個人投資家とファイナンシャルプランナーという2つの顔を持つ尾上堅視さん(かえるさん)のインタビュー後編をお届けします。今回は個別株とともに保有しているインデックスファンドやアクティブファンドについて聞きました。また、資産運用のエキスパートという立場からアドバイスもいただきました。

 

世界市場の成長を取り逃したくない

──ここまで個別株についてお伺いしましたが、尾上さんは投資信託もお持ちなんですよね。どのような割合で保有しているんですか。

 もともとは個別株の割合が圧倒的に多かったのですが、今は金融資産全体の半分くらいに減っています。残りは投資信託が4割で、それ以外が1割といったところです。それ以外というのは、クラウドファンディングへの出資などです。

──ひと口に投資信託といってもさまざまですが、その内訳は?

 インデックスファンドが3分の2、アクティブファンドが3分の1くらいだと思います。インデックスファンドは全世界株式や先進国株式が多く、アクティブファンドは日本株式が中心です。

種 類 ファンド名 投資対象 運用会社
(略称)
インデックス
ファンド
EXE‐i グローバル中小型株式ファンド 世界株
(日本含む)
SBI
DCニッセイ外国株式インデックス 先進国株
(日本除く)
ニッセイ
たわらノーロード 先進国株式 先進国株
(日本除く)
アセマネOne
野村日本債券ファンド
(確定拠出年金向け)
日本債券 野村
世界経済インデックスファンド バランス 三井住友トラスト
アクティブ
ファンド
げんせん投信 日本株 ニッセイ
ひふみ年金 日本株 レオス

──株式投資を始めた当初から投資信託も購入していた?

 いいえ、投資信託を購入したのは2、3年後だったと思います。最初は外国株式のインデックスファンドを買いました。その後、2009年にiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を始めました。

──個人投資家の方々は個別株派とインデックス派、あるいはアクティブ派に分かれますよね。全て保有している人は少ないと思うのですが、尾上さんはなぜインデックスファンドやアクティブファンドも持つようになったのですか。

 僕の場合、あくまでも当初のメインは個別株でしたが、特にこだわりがあるわけではありません。自分の資産形成に有利なものは何でも取り入れようと思って持ち始めました。

──最初、海外株式のインデックスファンドを買ったきっかけは?

 株式投資を続ける中で、日本国内だけでなく、世界中の企業に投資したいという思いが膨らんできました。世界経済は長い目で見れば必ず成長していくと期待しています。だったら、黙って見ている手はない、何かの形でその成長を吸収できないかと考えたんです。

 それで最初は、海外の個別株を買うことも検討しましたが、誰もが知っているようなグローバル企業ならともかく、小型株に投資するのは簡単ではありません。そもそも情報を入手するのが困難です。そこで、世界の株式市場の指数に連動するインデックスファンドに着目しました。

──だから、今もインデックスファンドは海外株式中心なんですね。

 もちろん日本経済の成長に期待して日本株式のインデックスファンドを購入する手もあります。でも、全世界、あるいは先進国の経済成長に賭けたほうがより確実だろうと思います。

──インデックスファンドはほとんどiDeCoとして積み立てているようですね。

 所得控除を受けられるメリットはとても大きいですからね。

──運用成績はどうですか。

 2009年にiDeCoを始めてから10年積み立てているので、元本は220万円くらいになります。それが今、350万円くらいに増えています。個別株のように短期間で何倍にも増やせるものではありませんが、まずまず順調に推移していると思います。

──満期の60歳になったときどこまで増えているか楽しみですね。

 そうですね。まだ何十年かありますから。

──ちなみにNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)は?

 ずいぶん前ですが、NISAも活用したほうがトクだろうなと思い、入ろうとしたんです。ところが、なぜか手続きに手間取り、結局やめました。なので、2018年1月につみたてNISAが始まったとき、「つみたて」のほうに加入しました。

買ってみたい投資信託が増えている

──アクティブファンドは、ニッセイアセットマネジメントの「げんせん投信」と、レオス・キャピタルワークスの「ひふみ年金」を保有しているようですが、どちらも主に日本株を対象とするファンドですよね。

 インデックスファンドは世界株式を中心に保有していますが、僕が期待している市場はやっぱり日本なんです。だから、日本企業には元気になってもらわないと困ります。そういう意味で、日本の成長企業を組み込んでいるアクティブファンドにも投資しています。

──アクティブファンドの場合は何を基準に選ぶのですか。

 1つは運用方針です。例えば「ひふみ年金」を運用・販売しているレオス・キャピタルワークスは、日本の成長企業に投資することで日本経済の発展に寄与するといった理念を掲げています。そうした高い志をもって運用しているファンドは応援したくなるし、買ってみたいと思います。

──どんな銘柄が組み込まれているかも大事ではないですか。

 おっしゃる通りです。正直、良さそうな銘柄を適当に放り込んだようなファンドも存在します。でも僕としては、ファンドマネージャーが選びに選び抜いた銘柄だけで構成されたファンドに長い目で託してみようと思っています。

──今も個別株がメインとはいえ、インデックスファンドやアクティブファンドの割合は増えてきているんですよね。

 はい、前は3割もありませんでした。

───その理由は?

