「損小利大」を一歩先に進める、5つのアルゴ注文

「ひと目でマーケットやお気に入り銘柄の温度感がつかめるように」
楽天証券マーケットスピードⅡ開発担当 長谷川拓実

 

 マーケットスピードⅡの改善・強化のポイントは、1.圧倒的な情報量、2.操作性の良さ、3.最新のアルゴ注文の実装です。1と2については前回解説したので、今回は3を詳しく見ていきましょう。

前回:マーケットスピードⅡ、誕生秘話。世界のプロ投資家と戦うために今、必要な武器

 新たに実装されたアルゴ注文には、トレイリング、スナイパー、アイスバーグ、リザーブ、リンクの5つがあります。

 トレイリング(図2)は損失を抑えつつ、利益を伸ばしたいときに使える注文です。逆指値注文をリアルタイムに自動修正する自動売買のこと。一定の値幅(例えば100円)を指定すると、株価の上昇に従って逆指し値を切り上げて、反落したところで売ることができます。

図2 トレイリング注文

 スナイパーは、自分の注文を他の投資家に見せたくないときに使う注文。1,000円で発注したいとき、1,000円の売り物がなければ待機モードに入って待ち伏せ。1,000円で発注していることが他の投資家にはわかりません。取引の薄い銘柄取引などでは威力を発揮します。

 アイスバーグ(図3)は、1万株を発注したいとき、いきなりすべてを見せるのではなく、まず1,000株の注文を出し、約定すると次の注文を出す「氷山の一角」しか見せないような注文方法。実は、これはプロがよく使う手法だと言います。

図3 アイスバーグ注文

 

「リザーブ」は、発注し忘れないよう予約しておきたいときに使います。例えば決算発表前に注文する、塩漬けにしてある株が買値まで上昇したら売りたいというような「遠い注文」に便利です。

「リンク」は連続した注文を最大連続10注文まで事前に登録できる注文です。「A銘柄の現物買い→A銘柄の売り→B銘柄の信用買い建て」というように連続した注文を出しておくことができます。長期出張に出るのでしばらく取引ができないとか、土日の時間のあるときにまとめて注文を出したいというときに使えます。

 5つのアルゴ注文をすべて実装しているのは主要ネット証券(売買代金上位6社)のツールでは、マーケットスピードⅡだけ(2018年6月末時点)。アイスバーグとスナイパーは主要ネット証券で初めて実装しました。

「簡単で自由」は全投資家に必要。新しい投資アイデアとは?

「投資家目線で見て、投資アイデアが刺激される」
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田雅之

 では、マーケットスピードⅡをどのように使いこなすことができるのでしょう。投資家の目線でマーケットスピードⅡを使ってみた楽天証券経済研究所・シニアマーケットアナリストの土信田雅之の感想は、「1.基本的なことがより強化されている、2.自由度がアップし応用が効く、3.投資アイデアを刺激するツール」ということでした。

 基本が簡単で自由、という一見、初心者向けの改善とも思いそうだが、それは違う。トレードが高頻度なほど、利益を積み重ねたい人ほど、綿密な分析をしたい人ほど、いかに簡単で早く操作できるかが、勝敗を左右する。簡単さの追求は、どの投資家にとってもメリットをもたらす必須条件なのだ。

 具体的にはこう。個別銘柄情報の画面ではあらゆる情報を一つにまとめて表示させることができます(図4)。従来のマーケットスピードでも銘柄リスト、マーケット、板情報、資産状況、情報1、情報2を一つの画面に並べることができましたが、マイページを開き手動で画面を出して並べるという手間がかかりました。「それがマーケットスピードⅡではデフォルトで搭載されています。またタブをクリックしてほしい情報を表示させることもできます」(土信田)

図4 あらゆる情報が1画面で見られる

 

 自由度アップは、移動平均線を使った売買例で説明してくれました。例えば13週移動平均線を表示させ、株価が移動平均線を上抜けするタイミングで買った時、利益確定ラインを切り上げつつ売り場を探ります。「シンプルなトレード手法ですが、的確に注文を出すためには常にチャートを見ていなければなりません。でもトレイリング注文とリンク注文を組み合わせたアルゴ注文を使うと、それが簡単にできるようになります」(土信田)。

 では、どのように銘柄を探せばいいのでしょう。チャートの形で銘柄を探す「チャート形状検索」を使ってくださいと土信田。スマホ版の「iSPEED」で多くの投資家に使われている人気の機能がマーケットスピードⅡにも実装されました。

 投資アイデアを刺激するでは、テクニカルチャートが便利になりました。指標の拡充と重ね合わせ表示。テクニカル指標ではエンベロープやHLバンドなどが追加されたり、トレンド系の重ね合わせ表示では、一目均衡表とボリンジャーバンドを重ね合わせることもできます。「チャートの急騰急落場面では、ニュースが見られるようになり、原因を探りやすくなりましたね」(土信田)。

 このように、マーケットスピードⅡは、個人投資家の要望を取り入れながら、より高機能でより使いやすく進化しました。有料のツールですが、無料の条件は実はとてもハードルが低いものになっています。ぜひダウンロードして、株式投資に役立ててください。

初代マーケットスピードの強みをうまく残せるかも課題だった