日本株は配当利回りから見て割安と判断

 日本株は、配当利回りや、PER(株価収益率)などの株価指標で見て、割安と判断しています。長期投資で、資産形成に貢献する投資対象と考えています。

日本の長期金利(10年もの新発国債利回り)と東証一部予想配当利回りの推移:1993年5月~2019年5月(22日まで)

注:楽天証券経済研究所が作成

 1993年当時、長期金利が5%あった時、東証一部配当利回りは1%未満でした。この時、長期国債は割安で、日本株は割高でした。ところが、2019年5月22日時点で、長期金利はゼロ近くに低下しましたが、配当利回りは2.6%まで上昇しています。今は、長期国債が割高で、日本株が割安と判断しています。

5万円から始める好利回り株投資

 日本株は、配当利回りから見て割安で、長期投資対象として魅力的と考えています。ただし、銘柄選択は大切です。人気株に飛び乗って高値づかみとなり、株価が急落すると大きな損失をこうむることもあります。

 これから日本株への投資を考える初心者は、日経平均に連動するインデックスファンドや、5万円以下で買える株への小口投資から始めたらいいと思います。一度に大きな金額を買うのではなく、毎月一定額を買い付けるなど、堅実に投資を増やしていく買い方が良いと思います。

 そこで、今日は、5万円以下で買える好配当利回り株をご紹介します。

スーパースクリーナーを使って銘柄選択

 楽天証券HPでは、さまざまな条件を指定して、その条件に合った銘柄をスクリーニング(抽出)する「スーパースクリーナー」というツールを提供しています。スーパースクリーナーの使い方は、以下をご参照ください。

「スーパースクリーナーを使った銘柄分析方法を動画で解説」

 今日は、スーパースクリーナーを使って選ぶ、5万円以下で投資できる好配当利回り株を、ご紹介します。以下の手順で絞り込みます。

5万円以下で買える599銘柄を抽出
 まず、東証一部、二部、東証マザーズ、ジャスダック、名証に上場する銘柄について、「投資金額5万円以下」の条件を指定すると、599銘柄が出てきます。この599銘柄が、5月22日時点で、最小投資単位が5万円以下の銘柄です。

5万円以下で買える、予想配当利回りが3%以上の37銘柄を抽出
 さらに、「配当利回り(予想)が3%以上」という条件を加えると、銘柄数は、一気に37まで減ります。これが、5万円以下で買える配当利回り株の候補となります。

さらに時価総額321億円以上に絞り込み、証券業を除外し、22銘柄を抽出
  時価総額が小さい銘柄は配当が安定しない場合もあるので、時価総額上位26銘柄(時価総額321億円以上)に絞り込むと、26銘柄が得られます。この26銘柄には、証券会社が4社(野村HD・大和証券グループ本社・東海東京フィナンシャルHD・マネックスグループ)入っていますが、私は証券会社の投資判断を述べることはできませんので、この4社を除外します。

 すると、以下の22銘柄が抽出されます。

5万円以下で買える予想配当利回り3%以上、時価総額321億円以上の22銘柄(証券業は除外):2019年5月22日時点・時価総額の大きい順に表示

出所:楽天証券スーパースクリーナー。「現在値」は5月22日終値。「投資金額」は5月22日終値で最小投資単位(100株)を買うのに必要な金額

 配当利回り(予想)は高ければ高いほど良いというわけではありません。なぜならば、株の配当利回りは、確定利回りではないからです。業績が悪化して、減配(1株当たり配当金を減らすこと)になり、株価が下がることもあります。好配当利回りを選別する時は、なるべく減配リスクの低い銘柄を選ぶべきです。

私が投資したいと考える7銘柄で組んだポートフォリオの利回りは4.4%

 スクリーニングで選んだ銘柄に、機械的に投資するのは得策とは言えません。配当利回りが高めの銘柄には、将来、減配になるリスクもあるからです。ここから、さらに絞り込む必要があります。

 私は、1987年から2013年まで、日本株ファンドマネージャーをやっていました。私がもし今、ファンドマネージャーならば買いたいと思う銘柄は、このリストの中に6銘柄あります。

 それに、番外編として1銘柄(8306三菱UFJ FG)を追加して7銘柄として、最低投資額(100株)ずつ組み入れて作ったポートフォリオを以下に示しています。7銘柄すべて買うと、投資金額は約27万円で、ポートフォリオの予想配当利回りは4.4%となります。

筆者がファンドマネージャーならば買ってみたい7銘柄

【金額単位:円】
コード 銘柄名 配当
利回り
業種 最低
投資額
2768 双日 4.8% 商社 36,000
4005 住友化学 4.5% 化学 48,900
6480 日本トムソン 3.4% 機械 43,700
8306 三菱UFJ FG 4.9% 銀行 51,000
8410 セブン銀行 4.3% 銀行 28,700
8411 みずほFG 4.8% 銀行 15,760
9412 スカパーJSAT HD 4.3% 情報通信 41,900
合計 7銘柄に100株ずつ投資 4.4%   265,960
出所:楽天証券スーパースクリーナーより楽天証券経済研究所が作成
 三菱UFJ FGは、5月22日の株価が510円で、100株投資するのに、5万1,000円かかるので、スクリーニングに出てきませんでした。ただし、配当利回り4.9%で、ほぼ5万円で買えるので、リストに加えさせていただきました。

