7~8月にインバウンド・ブームが減速?

 最近、株式市場で、*インバウンド関連株の株価が冴えません。今年も訪日外国人観光客数の増加が続き、これからも安定的に成長が期待できるのに、なぜでしょう?

*インバウンド関連株
訪日外国人観光客による日本国内での消費支出を「インバウンド消費」と呼びます。インバウンド消費の増加で恩恵を受ける銘柄を、「インバウンド関連株」と呼びます。

 まだ明確に状況が把握できているわけではありませんが、7~8月のインバウンド消費にやや減速感が出ている可能性があります。

 6月18日に大阪府北部で起こった地震や、6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に集中豪雨による被害が広がったことが、影響しているようです。地震や水害のニュースを見て、一部、日本への旅行にキャンセルが出たと考えられます。最近、関東よりも関西へ旅行する外国人が増えていただけに、大阪の地震や西日本の水害のニュースが影響した模様です。災害だけでなく、8月の猛暑や台風などの天候不順も、旅行ブームに水をさした可能性があります。

 また4月以降、人民元(中国の通貨)が日本円に対して9%下落したことも、中国からの観光客の伸びが鈍る要因となっているようです。中国からの観光客は、日本での支出額が一番多いので、人民元の対日本円での動きはインバウンド消費全体に影響を与えます。

 

伸びは鈍化、ただし訪日外国人観光客数が過去最高を更新

 JNTO(日本政府観光局)によると、2018年7月の訪日外国人観光客の数は、前年同月比5.6%増の283万2,000人でした。2017年の訪日外国人が前年比で約2割伸びていたことと比べると、伸び率が鈍っています。

 ただし、それでも、7月として過去最高を更新していることは変わりません。訪日外国人観光客の数は、東日本大震災の影響で2011年3~4月に一時大きく減ったことを除くと、過去7年間、一貫して伸び続けています。

訪日外国人観光客数の推移:2011年1月~2018年7月

出所:JNTOより楽天証券経済研究所が作成

 

 国別で一番多いのは中国からの観光客で、前年同月比12.6%増の87万9,100人でした。次に多いのが韓国で、同5.6%減の60万8,000人でした。

 

訪日外国人観光客数の上位7カ国:2018年7月

出所:JNTOより楽天証券経済研究所が作成

天災の影響は一時的と考える

 2018年8月の訪日外国人数(推計値)は、9月19日(水)16時、JINTOが発表する予定です。8月は伸び悩みが予想されます。ただし9月以降、年末にかけて、再び伸びが戻ってくると予想しています。なぜなら、インバウンド・ブームが続く構造要因は、変わっていないからです。

  • 日本が観光地として魅力的であること
  • アジアで、中間層(富裕層と貧困層の中間にある層)の所得が、海外旅行ができるくらいまで増加してきたこと
  • 日本政府が、観光ビザ発給の要件緩和など、海外からの観光客誘致策を取ってきたこと

 したがって、今、下落してきているインバウンド関連株は、長期投資で買い場を迎えつつあると考えています。

 ちなみに、2011年3月の東日本大震災の後は、外国人観光客の減少が1年あまり続きました。地震後に発生した福島第二原発の事故による風評被害の影響が長引きました。天然災害のみの影響ならば、過去の経験則から数カ月で一巡すると考えられます。

株主優待が魅力的な「インバウンド株」、投資の参考銘柄

 インバウンド消費拡大で恩恵を受ける銘柄は、電鉄、小売り、サービス、化粧品トイレタリー、食料品などの産業に多数あります。

 これらの産業には、魅力的な株主優待を提供している銘柄が多数あります。インバウンド消費拡大の恩恵を受け、中長期に業績拡大が期待される銘柄の中で、魅力的な株主優待を実施していて、足元の株価が弱含んでいる銘柄を投資の参考銘柄として紹介します。

 表の中の「優待内容」をクリックしていただくと、それぞれの銘柄の優待内容をご覧いただくことができます。

株主優待が魅力的な「インバウンド株」投資の参考銘柄

コード 銘柄名 業態 優待内容 優待実施月
3048 ビックカメラ 家電量販 優待内容 2月・8月
3086 J.フロントリテイリング 百貨店 優待内容 2月
4911 資生堂 化粧品 優待内容 12月
4922 コーセー 化粧品 優待内容 3月
9020 JR東日本 電鉄 優待内容 3月
9021 JR西日本 電鉄 優待内容 3月
9022 JR東海 電鉄 優待内容 3月
9142 JR九州 電鉄 優待内容 3月
9201 日本航空 空運 優待内容 9月・3月
9202 ANA HD 空運 優待内容 9月・3月

注:スマートフォンで「優待内容」をご覧になる場合はリンク先をスワイプしてご覧ください

 

上記銘柄の株価バリュエーション:9月3日時点

出所:配当利回りは、今期の1株当たり配当金(会社予想)を9月3日終値で割って算出。PERは、9月3日終値を、今期の1株当たり利益(会社予想)で割って算出。楽天証券経済研究所が作成

 上記銘柄のコメントは、本レポートの末尾にある▼著者おすすめのバックナンバーを、ご参照ください。

 

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