 1つは本業が忙しくなったためです。個別株だとある程度、時間や労力をかけなければなりません。保有銘柄の決算などをチェックする必要がありますし、次に主力になりうる銘柄を探すことも大事です。それに比べてインデックスファンドやアクティブファンドはしっかりと仕組みができていて、安心して持っていられるのでラクなんです。

──そこは投資信託の良さですね。

 はい、だからあまり労力をかけたくないという人には個別株より投資信託が向いていると思います。投資信託だけでも大丈夫と思っています。

──2つ目の理由は?

 ひと昔前は買ってみたいと思うような投資信託が少なくて、あまり魅力的には思えなかったんですが、最近はずいぶん変わってきました。インデックスファンドに関しては商品ラインナップがかなり広がったし、信託報酬などのコストもずいぶん下がりました。一方、アクティブファンドもレオス・キャピタルワークスや鎌倉投信など個性的な運用会社が増え、いろんな商品を買えるようになりました。

──投資信託の魅力が増していると?

 それは間違いないでしょう。

──では、ご自身も投資信託の割合がさらに増えそう?

 そこは難しいところです。個別株と投資信託、どっちが面白いかといったら、僕にとっては断然、個別株です。銘柄選びも楽しいし、株価が上がったときのわくわく感は何物にも代えがたいです。

──趣味か実益かの問題ですね(笑)。

 どっちが大事かといったら明らかに「実益」なんですが、楽しみの部分も少しは残したいなと。今後もどちらか1つに絞るのでなく、両方バランス良く続けていきたいと思いますが、投資信託の割合が増えていきそうです。

1日も早く資産形成の準備に取り掛かるべし

──最後にファイナンシャルプランナーというお立場からトウシル読者にアドバイスをいただきたく思います。まずは老後資金について。老後が不安なので投資を始めるという人が多いと思うのですが、そもそも安心して老後を迎えるにはどれくらいの額を用意すべきなのでしょうか。

 いろんな方からよく聞かれる質問ですが、通常は1人だったら2,000万円、夫婦2人だったら3,000万円と答えています。ただし、これはあくまでも理想であり、実際には人によって異なります。例えば持ち家があるかないかによって全く違いますし、どのくらいの生活レベルを望むのかにもよります。

──持ち家があるし、お金を使う趣味もないので年金だけで十分事足りる。こういう人は蓄えがなくても平気ですしね。

 極論すればそういうことです。ただし、不測の事態への備えも必要ですから、どんな人でもある程度は蓄えておきたいところです。

──何歳くらいから老後に向けて準備を始めるべきでしょうか。

 それは早いに越したことはありません。資産形成で何が大事かといったら、何より「時間」なんです。たっぷり時間があれば、何か試してうまくいかなくても、もう一度やり直すことができます。でも定年間際に慌てて始めて失敗したら取り返しがつきません。だから、20代だろうと30代だろうと40代だろうと、今すぐ準備、お金の勉強に取り掛かってくださいと言いたいです。

──今から投資を始めるとしたら何を薦めますか。まずはやはりインデックスファンドということになるのでしょうか。

 株式投資に特別興味があるわけではないし、深く勉強するのも気がすすまない。そういう人はインデックスファンドから入って頂きたいです。勉強したからと言って必ずしも結果につながるとは限らないのが株式市場だと思っています。

──それでは、インデックスファンドを始めるときの注意点は?

 前に投資信託は買ったら持っているだけでいいと言いましたが、それでも「管理」は必要です。たまには証券会社のサイトにログインして、自分が持っているファンドの運用状況をチェックすべきですし、月次レポートなどに目を通すことも必要でしょう。

 僕のような「投資好き」には苦でもなんでもありませんが、全く興味のない人にとっては面倒だと思うんです。

 そこで、大事なのが「管理」のしやすさです。例えば複数のファンドを持つ場合、いろんなファンドをバラバラに買うのではなく、1つのシリーズにまとめる。これだけでずいぶん「管理」がラクになります。

──つまり、日本株式のインデックスファンドと海外株式のインデックスファンドを両方持つ場合など、同じシリーズ、同じブランドで統一したほうがいいと。

 はい。バラバラだとそれぞれ別のサイトやページをチェックしなければなりません。あっちも見なければならない、こっちも見なければならないと。それでだんだん面倒になり、管理が行き届かなくなる人も少なくないんです。

──「金融機関などに勧められた」「手数料が低い」という理由だけで、あれこれ購入するのはあまり良くないということですね。

 はい、そのあたりも注意してほしいですね。

──今日はどうもありがとうございました。

日本株を買うことは「将来への期待」と話す尾上さん。「日本企業に良くなってもらいたいと思って投資しています。老後の自分や子供が生きる世界が良くなるように、プレッシャーをかけているつもりです(笑)」

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