今回は「プラチナの供給国・地域」に注目
今回は「プラチナの供給国・地域」について解説します。
近年、自動車の排ガス浄化装置向けに使われるプラチナの消費量が低下するのでは、と懸念されています。実際には目立った減少は起きていませんが、消費量が低下する「懸念」が価格の重石になっていると考えられます。詳細は「安値を拾うプラチナ版「ミセスワタナベ」動く」をご参照ください。
一方、プラチナの供給側にも、今後の価格動向を考える上で注意しなければならないことがあります。それは「自動車鉱山」の存在です。詳細は「EV化で気になる、プラチナ・パラジウムの“自動車鉱山”からの供給圧力」動く」をご参照ください。
「自動車鉱山」は筆者の造語で、スクラップされた自動車の排ガス浄化装置からリサイクルされる、プラチナの供給を指します。仮に今後、EV化が飛躍的に進んだ場合、従来の内燃機関(エンジン)を動力源として動いていた自動車がスクラップされ、プラチナのリサイクル量が増加する(自動車鉱山からの供給量が増加する)可能性があります。
今後は、プラチナの供給量に注目が集まることが想定されます。このため今回は、プラチナの供給国について、鉱山生産、自動車鉱山(自動車からのリサイクル)、そして宝飾品からのリサイクルについて関連する国を確認していきたいと思います。
鉱山生産、自動車鉱山(自動車からのリサイクル)、宝飾品からのリサイクルの割合
プラチナの供給は3つのカテゴリに分かれています。その割合は以下のとおりです。
図:世界のプラチナ供給の内訳(2017年)
2017年時点で、世界のプラチナ供給の4分の3以上は鉱山生産です。また、以下は3つのカテゴリの2009年以降の推移です。
図:世界のプラチナ供給の内訳ごとの推移 単位:トン
鉱山生産からの供給量が、頭打ちあるいは微減となっています。鉱山生産は、生産国での政情不安や鉱山内での労働が過酷さを極めるなど、生産量を増加させることが難しくなっているようです。
一方、自動車鉱山は徐々に増加しています。全体的には鉱山生産の減少分を自動車鉱山からの供給が補う格好となっています。世界的にEV化が進めば、この自動車鉱山からの供給が増加していく可能性があります。
プラチナ供給関連国・地域☆コモディティクイズ全3問
プラチナの市場環境を知る上で、供給における3つのカテゴリごとの関連国・地域を把握しておくことが重要です。国旗や地図上の位置、マスの大きさ(国名の文字数)をヒントに、各問の上位3カ国・地域を考えてみましょう。
問1:プラチナの供給国・地域「鉱山生産」 (2017年)
上位3位はどこの国・地域でしょう?
問2:プラチナの供給国・地域「自動車鉱山」(2017年)
上位3位はどこの国・地域でしょう?
問3:プラチナの供給国・地域「宝飾品からのリサイクル」(2017年)
上位3位はどこの国・地域でしょう?
プラチナの関連国☆コモディティクイズ解答と解説
答え1:プラチナの供給国・地域「鉱山生産」 (2017年)の正解は…
[解説]
1位・南アフリカ共和国(71.8%)、2位・ロシア(11.9%)、3位・ジンバブエ(7.9%)でした。南アフリカ共和国は世界の鉱山生産の7割強を占めています。
また、以下は2009年と2017年の各国の鉱山生産量の変化です。
図:「プラチナ鉱山生産量」の増減(2009年と2017年を比較) 単位:トン
2009年から2017年にかけて、南アフリカ共和国の鉱山生産量が大きく減少したことがわかります。代わりに隣国のジンバブエや北米のカナダとアメリカが増加しました。ロシアもやや減少となりました。
この間、鉱山生産は全体として南アフリカ共和国からの減少が影響し、3.9トンの減少となりました。
答え2:プラチナの供給国・地域「自動車鉱山」 (2017年)の正解は…
[解説]
1位・北米(38.6%)、2位・欧州(35.9%)、3位・日本(5.7%)でした。
また、国・地域別の供給量の変化は以下のとおりです。
図:「プラチナ自動車鉱山からの供給量」の増減(2009年と2017年を比較) 単位:トン
いずれの国・地域においても増加しています。全体としては12.4トンの増加となっています。今後、EV化が進めばこのカテゴリからの供給が増加する可能性があります。
答え3:プラチナの供給国・地域「宝飾品からのリサイクル」 (2017年)の正解は…
[解説]
1位・中国(69.8%)、2位・日本(27.8%)、3位・北米(1.0%)でした。宝飾品からのリサイクルについては、世界の宝飾品のリサイクルは中国と日本以外ではほとんど行われていないようです。
プラチナの宝飾品向けの消費自体は、北米や欧州でもあるはずなのに、宝飾品からのリサイクルランキングでは、1位の中国、2位の日本だけで98%近くを占めています。世界的に見て、宝飾品の中のプラチナをリサイクルする文化は、中国・日本特有のものなのかもしれません。
図:「プラチナ宝飾品からのリサイクル量」の増減(2009年と2017年を比較) 単位:トン
中国からの宝飾品からのリサイクル量が増加しています。今後も中国からの宝飾品からのリサイクル量が増加する可能性があります。
いかがでしたでしょうか。
供給国が原油や農産物などの他の商品に比べて少ないため、一つ一つの供給国の影響度が大きい特徴があります。プラチナの市場環境を知る上で、供給面に着目することはさまざまな意味で重要だと筆者は考えています。余裕があれば、4位以下の国・地域も覚えてみると良いかもしれません。
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