今週の日本株市場は長いゴールデンウイークが明け、連休中に一時1ドル=151円台まで進んだ急速な円高を受けて上値の重い展開になることも考えられます。

 一方、今週は日本企業の2024年3月期の決算発表も本格化。

 7日(火)には任天堂(7974)、8日(水)にはトヨタ自動車(7203)、9日(木)には半導体洗浄装置のSCREENホールディングス(7735)や鉄鋼最大手の日本製鉄(5401)

 10日(金)には、円高が不利に働く自動車株のホンダ(7267)マツダ(7261)や半導体関連の主力株・東京エレクトロン(8035)など、最多となる642社が決算発表します。

 日本を代表する大企業の好決算や増配・自社株買いの発表を起爆剤に、円高を吹き飛ばすような力強い反転上昇に期待できる可能性も高そうです。

 先週の日経平均株価(225種)の2日(木)終値は、急激な為替変動にもかかわらず前週比301円(0.8%)高の3万8,236円と小幅高でした。

 機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は前週比0.55%高でした。

 ただ、2日(木)に決算発表したアップル(AAPL)は、2024年1-3月期の売上高が前年同期比で4.3%減少したものの、総額1,100億ドル(約16.8兆円)も追加の自社株買い計画を発表したことで、株価は前週比8.32%上昇。

 3日(金)発表の米国4月の雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比17.5万人増、平均時給が前月比0.2%増といずれも市場予想を下回る結果になりました。

 物価の高止まりの一因だった強すぎる雇用が軟化の兆しを見せたことで、3日の米国市場では2024年9月利下げ開始に対する期待感が台頭。S&P500は前日比1.26%高と上昇の勢いが増し、日本が祝日の6日(月)も続伸しました。

 これを受けて、連休明け7日(火)の日経平均終値は前週末比599円高の3万8,835円と3営業日ぶりに上昇しました。円高進行にもかかわらず、半導体関連株の値上がりが目立ちました。

先週:為替介入連発?円高でも株価横ばいの理由とは?弱い雇用統計で米国株は反転上昇!

 日本が祝日で3営業日しか取引がなかった先週、海外の市場は大忙しでした。

 日本政府と日本の中央銀行にあたる日本銀行による為替介入とみられる大量の円買いドル売り攻勢が4月29日(月)午後、5月2日(木)に2度発生。

 政府・日銀は為替介入について公式には認めていませんが、介入資金に使われることが多い日銀の当座預金残高の減少額から、介入規模は1回目が5兆円、2回目が3兆円の合計8兆円と推測されています。

 4月29日に1ドル=160円台まで円安が進んだドル/円の為替レートは、為替介入と思われる2度の急激な動きで5月3日(金)夜には一時151円90銭前後まで急落。

 連休中に約8円超の値幅を乱高下する異常事態になりました。

 その後は多少、円安方向に戻り、日本が振替休日の7日(火)未明のニューヨーク外国為替市場では1ドル=153円90銭台で推移。

 本来なら、急速な円高進行は、円高が海外収益を圧迫する外需株の多い日本株にとって急落要因です。

 しかし、連休中も取引されていた先物市場の日経平均先物(期近の6月限月)は7日(火)未明に3万8,800円台まで大幅上昇し、円高でも株高が進む想定外の値動きになっています。

 個別株に目を移すと、先週は、好決算や増配・自社株買いを発表した企業の株が素直に買われる業績相場になりました。

 中でも株価の急騰が目立ったのは業種別上昇率ランキングで2位に入った電力・ガス業。

 東北電力(9506)は今期2025年3月期の経常利益が前期比34.9%の大幅減益になる見通しだったものの、前期比15円増の大幅増配計画を発表して、前週比13.7%高。

 その他の電力会社も今期2025年3月期が減益予想にもかかわらず、大幅増配を打ち出すことで株価が大きく値上がりしました。

 全体として横ばい気味だった半導体株の中では、半導体検査装置のレーザーテック(6920)が前週比19.3%高と健闘。

 4月30日(火)に2024年1-3月期の最終利益が前年同期比2.7倍に躍進し、受注高も前年同期比2.3倍に伸びたことが好感されました。

 その半面、今期2025年3月期の営業利益が市場予想から大きく下振れする見通しを示した半導体検査装置のアドバンテスト(6857)が前週比5.2%安に沈むなど、悪い決算を発表した企業の株が当然のように急落する動きも顕著でした。

