5月20日~24日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は反落。中東の緊張を背景に小確りとした展開が続いていたが、米中貿易摩擦の悪化による世界的なリセッションへの懸念から投資家心理が冷え込み、リスク回避の流れから原油相場も売り込まれた。また、米国の原油需給の緩みも相場の重石となった。

 週初は堅調だった。トランプ米大統領は、イランが米国に交渉を要請してくるとツイートしたことに対しイランのロウハニ大統領は反論、米国と交渉する意向がないことを明らかにした。脅しには屈しないと強い姿勢を示したことで、両国の緊張が一段と高まり、原油供給に支障が出ることが不安視された。また、石油輸出国機構(OPEC)らによる協調減産継続への期待感も下支え要因となった。OPEC加盟国と非加盟国からなる合同閣僚監視委員会(JMMC)は会合を開き、7月以降も減産継続は主要な選択肢であることを明らかにした。ロシアからは減産緩和の要請があった模様だが、減産幅が縮小したとしても減産継続がメインシナリオであるとしている。これを受け、需給改善への期待が高まった。

 しかし、その後は弱含みの展開へと転じた。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計を受け、米国の原油需給が悪化するとの見方が上値を抑えた。EIA統計によると、原油在庫は減少予想に反して増加した。WTIの受渡拠点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫も増加している。また、ドライブシーズン入りを控えるガソリンの在庫も予想外の増加となり、米国内の原油需給は緩んだ状態が続くとの見方が広がった。

 需給ファンダメンタルズ面から上値を抑えられるなか、米中の通商問題が悪化するとの見方が再燃、株価下落に歩調を合わせて急速に値を崩す展開となった。米政権は、中国通信機器大手ファーウェイとの取引を原則禁じる制裁措置を打ち出した。これに続き、中国監視カメラ大手ハイクビジョンに対しても禁輸措置を検討しているという。米国による輸出規制が強まることで、世界的に経済成長が鈍化し、原油需要が伸び悩むとの見方が広がった。また、中国も報復に動く可能性があり、両国の貿易摩擦の長期化、それに伴う世界的なリセッションが連想された。市場参加者の多くが悲観的シナリオを描いており、投資マネーの動きはリスク回避へとシフトした。世界景気の先行き不透明感から安全資産とされる債券や金などを買う動きが強まる一方、株式市場は売り物が集まり大幅下落、投資家心理の冷え込みはリスク資産の一角とされる原油相場にも波及し、株安に追随して売り込まれた。

 内部要因やテクニカル要因などからも売りが出た。メモリアルデーに伴う3連休を控え、ポジション整理が進みやすい地合いにあるなかで、節目の60ドルを割り込んだため、投げ(買い方の損失確定の手仕舞い売り)が促されたとみられる。直近の下げ局面において、60ドルを割り込むには至らなかった経緯もあり、同水準がサポートとして強く意識されていた。それだけに、同水準割れは失望感を強め、売りが売りを呼ぶ展開に発展して下げ幅を拡大した。

 中東不安はあるとはいえ、投資マネーの動きがリスクオフを選択しているだけに、投資家心理に改善の兆候が出てくるまでは上値の重い商状が見込まれる。投げが出尽くしたとの判断も早計であり、もう一段の下げも念頭に入れておくべきだろう。米中関係に何らかの進展があって、株価が戻してくるまでは、軟調な展開を強いられる公算が大きい。

今週の予想

  • WTI    やや弱め 56.00-61.00ドル
  • BRENT    やや弱め 66.00-71.00ドル

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