人気ブログ『かえるの気長な生活日記。』を運営する尾上堅視さん(かえるさん)の本業はファイナンシャルプランナー。工業高校卒業後、土木設計の仕事に就きますが、将来に不安を覚えて株式投資を開始。その後、資産運用の勉強に取り組み、30代前半でファイナンシャルプランニング会社に転職しました。個人投資家とファイナンシャルプランナーという2つの顔を持つ尾上さんのインタビューを3回にわたってお届けします。

 

およそ100冊の投資関連本を読破した

──ファイナンシャルプランナーとして活躍しながら「かえる」さんという名で投資ブログを運営されていますが、今日はどうお呼びしましょうか。

 本名でもハンドルネームでもどちらでも構いません。僕が投資ブログをやっていることは会社も知っていますし。

──では、本名でお呼びします。尾上さんはもともと土木設計の仕事をされていたのですよね。ガテンの世界からこの分野に転身した人って珍しくないですか。

 そうですね。僕は大学も出ていないので、そういう人も珍しいかもしれません。

──独学でファイナンシャルプランナーの資格を取り、著書『あたりまえだけど、誰も教えてくれないお金のルール』なども出されています。かなり勉強されたのではないですか。

 結構勉強しました。ただ、実をいうと最初からファイナンシャルプランナーを目指していたわけではないんです。あくまでも投資のために勉強を始めました。

尾上さんの著書『あたりまえだけど誰も教えてくれないお金のルール』は、お金に関する基本的な疑問から、ライフプラン、年金、保険、住宅、投資までをやさしく解説。資産形成を考え始めた初心者にも読みやすい一冊

──いつ頃、投資を始めたのですか。

 たしか27、28歳の頃だと思います。僕は工業高校卒業後、土木設計会社に就職し、5年後にその会社の先輩とともに独立しました。その当時は自営業という働き方でしたので国民年金に加入していましたが、あるとき、将来の年金の給付額を知り、がくぜんとしました。年金だけでは老後を悠々自適に暮らすなんて絶対に無理、これから本気で貯蓄していかなければならないと。そんなとき、ネット証券の広告を目にして、投資に関心を持つようになりました。

──で、勉強を始めた?

 いいえ、まずは株を買ってみました。

──いきなり?

 はい、何はともあれ、試してみようと。と言っても限られた貯金の中で、1株単位で買える銘柄を探し、スターバックス コーヒー ジャパンの株を2株だけ買いました。2株で合計5万円弱だったと思います。

──上がりました?

 翌日か翌々日には少し値上がりしていました。それですぐに売って、数百円の利益を得ました。

──ほんとにお試しだったんですね。それから勉強を始めた?

 1日か2日で、ほんのわずかとはいえ増やすことができたわけで、本格的に挑戦してみる価値があると感じました。ただ、素人がちょこっと手を出して稼げるほど甘い世界ではないのはわかっていました。ですからまずは勉強しようと思ったんです。

──どんな勉強を?

 投資関係の本を読みあさりました。当時、といっても2年か3年かけてですが、100冊くらい読んだと思います。株式投資に関する本はもとより、決算書や財務諸表の読み方といった実用書もかなり読みました。

──そのとき勉強したことが後にファイナンシャルプランナーを目指すときに生きたわけですね。

 はい、それは間違いありません。その後も投資できるお金を増やそうと、マネーに関する本もかなり読みました。

──その頃、読んだ本で印象に残っているものはありますか。

 いろいろありますが、1冊と言われたら米国のファイナンスの専門家が書いた『株式投資の新しい考え方―行動ファイナンスを超えて』です。僕は割安な小型株、地味な小型株に投資するというやり方で利益を出してきたのですが、そのスタイルにたどり着いたのはこの本の影響が大きいんです。

 ただし、かなりマニアックな内容で、決して読みやすいとはいえませんから、投資初心者にはあまりすすめられません。ある程度、勉強して投資のイロハがわかってきたらぜひ読んでほしいと思います。

 

アベノミクスの恩恵を受け、金融資産は2,000万円を突破

──スターバックス コーヒー ジャパンで利益を得た後も勉強しながら株を買っていたのですか。

 はい、お金に余裕ができたときに買っていました。

──成績はどうでしたか。

 最初は悪くなかったのですが、始めて1年半後にはライブドアショック、4年後にリーマンショックが訪れ、ご多分に漏れず、けっこうな損失を出しました。それまでつぎ込んだ分、つまり元本の半分ほどに減ってしまいました。

──こつこつ増やしてきたのに半分になってしまうと、ダメージが大きいですよね。

 そうですね。どんどん減っていくのでダメージは大きかったですね。ただし、投資をやめようとは思いませんでした。このまま何年もどん底状態が続くなんてあり得ないだろう、そのうち回復するだろうと思っていました。

──その確信があった?

 確信は持てなかったです。だから、お願いだから回復してくれという感じではありました(笑)。

──リーマンショック後はどうだったのですか。

 リーマンショックから数年後、2012年に安倍政権が誕生したころからぐんぐん成績が上がっていきました。当時、金融資産は200万円くらいだったと思いますが、それが数年で2,000万円を超えました。

──10倍に増えた?

 その間も追加投資をしているので、正確には10倍に増えたわけではありません。元本からすると3倍か4倍程度ではないでしょうか。とはいえ、この結果には自分でもホッとしています。

──ここ最近はどうですか。

 2018年は久しぶりにマイナスでした。はっきりとは覚えていないのですが、2011年、東日本大震災の年もあまり良くなかったんです。たぶんそれ以来のマイナスだと思います。

──2018年後半は投資家のほとんどが苦戦しましたからね。

 そうですね。僕の場合も後半になって持ち株の多くが値を下げました。ただ、リーマンショックのときのように大きく減らしたわけではないので、あまり深刻には考えていません。

──今現在、金融資産がどれくらいか聞いてもいいですか。

 数年前から子供の教育費と住宅ローンの頭金のため、数百万円解約しました。だから、今はピーク時よりだいぶ少ないです。ネットで見かける投資家や知り合いの中には、もっと高額の資産を築いている人もいますが、マイペースを心がけています。

──でも、株式投資で大きく増やしたおかげで、お子さんの教育費とマイホーム資金をまかなえたわけですよね。世の中のお父さんにとっては夢のような話だと思うのですが。

 そうかもしれないですね。諸事情があってなかなかお金を貯めることができなかったですし、学歴も高くない中、そういう意味では株式投資を始めてよかったと心から思います。

──では、次回はどんな銘柄に投資しているのかについてお伺いします。

「投資を長く続けるには自分のスタンスで継続して進むことが大切」と尾上さん。ご自身のスタンスは「仕事や生活を大切にするため、ほったらかしにできる投資」。

中編『尾上さん流 投資する銘柄の選び方とは?小型成長株は「○○一筋」が大事!?』へ続く>>