 米国では、5月1日(水)終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)で6会合連続の高金利政策の据え置きが決定。

 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、インフレ鈍化の確信は得られていないと早期利下げを否定しました。

 しかし、利下げではなく利上げに踏み切るためには説得力ある証拠が必要とも発言。

 市場にくすぶっていた「粘着質の物価高を抑え込むためには再利上げもありうる」という疑心暗鬼を打ち消したため、株価の反応はまちまちでした。

 2日(木)に発表されたアップルの大規模自社株買い計画に加え、3日(金)には4月の雇用統計が弱含んだことで、米国の長期金利の指標となる10年国債の利回りが先々週の4.7%台から一時4.4%台まで急低下し、7日未明にも4.4~4.5%台で推移。

 金利低下を好感して3日、そして週明け6日(月)の米国株は力強く反転上昇しました。

 今週の日本株も少なくとも週前半は、急速な円高進行という悪材料に目をつぶり、米国株の勢い復活に追随した上昇モードで始まりそうです。

今週:トヨタ自動車など大企業の決算発表が株価下支え!?円高トレンド続く? 

 今週、米国では10日(金)に個人消費の先行指標である5月のミシガン大学消費者態度指数の速報値が発表される以外、さしたる重要経済指標の発表はありません。

 米国企業の2024年1-3月期決算も発表企業数は多いものの、全体相場に影響しそうな大企業の決算は7日(火)のウォルト・ディズニー(DIS)などが残されているだけ。

 そのため、今週の日本株は国内の大企業の2024年3月期決算発表に一喜一憂する展開になる可能性が高いでしょう。

 一番の注目は、8日(水)取引時間中の午後1時55分に決算発表を行うトヨタ自動車。

 為替レートが円高に振れたこともあり、好決算でも材料出尽くしで売られる展開になると、全体相場も不調に陥りそうです。

 引き続き、乱高下する為替相場にも警戒が必要です。

 前回、政府・日銀が24年ぶりとなる為替介入を行ったのは2022年9月から10月にかけて。

 2022年9月22日、日銀の金融政策決定会合で量的緩和策の維持が決定され、夕方に1ドル=145円台まで円高が進んだところで、1回目の為替介入が行われました。

 今回も4月26日(金)に日銀の金融政策決定会合で追加の利上げ策などが打ち出されず、29日(月)午前中の海外市場で1ドル=160円台まで円安が進んだ直後、祝日にもかかわらず為替介入らしき相場急変動が発生しているので、前回2022年と似た展開でした。

 前回の為替介入では、介入後の週明け2022年9月26日(月)、日経平均は前週22日(金)終値から722円も急落しました。

 しかし、今回は為替介入が株価の急落につながりませんでした。

 前回の2022年はその後、1ドル=150円を超えた2022年10月21日、24日に追加の為替介入を実施。

 この期間の日経平均の動きを見ると、介入前の2022年10月20日終値から介入後の10月25日始値まで 106円ほど上昇しています。

 2022年9~10月の為替介入後は、2022年11月10日に発表された米国の10月CPI(消費者物価指数)の伸びが予想以上に鈍化したことで、為替介入で弾みがついた円高トレンドが加速しました。

 さらに、2022年12月20日終了の日銀の金融政策決定会合で長期金利の変動幅の上限を0.25%から0.5%に広げたことで、日米の金利差が縮小するという思惑も台頭。

 2023年1月16日には1ドル=127円20銭台まで円高が進みました。

 今回も5月3日(金)に米国で弱い雇用統計が発表されたことが、2度の為替介入で勢いがついた円高トレンドをさらに強め、3日のニューヨーク為替市場で一時1ドル=151円台後半の安値を付ける引き金になりました。

 今後も米国で「金利低下、ドル安、株高」の3点セットが同時進行した場合、日本株は円高を悲観するより、米国株高を好感して上昇するシナリオも濃厚です。

 むろん、急激な円高と株安が連鎖的に起こる恐れもあり、どちらに向かうかは不透明。

 その答えは今週きっと出るはずです。

 雇用が多少、弱含んだとはいえ米国経済は非常に堅調。

 米国株高を受けて、為替相場が緩やかな円安トレンドに回帰し、日本株も本格的な反転上昇に向かう展開がベストシナリオといえるでしょう。