昨年夏ごろからパラジウム相場が一段と騰勢(とうせい)を強めています。2019年2月末時点で、昨年末比で25%、昨年8月比で60%上昇。また、年初から反発色を強めた原油は昨年末比で26%上昇。その他、石油製品のガソリンや暖房油、金属のニッケルも年初から20%以上、上昇しています。

 ここ数カ月間のこれらの銘柄の価格動向には目を見張るものがありますが、コモディティを長期投資の対象とするかどうか、という立場に立てば、過去の歴史的な価格に比べて高いのか? 安いのか? 高いのであればどれくらい高いのか? 安いのであればどれくらい安いのか? を考えることが、重要であると筆者は考えています。上述の銘柄を含め、同内容の前回のレポート「不確実性が高まっている今、長期的視点で見守りたいコモディティ銘柄5つ」 で取り上げた、金属、石油関連、農産物、合計28のコモディティ銘柄について、改めて、現在の値位置が長期的にみてどのような位置にあるのかを確認してみたいと思います。

 

原油、パラジウムなどが足元、反発色を強めている

 先述のとおり、足元、原油とパラジウムが騰勢を強めています。以下は2018年1月末から2019年2月末までのパラジウムと原油の価格推移です。

 

  2つの共通点は、2018年12月末以降、騰勢(相場が騰貴する傾向)を強めている点です。以下は、筆者が選定したコモディティ28銘柄における、2018年12月末と2019年2月末の価格の変動率を示したものです。パラジウムと原油の変動率は28銘柄中1位と2位です。

 しかし、現在騰勢を強めているからといって、今後もそうだとは限りません。さまざまな要因によってそれぞれの価格は毎日変動しています。長期的な視点で値動きを考える上では、その足元の価格が過去の歴史的な価格に比べてどの程度の水準なのか? という点を確認することが重要です。

長期的視点では、リーマン・ショック直後の安値と比較して大きな変動がないことが重要

 以下は、コモディティ銘柄を長期投資の対象として検討する上で、筆者が重要だと考える点です。 

 

 リーマン・ショック直後の安値にどのような意味があるのか? という点については、以前のレポートの「不確実性が高まっている今、長期的視点で見守りたいコモディティ銘柄5つ」の「リーマン・ショック直後の記録的な安値を、“新たな時代のスタート地点”と考える」の項で触れています。

 28のコモディティ銘柄における、リーマン・ショック直後の安値と定時点の価格との比較は以下のとおりです。

 

 上記は前回のレポート執筆時に示したリーマン・ショック直後の安値と2018年10月末を比較したもの、下記はリーマン・ショック直後の安値と2019年2月末を比較したものです。

 

 前回のレポートで注目した赤枠の砂糖、カカオ、天然ゴム、プラチナ、コーヒーの5銘柄の足元の価格は、2018年10月末でも2019年2月末でも、リーマン・ショック直後の安値に近いことが分かります。

 「勢いを伴って今まさに上昇している銘柄(例えばパラジウムや一部の金属)」と「歴史的な安値付近で推移している銘柄(例えば砂糖などの5銘柄)」という分類が、長期投資を前提としたコモディティの銘柄の選定において重要だと筆者は考えています。

以前に触れた5つの銘柄はサポートラインとして機能してきた長期的な安値水準を維持

 足元、歴史的な安値付近で推移する5銘柄の具体的な値動きは以下のとおりです。

 

  この5つの銘柄には、以下の2点の共通点が挙げられます。

1.足元の価格がリーマン・ショック後の安値に近い

2.リーマン・ショック直後の安値水準が、これまで何度も価格の反発のきっかけとなった(長期的な価格のサポートラインとして機能してきた)

 勢いを伴って上昇している銘柄においては、これまで上昇してきた値幅が今後の下げ余地(つまりリスク)となっていると言えます。

 一方、現在、歴史的な安値付近で推移し、かつその安値が長期的な価格のサポートラインとして機能してきた銘柄は、比較的、今後も価格は底固く推移する可能性があると筆者は考えています。

 今後も長期的な視点で、砂糖、カカオ、天然ゴム、プラチナ、コーヒーの5銘柄の値動きに注目していきたいと思います。