10月19日
「債務の株式化」が始動、プラス効果は当面限定的か

中国の内閣に当たる国務院は10月10日、待望の「デット・エクイティ・スワップ」(DES:債務の株式化)に関するガイドラインを発表した。これを受け、中国では広範なDESの推進に対して期待感が広がっている。企業の債務軽減を目的とする同ガイドラインは4月に予告されていた通り、国内銀行が第三者に債務を売却する形で、DESの実施を認める内容。これを受け、中国建設銀行(00939)はDES 2件を実施する計画を発表した。ガイドラインに示された規定は主に以下の通りとなっている。

◇債務企業の経営見通しが良好である場合に限り、DESの実施が可能。“ゾンビ企業”(事実上の破綻企業)の債務に関してはDESの実施を禁止する。◇銀行による直接的な債務者株式の引き受けは禁止し、あくまで第三者経由でDESを実施する。金融・保険部門の「資産管理公司」(AMC)か、あるいは銀行が設立する専門機関が第三者として機能する。◇対象となる有利子負債のリスク・リワードは丸ごと移管され、銀行側が関連リスクを抱え続けることはできない。◇DESの実施に当たっては、当該銀行、企業、DES履行機関の3者が協議の上、価格や資金源、出口戦略などを決定する、◇政府は監督者としての立場を守り、資金を提供せず、DESの実施に介入しない――など。

BOCIはこのガイドラインのポジティブな側面として、以下の点を指摘している。まず、中国政府は資金を拠出せずに市場の原理を適用する方針であり、これにより、不良債権処理上のモラルハザード・リスクの軽減が期待できる。また、DESが大規模に実施された場合、銀行不良債権の抑制効果が期待できる。さらに、銀行による直接的なDESが禁止されたことで、銀行側のリスクを抑制することが可能となる。例えばDES計画を発表した中国建設銀行の場合、子会社がファンドマネージャーとして機能し、同行から当該債務を買い取るためのファンドを創設。その上で当該企業の株式取得を実行する。この方法であれば、銀行側は不良債権を満額処理できるとみられる上に、引当金が損益計算書(PL)上で処理され、資本の消耗を回避できる可能性があるという。ただ、BOCIは同時に、こうした手法を通じて全額出資子会社が手数料収入を得るというビジネスモデルが、長期的なリスクにつながる可能性にも言及している。

BOCIはまた、資産の健全化や企業の債務軽減を実現するためには、かなり大規模なDESが必要になるとの見方。工業セクターを対象としたDESが1兆元規模に達してはじめて、対象企業らの債務比率が1パーセントポイント低下するとの試算結果を示し、DESの長期リスクに耐え得るファンドを実際に見つけられるのかどうか疑問視している。全体を鑑みた場合、BOCIはDESが銀行にとって、短期的に多少プラスになるとの見方。ただ、少なくとも向こう12カ月間、大規模なDESの実施は期待しにくいとしている。