11月24日
短期成長余地は限定的も長期見通しを楽観、旅行市場の拡大が追い風に

民用航空局(CAAC)の統計によると、中国の航空旅客輸送量は2005-15年に年率平均13.3%の伸びを示した。ただ、それでも米国の約半分程度の規模に過ぎず、この先の成長余力は大きい。ボーイング社の「マーケット・アウトルック」によれば、中国の旅客輸送量はこの先35年までに、北米市場全体を追い抜く見通しという。BOCIは原油安の恩恵を受けた現在のビジネスサイクルがすでにほぼピークに達したとしながらも、国内の旅行ブームを理由に長期の航空需要を楽観。さらに国内市場では今後も緩やかな競争環境が続くと予想し、航空セクターに対して強気見通しを示している。

国際通貨基金(IMF)の予測では、中国の1人当たりGDPの伸びは16-21年に年率平均5.6%。10-15年を振り返ると、1人当たりGDPの伸びが年平均9.8%だったのに対し、国内の旅客輸送量は同11.1%増と、航空旅客市場が同GDPをアウトパフォームした。BOCIは16-21年もこうしたトレンドが続くと予想し、旅客輸送量の年平均伸び率が一桁台後半に達するとみている。

中国は世界最大のアウトバウンド市場。海外旅行者数と海外総消費額で、いずれも世界首位の座にあり、15年のアウトバウンド数は前年比9.8%増の1億1700万人に達した(中国旅遊研究院調べ)。同市場は様々な問題を抱えるものの、消費アップグレードや主要国におけるビザ要件の緩和などが追い風となっており、海外旅行者数の緩やかな伸びが続く可能性が高い。

BOCIは航空機メーカー各社のデータを参考にした上で、中国の旅客輸送能力が16-18年に10%増加するとみている。一方、セクター全体のロードファクターは16年上期に小幅の低下圧力にさらされたものの、16年夏のピークシーズンには明らかに改善し、過去5年で最高のパフォーマンスを見せた。

中国の国内路線では3大航空会社の合計シェアが約70%に上り、競争環境は緩やか。航空運賃は今後も安定的に推移する可能性が高いが、国内各社が運行する国際線の多くは今も開拓段階で、海外各社との競争を受けたイールドの低下圧力が続く見通しという。

BOCIは向こう数年にわたって国内旅客輸送市場の需給均衡が続くとしながらも、原油相場が底入れしたとの見方に言及。短期的には一段の上昇余地は限られるとの認識を示した。ただ、長期的には依然成長余力が大きいとし、セクター全体に対して強気見通しを付与している。一方、セクター全体の潜在リスク要因としては、◇人民元対米ドル相場の一段の下落、◇今後の原油高の可能性――を挙げた。

個別では、現在株価の低バリュエーションやハブ空港の好ロケーションなどから、中国東方航空(00670)を選好し、同社H株、A株の先行きに対していずれも強気見通しを付与。一方、中国南方航空(01055)に対しては中立見通しを示している。