなく、「どうせなら増税前に買っておこう!」と必要以上に買いだめするとどうなるでしょうか。この場合も、在庫過多になり消費しきれなかったり、雑に使ったり、少し余ったまま捨ててしまったとしたら、増税分より損することになりかねません。内容量の2%無駄にしたら、2%の増税分より損です。きちんと残さず使うこと、きちんと計って使うことの方が増税前の買いだめより、節約効果があります。

減税措置で消費税10%でも安くなる!?

 消費増税後の買い控えを懸念し、政府は4つの減税制度の導入を決定しています。この制度について、説明します。

1:家計お助け「軽減税率制度」

今回の消費増税は消費税が一律10%になるわけではなく「軽減税率制度」が導入されました。
酒類、外食を除く飲食料品と、定期購読契約がなされた週2回以上発行される新聞
は8%のままとなります。
食料品についてはほとんどが8%と今までと変わりませんが、酒類、外食は10%となります。増税分を節約したいと考えるなら、少し工夫が必要です。
例えば、酒類、外食に月2万円かかっているなら、2%分は400円です。月1日禁酒デーにすると、ちょうどよいかもしれませんね。
新聞については上記については8%のままということになりますが、この機会に本当に必要かどうかを見直してみるとよいでしょう。

2:住宅購入3つの減税措置

住宅を購入した場合、増税後は以下のように変わります。

(1)「すまい給付金」の対象年収の目安が775万円以下に拡大。給付金額は最大50万円に増額

(2)住宅ローン減税は3年間の期間延長される

(3)住宅取得等資金の贈与の非課税枠が最高3,000万円までに増額される

 消費増税後の減税制度が充実しているので、慌てずに検討しましょう。

 また、適用される消費税率や減税措置は引き渡し時期が9月30日以前になるか、10月1日以降になるかによって決定されますので、注意が必要です。

3:自動車取得税廃止と環境性能割の導入

 自動車については増税後に自動車取得税が廃止され、環境性能割の導入が決定しています。この環境性能割によって、2019年10月1日から2020年9月30日までに自動車を取得した場合に1%減税されます。

 車両登録完了日が2019年9月30日以前になるか、2019年10月1日以降になるかによって自動車取得税と環境性能割、どちらの税率が適用されるかが決まります。2019年9月30日直前に購入した場合、登録申請に時間がかかる可能性がありますので、注意が必要です。

 また自動車も減税措置があるため、買い控え対策の値引きや決算時期の値引きなどの可能性を考えると、必ずしも増税前に買う必要はないと言えます。

4:キャッシュレス決済時のポイント還元

 2019年10月~2020年6月の9カ月間はキャッシュレス決済時に5%(または2%※)分がポイント還元されます。 

※中小小規模事業者の場合5%、大手フランチャイズ店舗の場合2%

 今まで現金払いをしていた方はキャッシュレス決済で、増税分を吸収することができます。対象となるキャッシュレス決済はクレジットカード、電子マネー、QRコード決済です。今まで現金派だった方も、これを機会にキャッシュレス決済を使ってみるといいかもしれません。あれこれ手を出しても管理が大変になりますので、どれか1つ還元率の高い支払い方法を選ぶとよいでしょう。

これが正解!増税前にやるべきこと

 増税前の焦る気持ちはよく分かります。駆け込みで購入するのをあおるような宣伝や広告もあふれているため、買ってしまいそうになりますが、駆け込みで安く買えたとしても一時的なもの。また、増税だからと節約を頑張っても、実は節約というものは頑張れば頑張るほどリバウンドするものです。

 増税前の今、本当になすべきことは次の2つです。

 1つは支出を増やすのではなく、今までと変わらない支出内容のままで、お得な支払方法をすること。キャッシュレス決済など、得する支払方法を採用しましょう。

 もう1つは増税を機会に家計を見直し、無駄に払っている固定費を削減することです。

 詳しくは、こちらのコラム「還元キャンペーン続々!消費増税に負けないスマホ決済『はじめの一歩』」や、こちらのコラム「家計防衛テクニック2019・固定費の10大見直しで年12万円節約する!」をご参考にしてください。
検討するだけでなく、ぜひ実行に移してくださいね。