投資したいと考える7銘柄のコメント

双日(2768)

 新興国を中心に世界で稼ぐビジネスモデルを確立していると評価しています。2019年3月期の純利益は、前期比24%増の704億円と、2期連続で最高益を更新しました。石炭価格上昇で資源事業の利益が伸びました。資源事業への依存が高いことはリスクですが、近年、自動車や航空機、リテール生活産業などの非資源事業の利益も伸ばしてきたことが評価できます。今期(2020年3月期)の純利益について、会社は2%増の720億円と3期連続の最高益更新を予想しています。

住友化学(4005)

 高付加価値のスペシャリティ・ケミカルで稼ぐビジネスモデルを確立していると評価しています。医薬品、電子材料、農薬、機能材料などスペシャリティ・ケミカルがコア営業利益に占める比率が75%まで上昇しています。業績は今、踊り場となっています。

 前々期(2018年3月期)の営業利益が2,509億円と最高益でしたが、前期(2019年3月期)の営業利益は27%減の1,829億円でした。今期(2020年3月期)の営業利益について、会社は4%増の1,900億円を予想しています。まだ、利益回復は鈍いと言えます。ただし、来期(2021年3月期)には、有機EL部材や電池材料の拡販などで、さらに利益回復が進むと予想しています。

日本トムソン(6480)

 半導体製造装置、工作機械、建設機械、産業用ロボットなどの要素部品として不可欠な直動案内機器、リニア軸受で高い競争力を有します。前期(2019年3月期)は、半導体製造装置、工作機械向けの直動案内機器が全世界で好調で、営業利益は前期比84%増の48億円となりました。ところが、今期(2020年3月期)は、業績が急速に悪化する見込みです。米中貿易摩擦などの影響を受けて世界的に設備投資を抑える動きが広がるため、会社は今期営業利益は35%減の32億円になると予想しています。

 ただし、私は業績悪化は一時的で、米中貿易戦争がエスカレートしなければ、来期(2021年3月期)以降に、業績は回復局面に入ると予想しています。同社株価は既に業績悪化を織り込んで、昨年の高値(1,057円)対比で半値以下の437円まで下がっています。ここからは、来年以降の回復を見込んで、投資して良いと判断しています。

三菱UFJ FG(8306)および、みずほFG(8411)

 三菱UFJはPBR 0.4倍、みずほはPBR 0.45倍まで売り込まれています。日本が金融危機にあった1998~2002年の大手銀行株よりも低いバリュエーションとなっていますが、私は売られ過ぎと判断しています。

 両社とも、国内商業銀行業務の収益低下が懸念されますが、海外展開、ユニバーサルバンク経営(信託、証券、リースなどへの多角化)で安定的に高収益を稼いでいく力があると判断しています。海外展開で先行している三菱UFJの方がみずほより投資魅力が高いと考えています。より詳しい説明は、このレポート末尾にある「もっと読む!著者おすすめのバックナンバー」で紹介しているレポートを参照してください。

セブン銀行(8410)

 収益の大半を、提携金融機関からのATM利用手数料で稼いでいます。2018年3月期までは、セブンイレブンの出店拡大に伴う設置ATMの増加によって、安定的に最高益を更新してきました。ところが、国内でのコンビニ出店が飽和に近づき、ATM利用手数料の成長余地は縮小。

 代わって海外事業や決済口座事業の拡大によって、収益拡大をはかっています。米国では、セブンイレブン全店舗へのATM設置を完了。ところが、前期(2019年3月期)は、米国とインドネシア子会社の収益が想定以下で固定資産の減損が発生したため、純利益は48%減の132億円と落ち込みました。

 今期(2020年3月期)の純利益は、会社では前期比102%増の267億円と再び最高益更新を見込んでいます。米国でのATM利用拡大によって米国事業の黒字化が視野に入るなど、明るい兆しが出ています。米国で、セブンイレブンはさらに店舗拡大が期待され、セブン銀行も米国事業が黒字化すれば、セブンイレブンとともに利益を拡大していく余地が高まります。

スカパーJSAT HD(9412)

 有料多チャンネル放送「スカパー」と、衛星通信事業を行うJSATが統合してできた会社。スカパーは、競合激化で加入者が減少し、収益は低迷が続いています。一方、北米上空からインド洋上空まで計17機の人工衛星をも所有する衛星事業が安定収益源となっています。前期(2019年3月期)の営業利益156億円のうち、131億円を宇宙事業で稼いでいます。
  スカパーはこれからも収益低迷が続くと見ています。ただし、衛星事業の収益に依存した好配当利回り株として投資していくのは、問題ないと考えています。

 

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