・今回は「コーヒー」に関連する国について解説します。
・複数のヒントをもとにクイズにトライして、コーヒーの基礎知識を身につけましょう。

今回は、「コーヒー関連国」に注目

 前回は大豆の生産国に注目しましたが、今回は、同じ農産品のコーヒーについて、生産国・輸出国・輸入国・消費国の状況を探ります。

 コーヒーは嗜好品として愛されている面が強いため、例えば世界のコーヒー消費量の増加が、世界の景気動向がゆとりある方向に向かっているのではないか? という連想を誘うことがあります。

 また、コーヒーは、「CRB指数」(シーアールビーしすう。1957年に米国のCommodity Research Bureau社が開発)という、コモディティ価格の大まかな流れを示す指数を構成する重要な銘柄の一つです(現在、東京商品取引所での取引は行われていません。上場復活が期待されます)。

 世界経済の動向、世界の人口動態や食文化の変化、美容・健康など、コーヒーは話題に事欠きません。このコーヒーに関連する国について確認してみましょう!

図1:世界に流通する主要なコーヒー豆について 

出所:米農務省(USDA)の資料より筆者作成

 私たちの身近にある、黒くて丸いコーヒー豆は「コーヒーノキ(コーヒーの木)」の種子を焙煎した(炒った)ものです。焙煎前の色は白です。

 私たちがコーヒーを飲むために、世界で栽培されているコーヒーノキは大きく分けて2種類あります。「アラビカ種」と「ロブスタ種」です。ともに原産地はアフリカです。

 アラビカ種由来のコーヒーは高品質で適度な酸味と芳醇な香りが特徴です。客の注文を受けてエスプレッソコーヒーをいれる職業である「バリスタ」の優秀さを競う選手権では、必ずといっていいほどアラビカ種の豆が用いられていると言われます。

 アラビカ種のコーヒーノキは、主に亜熱帯性気候の標高1,000メートル程度の地域で栽培されています。デリケートで気温の変化や病気に弱い品種と言われます。

 ロブスタ種は気温の変化や病気に弱いアラビカ種を補う形で生産が拡大した「強い」品種です。「ロブスタ」という名前は、英語で堅牢、強健などを意味する「robust」に由来していると言われています。

 また、ロブスタ種はアラビカ種に比べて、カフェインが約2倍、水出しの場合多く抽出できる、香りが強いなど、比較的経済性が高く、安価な大量消費に向いていることから、インスタントコーヒーや缶コーヒーに用いられることが多いようです。

 アラビカ種と異なり、標高500メートル以下でも生産が可能、という特徴もあります(気候は同じ亜熱帯性気候)。

 私たちは、飲食店やコンビニエンスストア、自動販売機などでいつでもコーヒーを購入することができます。形態も、飲み物、焙煎後の豆、豆を挽いた粉、関連する加工食品などさまざまです。

 それらのコーヒーがどちらの品種由来なのか、気にしてみると面白いと思います。

 商品のパッケージに書かれているコーヒー豆の「生産地」が、アラビカ種なのか、ロブスタ種なのかを示すヒントになりそうです。

コーヒー関連国☆コモディティクイズ全5問

 コーヒーの市場環境を知る上で、供給側(生産・輸出)と需要側(消費・輸入)といった、関連国全体の状況を把握しておくことが重要です。国旗や地図上の位置、マスの大きさ(国名の文字数)をヒントに、各質問の上位3カ国を考えてみましょう。

※各データは米国の農務省(U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE以下、USDA)の統計をもとに作成しました。統計上、フランスやドイツなどのEU(欧州連合)加盟国は「EU」と1つにまとめられています。

 

問1:アラビカ種コーヒーの生産国
上位3カ国、1位、2位、3位はどこの国でしょう?

 出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

 

問2:ロブスタ種コーヒーの生産国
上位3カ国、1位、2位、3位はどこの国でしょう?

 出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

 

問3:コーヒーの輸出国
上位3カ国、1位、2位、3位はどこの国でしょう? 

出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

 

問4:コーヒーの輸入国
上位3カ国、1位、2位、3位はどこの国でしょう?

出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

 

 

問5:コーヒーの消費国
上位3カ国はどこでしょう?1位、2位、3位はどこの国でしょう?

