「消費国」に焦点を当てて「石油製品」を解説!
コモディティ(商品)とは私たちの身近にあるエネルギーや資源、貴金属、牛肉や豚肉、大豆や穀物などの食料資源などのこと。実は身近な「コモディティ」についての知識が増えれば、コモディティの値動きに影響を受ける株式投資のことも、もっと分かるようになります。
今回のテーマはエネルギー源の一つ「石油製品」。主には自動車やトラック、航空機など交通手段のエンジンの燃料です。また、火力発電所や灯油などの暖をとるための燃料、その他、化学繊維やプラスチック製品の原料、道路を舗装するときの材料でもあります。今回は「石油製品」の消費国(地域)について解説していきます。
コモディティ☆クイズ「石油製品の消費国、世界1位は?」
米国の石油製品消費量は高止まり、中国は増加傾向を維持
先進国である米国、そして新興国である中国とインド。この原油消費国トップ3の共通点は「人口の多さ」です。
国連のデータによれば、2015年時点の人口ランキングは、
1位:中国(13億9,000万人)
2位:インド(13億人)
3位:米国(3億1,000万人)
でした。
この「人口の多さ」が、その国の国民の生活に欠かせない石油製品の消費量を増加させているとみられます。また、環境問題に積極的に取り組む欧州諸国とは異なり、トップ3の国では、化石燃料(石油・石炭・天然ガスなど)の使用を強く否定していない点も、これらの国々の石油製品の消費量の多さの理由の一つになっていると考えられます。
トップの米国においては、「偉大なアメリカを取り戻す」と強調して2年前に当選したトランプ大統領のもと、かつての膨大な量の石油製品の生産と消費が、米国の急速な経済発展を支えた時代に逆戻りするかのようなムードが垣間見られます。国のリーダーの考え方が石油製品の消費量を高止まりさせている面があると筆者は考えています。
また、2位・3位の中国やインドにおいては、急速に経済発展を遂げています。引き続き現段階においても再生可能エネルギーへのシフトよりも目先のエネルギー確保が優先されているため、石油製品の消費量が伸び続けているとみられます。
「石油製品」投資で覚えておきたい注意点!
石油製品の商品に投資をする際に覚えておきたいのは、言葉の定義です。例えば、「石油」「原油」「ガソリン」、これらの3つは似ていますが同じ意味ではありません。
「石油」とは、化石燃料を使用する状況において、液体およびその液体由来の製品の総称です(液体=精製前の原油、液体由来の製品=原油を精製して取り出される石油製品)。液体の化石燃料の総称を石油だとすれば、固体の化石燃料の総称は石炭、気体は天然ガスといえます。
「原油」は地中から掘り出した液体の化石燃料。粘度が高ければ手を加えて液体にして精製できる状態にします。石油製品は、ガソリンや灯油、ジェット燃料などの、末端の消費者が目的に応じてそのまま使用できる原油を精製して得られたものです。
「ガソリン」は石油製品の一つ。なじみ深いこの製品に着目した場合、特に北半球の先進国におけるドライブシーズン(春から夏にかけて)中や、ドライブシーズン前に石油業者がガソリンを前もって購入する動きが目立つ時期に世界的に消費が伸び、その結果、価格が上昇するのではないか? という連想が働きやすくなります。
ここで注意しなければならないのは、ガソリンをはじめとした石油製品は、図のとおり、「原油」が原料である点です。産油国の増産などで「原油相場」が上昇しにくい局面にある場合、「石油製品」の価格も連動して上昇しにくくなります。主従関係で言えば、原料である原油が「主」で、製品であるガソリンは「従」となります。つまり、ガソリンなどの石油製品の価格動向は、「原油相場」に強く影響を受ける点に注意が必要です。
「石油製品」投資の注目ポイント
「石油製品の消費増加=価格の上昇の要因」ですが、価格変動要因は消費だけではありません。「消費」と対の関係にある「供給」にも、同時に目を向ける必要があります。以下は、世界の石油の供給量と消費量の推移です。この場合の「石油の供給量」とは、2次供給を含む原油生産量に再生可能な液体燃料の生産量の合計で、石油の消費量とは石油製品の消費量の合計です。(図左の供給と右の消費)
消費量(オレンジ線)は小刻みに増減しながら増加しています。同時に供給量(青線)も増加しています。この供給と消費のバランス、つまり需給バランス(供給-消費)はグラフのとおりです。
2018年9月から11月まで、3カ月連続で供給過剰だったことがわかります。供給過剰は、2014年後半から2016年初頭までの原油価格の急落・低迷(いわゆる逆オイルショック)の主因とされ、今後も、消費と供給の両方を考慮した需給バランスに注目することが必要です。
「石油製品」は今いくら?現在の価値
国際的な原油価格の指標である「NY原油先物価格」、国内の先物取引所で売買されている「ガソリン先物価格」は、2000年以降、2度のショックを経て現在に至っています。また、2018年10月から12月にかけて大幅下落となっています。NY原油においては、2018年12月26日時点で、2度のショック時につけた安値に接近しています。
「石油製品および原油」の投資商品例
日本でも個人投資家が投資できる、ETF(上場投資信託)、ETN(指標連動証券)、商品先物を紹介します。
【ETF(上場投資信託)、ETN(指数連動証券)】
証券会社に口座を持っている人に便利。株を取引きするのと同じように石油製品や原油の取引ができる。関連するETF・ETNは原則、石油製品や原油価格に連動するように設計されている。長期保有も短期売買も可能(ETNは満期日あり)。
石油製品や原油価格が値上がりした場合に利益が出る“ブル型”に加え、値下がりした場合に(ETF・ETN価格が上昇して)利益が出る“ベア型”の商品もある(銘柄コード2039を参照)。“ブル”は、牛(Bull)が下から上に角を突き上げる様子を上昇相場に、“ベア”は、熊(Bear)が上から下に手の爪を振り下ろす様子を下落相場に例えた言葉。
【商品例】
ETF(国内)
ETN(国内)
ETN(海外)
【商品先物】
レバレッジをかけた短期売買ができる。新規発注時、値上がりした場合に利益が出る“買い”に加え、値下がりした場合に利益が出る“売り”も選択できる(買いのポジションは値下がり時、売りのポジションは値上がり時に損が発生)。売買高が少ない場合がある点に注意。
商品例)
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