時価総額トップ20で振り返る平成の30年
「平成」の株式市場を振り返るという、重大なテーマでのコラム執筆のお話をいただきました。それは光栄! と喜んでお受けしたのですが…「平成元年は1989年か。ということは自分は小学生じゃん!」ということに後になって気付きました。
振り返るにも、私が知る平成の日本株市場は後半部分だけ。見てもいない前半部分を、知ったように書くことはできません(今のご時世、ネットで検索すればだいたい情報は得られますが)。
そこで私が知る限り、最も平成のマーケットを真剣に見てきたと思う人物(前半はファンドマネージャーなどとして運用の第一線、後半はストラテジストとして活躍した大物)に取材することで補いながら、まとめてみました。
前編は10年刻みの節目における時価総額トップ20リストで、後編は10年間ごとの騰落率ランキングから、時代背景を振り返っていきます。懐かしいあの曲を聴くような感覚で、流し読みしていただければと思います。
10年ごとに見る時価総額ランキング
平成元(1989)年・東証1部時価総額ランキング
平成元(1989)年の大納会といえば…日経平均株価が史上最高値をつけたところ。
この時点における時価総額トップ20ということで、バブルの匂いが漂っている銘柄もありますね。この年の時価総額トップはNTT(22.9兆円)。1987年に上場、この年の高値を更新。それから株価は半分以下になりながらも、この時価総額! 今では考えられませんね。
時価総額4位が証券最大手の野村というのも驚き。野村の時価総額6.7兆円というのは、今のメガバンク(三井住友やみずほ)より大きいわけですから。現存している銘柄でランキング化していますので、当時上場していた現在のSMBC日興証券や廃業した山一證券は含まれていません。当時を知る市場関係者は言います。「この頃は猫も杓子(しゃくし)も資金運用だった。その反動に苦しめられ続けたのが平成ということ。野村株の最盛期もこの頃。証券業界でいえば、平成を振り返ると8割方の期間が苦難だったね」
また、この年の4月に任天堂が「ゲームボーイ」を発売。空前の大ヒットを記録するわけですが、それでもこの年の任天堂の時価総額は6,000億円台。当時でいえば中型株に過ぎなかったわけで、当然。トップ20のランク外でした。
平成10(1998)年・東証1部時価総額ランキング
平成10(1998)年のトップ20には、NTTドコモが新登場。この年の10月に上場し、いきなり3位にランクインしています。ある市場関係者は、「2000年春のITバブルに向けて、その入り口みたいな年がここだった」と指摘していました。平成最大級の親子上場ですが、この20年後の平成のラスト、NTTグループの親子上場も真っ青な案件が出てくるわけですが…。
この前年の平成9(1997)年11月に、四大証券の一角だった山一證券が破綻。倒産の連鎖はつながり、この年は日本長期信用銀行、日本債券信用銀行など、長期信用銀行まで沈みました。皮肉にも、この年に世界中で大ヒットした映画は「タイタニック」…。
長野五輪に沸き、野球界でも松坂大輔フィーバーや「ハマの大魔神」の活躍で横浜ベイスターズが38年ぶり日本一に。スポーツ界は盛り上がりましたが、マーケットは低迷しっ放しだっちゅーの。
平成20(2008)年・東証1部時価総額ランキング
時価総額トップはトヨタ自動車に。ここから平成最後まで、トヨタが日本株市場の「不動の4番」的存在として君臨します。
2位はNTTドコモとで、親会社NTTの時価総額との逆転現象が生じていますね。これも平成最後まで解消されていません。
17位のパナソニック。これまでの松下電器産業からブランド名「パナソニック」に商号変更したのもこの年でした。
平成20年はマーケットにとって、大きな歴史の1ページとなった年。9月にリーマン・ブラザーズがチャプター11(日本の民事再生法に相当)を申請、リーマン・ショックに株式市場はパニックとなりました。
原油市場では、この年に付けたWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油(原油価格の代表的な指標)の史上最高値1バレル=147ドルを現在なお超えられていません。
ある市場関係者は「10兆円銘柄がトヨタだけ。リーマン・ショックの真っただ中で、日経平均株価のバブル崩壊後の最安値(7021.28円)は翌年2009年3月につけている。時価総額が軒並み減ったのも仕方ないね」とコメントしていました。
日本では「グ~」が流行語でしたが、米国では11月に誕生した新大統領オバマの発する「Change」に熱狂。そんな中、その後の「Game Change」の起爆剤となる出来事が通信業界で起きました。この年の時価総額は1.7兆円のためランク外だったソフトバンク。ソフトバンクがこの年、米アップル製のスマートフォン「iPhone3G」の販売を開始します。
孫社長はこの時「ケータイがインターネットマシンになる歴史的な記念日」と発言。ここから平成30年までの残り10年は、ソフトバンクが株式市場の主役でもあり、この時日本に初上陸したiPhoneが世界の産業の中心となりました。それからまだ10年なんですね、日本人がiPhoneを利用し始めて。日本上陸10年目の今年(2018年)10月、アップルは233ドル台の史上最高値をつけました。時価総額は日本円にして100兆円超え! そして、目下で曲がり角へ?
平成30(2018)年・東証1部時価総額ランキング
皆さん見慣れた時価総額ランキングですよね、平成30年の12月5日時点です。
ニューカマーでは、2014年に上場したリクルート、2015年に同時上場した日本郵政とゆうちょ銀行がトップ20に入っています。
「ほとんどの日本人が何をやっている会社か知らない。でも外国人投資家は高く評価している」ことで知られる(?)キーエンスが、アベノミクス相場到来による外国人投資家の資金流入によって6位と大躍進。
これについてある市場関係者は、「米国のGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)ほどの銘柄は日本から誕生しなかったが、センサーのキーエンスやFA(工場自動化)のファナックなど、特定の分野でナンバーワンになった日本企業は着実に買われていたね」と指摘していました。
そして、10年前の平成20年にiPhoneを日本に初上陸させたソフトバンクは…見事、時価総額で3位に。通信キャリアとしての成功で、NTTドコモと同規模の時価総額で評価されています。
キャリアの業績は頭打ちとなる中、孫社長は10兆円ファンドを設立。比類なき目利き力でベンチャー投資でも成果を示し、ソフトバンクビジョンファンドの生み出す利益に注目を引き寄せています。この形を作った上で、平成最後に通信子会社ソフトバンクをIPO(新規株式公開)で売却。一時代の終わりを感じますね。そだね~!
後編では、平成30年間を10年ごとに区切り、騰落率をランキングしています。ぜひご覧ください。
≫≫後編:【永久保存版】後編:株価データで振り返る平成の30年・騰落率ランキング
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