出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

コーヒー関連国☆コモディティクイズ回答と解説

問1:アラビカ種コーヒーの生産国の正解は…

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

1位ブラジル(41.3%)、2位コロンビア(15.6%)、3位ホンジュラス(8.0%)でした。

4位のエチオピア(アラビカ種コーヒーの原産地付近)、9位の中国を除けば、上位10か国中8か国が中南米諸国です。(中南米シェア89.7%)。

こちらのレポートで書いた「コロンブス交換」や「三角貿易」が歴史的な背景となり、原産地がアフリカにも関わらず、現在も中南米諸国で生産が盛んに行われています。

コーヒー豆の挽き売りをするお店では多くがアラビカ種コーヒーの豆を扱っています。店内のコーヒー豆を展示するショーケースでたくさんの中南米諸国の国名を目にします。

 

問2:ロブスタ種コーヒーの生産国の正解は…

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

1位ベトナム(43.4%)、2位ブラジル(18.8%)、3位インドネシア(14.6%)でした。

ベトナム、インドネシア以外に、インド、マレーシア、タイなどのアジア諸国が多くみられます。(アジアシェア68.5%)。

アジアでのコーヒーの生産は、欧州列強による植民地化がきっかけと言われています。

日本でもしばしば耳にする「ベトナムコーヒー」は、多めの練乳を入れてかき混ぜて飲むコーヒーです。これはベトナムで生産が盛んなロブスタ種コーヒー特有の強い苦味によるものだと考えられます。

[参考]

以下は、アラビカ種コーヒーとロブスタ種コーヒーを合計した生産量のランキングです。

「コーヒーベルト」と呼ばれる北緯・南緯25度以内の国(気候の区分における「熱帯」とおおむね一致)で生産量が多いことがわかります。

図:コーヒー(アラビカ種+ロブスタ種)の生産国ランキングとコーヒーベルト

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

アラビカ種・ロブスタ種の両方でランクインしたブラジル(アラビカ種で1位、ロブスタ種で2位)の他、ベトナム、インドネシア、インドなど統計上、両方の豆種を生産している国においては、標高が高い地域でアラビカ種を(標高1,000メートル程度のやや高地)、それよりも低い土地でロブスタ種を(標高500メートル程度)栽培していると考えられます。

 

問3:輸出国の正解は…

 出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

1位ブラジル(23.6%)、2位ベトナム(21.8%)、3位コロンビア(10.6%)でした。

筆者が注目したのは、生産した量のうちどれだけを輸出しているかを示す“輸出率”です。輸出国ランキングの上位10か国における輸出率(輸出量÷生産量)は以下のとおりです。

インド99.1%、グァテマラ97.2%、ペルー94.7%、ホンジュラス94.7%、ベトナム94.1%、コロンビア92.5%、ウガンダ92.0%、インドネシア76.2%、ブラジル59.4%、エチオピア50.6%

ブラジル、エチオピア、インドネシアを除けば、生産した量の90%以上が輸出されています。これは、これらの国にとってコーヒーが非常に重要な外貨獲得手段であることを意味しています。

 

問4:輸入国の正解は…

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

1位EU(36.9%)、2位米国(20.3%)、3位日本(6.4%)でした。

欧米、そして日本という先進国が上位を占めました。欧州は歴史的にも中南米や東南アジア、アフリカに進出して現地でコーヒーを生産し、自国で消費することを行っていました。

コーヒーを飲む文化は、米国そして日本に広がり嗜好品として親しまれています。

欧米、そして日本は先述の「コーヒーベルト」よりも高緯度に位置するためコーヒーの大量生産に適していません。大量消費のためには輸入に頼らざるを得ないのが実情といえます。

問5:消費国の正解は…

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

1位EU(28.4%)、2位米国(16.3%)、3位ブラジル(14.0%)でした。

輸入量のランキング上位国が多い中、ブラジルが2位となっています。つまり、ブラジルは自国で作って自国で消費する量が多いということです。

先述の輸出率の箇所でブラジルの輸出率が59.4%だと述べました。ブラジルでは生産されたコーヒー豆のおよそ40%を自国で消費しているとみられます。

自国で生産ができる農産品であるため身近な食材である、人口が多いなどがブラジルの生産量が多い理由かと思われます。

日本ではドリップコーヒー(コーヒー粉の上からお湯を注く方式)が主流ですが、ブラジルではエスプレッソ(コーヒー粉に水蒸気の圧力をかけて当てて短時間で抽出する方式)が主流のようです。

いかがでしたでしょうか。

コーヒーに関連する国を見てきました。身近な飲み物であるコーヒーの関連国を整理しておきましょう。

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